2020.11.16
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演劇いろいろ~演劇稽古日誌その②~(6)

来年1月の演劇発表会に向けて、稽古が続いています。
その稽古の過程をできるだけリアルタイムで報告することで、劇づくりの流れを紹介できればと思っています。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

10月25日(日)9:30~13:00

当面の稽古用に台本を配布。故郷の星が滅んでしまった宇宙人と少年の交流を描いた物語。1人1セリフずつ回し読みする。小学生にとっては難解なセリフが多く、意味を確認しながら時間をかけておこなう。本読みしながら配役を考えて、とりあえずのキャスティングをする。

なお、本読みの前に前回の課題の特技披露をおこなう。ギターの弾き語りやピアノの演奏など、あまりの上手さに驚く。できれば、これらの特技を芝居の中にうまく織りこんでいきたい。

10月31日(土)9:30~13:00

今日の稽古は卒業生が3名参加。卒業生といっても、現任校の卒業生ではなく、初任校と2校目の卒業生で、3名とも成人している。卒業してからも、ことあるごとに手伝いに来てくれたり、差し入れを持ってきてくれたりする子がいるのは大変ありがたいことである。

前回配布した台本に沿って、前半部の本読みをおこなう。
卒業生のI君が、子どもたちの本読みの姿にダメ出しをおこなう。
曰く「先週台本をもらっているのに、全然読みこんでいない。姿勢が悪い。本読みといっても、本番の時の声量で読まないと意味がない。台本を持ってくるのを忘れている人がいるけど、それは絶対にやってはいけないこと」云々。

劇団に所属して現在も活躍中のOBならではの厳しい指摘。
だけど、私だけが知っている事実。その彼も小学生の時は、稽古中はいつもふざけていて、真剣に芝居するなんてこととはほど遠い子だったこと。
そんな彼がえらそうにダメ出しする姿はある意味で滑稽なことかもしれないが、その成長には感慨深いものがある。

小学生の時には気づかなかったことが、年齢と経験を重ねる中で、どれだけ大事なことであるか気づいていく。そして、小学生の時からこんなふうに取り組んでおけばよかったのにという後悔を生み、後輩にはそんな思いをしてほしくないと自らの経験に沿ってアドバイスを送る。

後輩は口うるさい先輩と思っているわけでもなく、素直に先輩の言うことを聞いている。
指導者と子どもとは点と点でのつながりでしかないが(点と点を結ぶ線。複数の子どもがいるので複数の線が引かれるイメージ)、そこに先輩という存在が入りこむことで、線と線がつながって形を作り、さらには立体的な膨らみを生み出す。

演劇という活動を長く続けてきたことでいろいろな経験を積み重ね、いろいろな子どもたちと出会い、卒業生と現役生が関わることで予期せぬ化学反応が起こる。
そんな時に、しんどいけど演劇を続けてきてよかったと思えるのだ。
 

11月8日(日)9:30~13:30

演劇発表会の演目をどうするか子どもたちと話し合う。先々週から稽古してきた作品はコロナ禍の今の日本社会ともリンクする内容で、そのまま稽古を続けていきたい気持ちが私も子どもたちにも強かったが、昨年の夏休みにピッコロフェスティバル(主催:兵庫県立尼崎青少年創造劇場)で発表した『夏空喫茶マカベ(「青空喫茶マカベ」に改題)』という作品の再演に決定する。

部員の不祥事によって一方的に解散を決定された演劇部のメンバーの挫折と再生のストーリーだ。今回の演劇発表会には上演時間の上限が設けられており、演者もマスクの着用を義務付けられ、地域のケーブルテレビでの放送が検討されていることなどの諸事情から、変更した方がよいと子どもたちと一緒に決断した。

早速、本読みをして、キャスティングをおこなう。
小学生と劇をつくる上で、非常に大切なのはキャスティングである。キャスティングがうまくいけば、その後の作品づくりの見通しが立つ。キャスティングの成否が劇の成否に直結しているといっても過言ではない。

しかも、今回は再演である。前回の主要メンバーがほぼそのまま残っているので、同じキャスティングをすれば成功への近道であることは疑いがない。

しかし、ここはあえて、「ミスキャスト」を選択することにした。女役が向いていそうな女子をあえて不良の男役にしたり、少年役が似合いそうな女子をあえて男に媚びる女性役にしたり、真面目な役が似合いそうな子をとぼけた喫茶店のマスター役にしてみたりと、かなり冒険してみた。

同じキャスティングだと完成形はイメージしやすいが、想定を超えることは難しい。それに何より、子どもたちのモチベーションが上がらない。そこで、イメージとは違うキャスティングをあえておこなうことで、前回とは違った化学反応に期待したのである。ちょっと教育者としてもっともらしいことをいえば、異なる役を演じることで子どもたちに新しい発見をしてもらい、引き出しを増やすことで自らの成長につなげてほしいと期待したのだ。

キャスティングを重視する自分にとっても、これは新しい(無謀な)挑戦である。
すぐに後悔の念におそわれるかもしれないが、果たしてどうなるか。それはまた次回以降に報告したい。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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