演劇いろいろ~まずは心構えから~(27)
8月に尼崎市青少年創造劇場(ピッコロシアター)大ホールで行われるピッコロフェスティバルの出場に向けて、子どもたちと稽古を重ねています。今回は、子どもたちが主体的にのびのびと稽古を進めていくことを重視していたのですが、ある日の稽古終了後、ある子が「稽古に取り組むみんなの態度がおかしい」と苦言を呈しました。そこで、これまでの先輩たちがどのような心構えで演劇にのぞんでいたのかを子どもたちに紹介した文章が以下のものです。
尼崎市公立小学校主幹教諭 山川 和宏
心構え

生徒が作成した今回の劇のイラスト
みんなが頑張ってある程度のセリフを覚えてきたので、先週のホン読みからわずか一週間で、ダンスを含めて、仮の通し稽古のようなことができました。これはすごいことです。自信をもってください!
しかしながら、今日の稽古の最後にみなさんの中から発言があったように、残念なことですが今の稽古は「一つの作品をみんなで創り上げる」という場になっていません。それは、みなさん一人一人の心構えの問題だと思います。みんなで一つの作品を創り上げて、見てくださる方々に喜んでもらうというのは、本当に大変なことです。その大変なことをみんなで達成するには、まずは一人一人の演劇にのぞむ姿勢が大切です。先輩たちがこれまで心がけてきたことをみなさんにも紹介しますので、その伝統を受け継いで頑張ってください。
①あいさつ、返事をきちんとする。
気持ちのよいあいさつから始まり、気持ちのよいあいさつで終わるようにしましょう。また、普段学校で顔を合わせた時にも、気持ちよくあいさつできる関係でいられるといいですね。そして、あいさつと同じくらい大切なのは返事です。今日の稽古の最後に、先生や卒業生からいろいろと「ダメ出し」がありましたが、それに対する返事をできてない人が目立ちました。「はい」「わかりました(わからない時はもう一度聞く)」などの返事をしないと、せっかく言ってくれていることが理解できたのかどうかが伝わらず、相手を困らせることになります。しっかりと返事をするようにしましょう。
②準備、後片付け(とじまり)を率先してする。
今日の稽古終了後、片付けを率先して行っていたのは、中学生と見学に来ていた卒業生でした。小学生のみなさんも、自分のことよりも先に、みんなで使ったものの後片付けを協力して行いましょう。芝居で使う持ち物は大事にしてください。云われてからするのではなく、自分から進んで行うことが大切です。窓閉めなどの戸じまりも同様です。また、稽古終了後、ごみが散らかっていました。稽古で使った場所は、この場所を使わせてもらっているという感謝の気持ちをもって、はじめよりもきれいにして終わるのが最低限のマナーです。気をつけてください。
③休まない。
やむを得ない場合をのぞき、練習を休まないようにしましょう。休んでいる人がいると、その日は誰かにその役を代わりに演じてもらわないといけなくなります。やむを得ず、休んだ場合は、休みの間にどのように稽古が進み、どんなことがあったのかを自分から聞くなどして、遅れを取り戻すための努力が人一倍必要になります。また、水分補給と適度な休憩をはさむなどして熱中症に気をつけることはもちろん、新型コロナウイルスや風邪などにかからないよう、手洗い・消毒をこまめに行い、普段から体調管理を心がけましょう。みなさんが元気に演劇をできることが一番大切だと思っています。
④芝居に集中できる環境をつくる。
稽古場所に、芝居以外のことを持ち込むのはやめましょう。私語や雑談・落書きなど、演劇とは関係のない余計なことをしていませんか?他の人の稽古を見ているときも、ぼーっと見るのではなく、「自分だったらどうするか」「もっとこうしたらいいというところはないか」など、いっしょになって芝居をよくしていこうという気持ちをもって見るようにしましょう。演者の集中力を失わせるので、余計な物音を立てるのも厳禁です。音響さん・照明さんなどの裏方の人もそのシーンや役の気持ちに自分の気持ちを重ねられるようにしてください。また、人の話を聞いたり、他の人の芝居を見ている時の姿勢や態度も気になります。退屈してしまっているのだとしたら、それはいっしょに芝居を創るということに参加できていないことになります。いつでも自分が役を代わりにできるように集中して他の人の芝居を見ることも立派な芝居づくりです。互いに声をかけあって、この作品をよくするためにできることを積極的に見つけていくようにしてください。
⑤稽古日以外の過ごし方が大切。
練習でみんなが集まる時には、それぞれが練習日以外の時間に努力してきた成果を持ち寄る場にしてください。稽古日以外で、各自がどれだけ努力できるかが大事です。台本を読む、セリフを覚える、動きをつけて演じてみる、ダンスを練習する・・・など、やるべきことはたくさんあります。芝居をよくするための努力は、人から与えられるものではなく、自分の意志で行うものです。やらされる努力ではなく、自ら行う努力を大切にしてください。そして、稽古日はもちろん、稽古日以外の時間にどれだけ努力できるかに挑戦してください。
⑥互いに声をかけ合う。
みなさんは、「カンパニー」という芝居創りの仲間です。できていること・できていないこと・気づいたことなどは互いに声をかけ合って、みんなでできるようにしていってください。例えばこの文章に書いてあるようなことも、できていない人がいたら、積極的に声をかけて、みんなでやっていけるようにしてもらえたら心強いです。少々云いにくいことであっても、芝居を良くしていくために云わなければならないことはきちんと伝える。特に今回初めて参加している人はわからないことがたくさんあって、戸惑うことも多いと思います。いろいろなことを伝え合って、教え合って、助け合って、その上で互いに理解を深めていくことのできるカンパニーであってほしいと思っています。
コロナ禍によって、ピッコロシアターの大きな舞台で劇をするということは、あたりまえにできることではなくなりました。一昨年度は、ピッコロフェスティバルも演劇発表会も中止になりました。昨年度は、演劇発表会が中止になりました。とっても悔しい出来事でした。そして、これから先も、いろいろと厳しい状況が待ち構えていることでしょう。そんな中で、今回、ピッコロシアターで劇をするという大きなチャンスが目の前にあるのですから、そのチャンスを思いっきりみんなで楽しめるように、悔いのないよう努力を積み重ねてください。みんなの頑張りを期待しています。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)
尼崎市公立小学校主幹教諭
演劇ユニットふろんてぃあ主宰
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。
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札幌市立高等学校 教諭
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