2022.01.17
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

演劇いろいろ~続・演劇稽古日誌~(20)

1月23日(日)にピッコロシアター大ホールで開催される予定の尼崎市小中学校演劇発表会に向けての稽古風景を紹介します。
(新型コロナウイルス感染症対策に伴い、本公演は中止が決定しました)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

卒業生とともに

〇月△日

稽古初めから1か月以上たっても、配役が固まらない。主役を演じる子が別の習い事との両立に苦労しているので、配役の変更を検討していたためだ。結局、本人の気持ちを尊重し、役はそのままでいくことにする。

〇月■日

演劇活動について匿名の電話があり、管理職から事情聴取を受ける。子どもたちにも直接話を聞いてもらったことで、事実無根であったと証明される。

〇月▲日

演劇発表会に参加する各学校の役員打ち合わせ。新型コロナウイルスへの感染対策として、入場制限(事前配布した整理券を持っている人のみ入場できる)・上演間隔を最低30分とる・出演者もマスクを着用する…などを決める。何とか無事に開催できるとよいのだが。

〇月〇日

欠席者がいて、音響操作の人手が足らない。たまたま見に来てくれていた卒業生が手伝ってくれる。

〇月▢日

ほとんどセリフのない役にあたっても真面目に一生懸命稽古を頑張っている子の姿が、頭から離れない。次回は、必ず本人の希望に沿った役に抜擢してあげようと密かに誓う。

〇月◎日

演劇発表会のチラシ用に2人の子がイラストを描いてきてくれる。2つのイラストを合体させて、チラシを完成させる。

〇月✕日

卒業生が、模造刀を4口持って来てくれる。これまでの玩具の刀とは違い、本格的な刀を使って演じることで、侍役の子のテンションが上がる。

◇月☆日

年明け最初の稽古。みんなで近くの神社に初詣に行く。神妙にお参りをした後、みんなそれぞれおみくじを引く。その結果に一喜一憂する子どもたち。帰り道、2人の子が私の方に両方の手の平を向けてあやしい動きをしている。何をしているのかと思ったら、おみくじで凶を引いてしまったので、その運気を私に送っていたとのこと。やめてくれ。

◇月◎日

卒業生が、ヒロイン役の子の衣装にと、ブラウス・セーター・スカート・アクセサリーなど一式を持って来てくれる。衣装によってヒロインの存在感が際立った。

◇月〇日

主人公の少年が決意を固める重要なシーン。抜群に良くなった。セリフではなく、動きと間で感情を表現できている。見ていて思わず涙が出そうになる。

◇月▢日

新型コロナウイルスの感染が急拡大している。昨年に引き続き、発表会の中止が現実味を帯びてきたため、学校の体育館のステージで劇を発表できるように、舞台セットや照明を組んでみる。しかし、照明機材を操作する人員が足りない。卒業生に声をかけてみたら、すぐに助っ人が3人も駆けつけてくれた。非常に心強い。

学校の体育館で発表することになった場合、舞台上で雪を降らせたり、イントレ(移動式の足場)を組んだり、劇場ではできないような演出を凝らしてみようと思い、実際に試してみたら思った以上に効果的だった。


こうしてふり返ってみると、卒業生にものすごく助けられていることに改めて気づかされる。ある年の演劇発表会では、直前に出演者の1人がインフルエンザにかかって出演できないという事態が生じたため、本番前々日に卒業生に代役をお願いしたことがあった。その時も、たった1日でかなりの量のセリフを覚えてきてくれて、見事に演じ切ってくれた。

また別の年には、建築現場の足場として使用するイントレを使った大がかりな舞台セットを組むために、トラックで資材を運搬してくれた卒業生もいた。さらには、「村の長老役」を圧倒的な存在感で演じ切って、演技で子どもたちを引っ張ってくれた卒業生もいた。

私が演劇を教え始めた頃の夢は、「演劇の教え子が大人になった時に一緒に小さな劇団を創ること」だったのだが、劇団という形にはなっていなくても、すでに夢を叶えてもらっているのかもしれない。感謝・感謝・感謝である。

※本連載の執筆後、公演の中止が決定いたしました。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

同じテーマの執筆者
関連記事

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop