子どもたちに伝えたい言葉を贈る
3学期は51日間でしたが、子どもたちに毎日「贈る言葉」と題して、朝の会で話してきました。卒業式にはあまり時間がないため、1日1日を大切に、子どもたちに話しました。
子どもたちは、
「今日の先生の言葉は何かな?」
「どんな話が聞けるかな?」
と楽しみにしてくれていました。
私の話した言葉が、これからの子どもたちの人生の中で役立ってくれたら…そんな思いでのスタート。卒業式までの51日間しっかりと続けていこう!そう決心しました。私も、これまでご指導いただいた先生たちから聞いた言葉が人生のピンチの際に心の支えになったことがあります。
例えば、私が尊敬するある僧侶の方から、
「危中機」(きちゅうき)
という言葉をいただいたことがあります。
この言葉は、「ピンチの中にチャンスが隠れている」ということだそうです。
私も何度か、仕事においても、その他のことにおいてもピンチがありましたが、この言葉を思い出して、何とか乗り切ることができました。ピンチの中からも何かを学び取ろう。
そんな姿勢があったので解決することができたのだと思います。私にとって心の支えとなった言葉があるように、担当する子どもたちにも何かしら心の支えになるような言葉を贈りたいとこの活動を行いました。
子どもたちに贈った言葉
子どもたちに3学期のはじめの日に贈ったのは、2学期の震災学習で被災地の方が話していた、
「当たり前は当たり前じゃない!」
という言葉です。
これは、小学校入学前のお子さんを亡くしたお母さんの言葉です。実際に震災当時の話を聞いたこともあり、子どもたちの心に深く刻まれています。毎日、普通に生活していると、朝の「いってきます」や帰りの「ただいま」のあいさつがいい加減になってしまうことがあります。しかし、震災で家族を亡くされた方は、娘さんの「ただいま」を今も聞けていないと言います。やはり、普段の何気ない人との触れ合い、そして経験を大切にしてほしいと思い、この言葉を贈りました。
また、こんな言葉も贈りました。
「働くということは社会とつながることだ」
この言葉は、大船渡でボランティアダイバーをしているSさんの言葉です。Sさんは東日本大震災の際に、海に浮かぶがれきの撤去に尽力しました。そして、今は海の環境保全にかかわる活動をしています。その方が、児童にゲストティーチャーとして話をしてくれたときの言葉です。
子どもたちには、Sさんから聞いたこの言葉のように、常に人のために役立つことを考えてほしいと思っています。人のために生きることが幸せであると感じながら、生きていってほしいと願います。この言葉も忘れてほしくありません。
さらに、子どもたちに贈ったのは、
「人生こういうこともあるんだな……」
という言葉です。
これは、元サッカー日本代表のキングカズこと三浦知良さんの言葉です。カズさんは、ずっと日本のサッカーを牽引してきました。私自身もサッカーを習っていたため、カズさんから大きな影響を受けました。きっとワールドカップに出場して活躍するに違いない!と思っていました。しかし、日本中が悲嘆の声をあげたドーハの悲劇……そして、その4年後のまさかの代表落ち。
そんな経験をしたカズさんがテレビのインタビューの中で、当時の気持ちを聞かれてこう話していました。
「悔しい気持ちは今でもある。しかし、人生ってこういうこともあるんだなという気持ちになった」
悲しいことがあったときに、その気持ちを受け止める時間も大切ですが、悲しむばかりではなく、「こんなこともあるんだな」と達観することも大切なことであると考えました。
子どもたちもこれからの人生でいろんなことがあると思います。何か悲しいことがあったときには、この言葉を思い出してほしい。そんな気持ちでこの言葉を贈りました。
このほか、卒業式まで51個の言葉を贈りました。子どもたちのこれからの人生で何か役に立ってくれたらこんなうれしいことはありません。
私も新たに歩み始める
卒業生を送り出してほっとしたのもつかの間。
すぐに新しい年度がスタートしました。今年は2年生の担当。10年以上ぶりの2年生です。どんな子どもたちが教室にやってくるか楽しみです。私自身、自分の子どもが2年生の時に、毎日のように学校であった楽しいことを話してくれたのを思い出します。これから受け持つ子どもたちにとっても、これからの1年間が楽しいものであってほしいと考えています。
しばらくぶりに低学年を担当します。6年生の子どもたちは思春期に入りましたので、少し大人として扱いましたが、今度は2年生。きっと元気な声で接してくれると思います。そんな子どもたちの声にこたえていきたいと思います。今年度どんな1年になるか楽しみです。全力でがんばっていきます。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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