2025.04.22
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新年度だからこそ、子どもと先生の心を繋げる「Rブック(振り返り日記)」

Rブックとは「振り返り日記」のことです。
実はすごく奥が深く、意外性のある本当の狙いがあります。
前半はRブックのポイントを、後半はRブックの本当の狙いを紹介します。
お時間のない方は後半だけでもお読みいただければ幸いです。

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介

新年度、どんな子に意識を向けていますか?

新年度が始まり、どの先生方も大変な思いをしながら毎日を過ごしていることと思います。
さて、教室の子どもたちに視線を送るとどう見えていますか?どんな子に視線が行きますか?
「お利口に先生のお手伝いをする子」「前担任から引き継いだ気にかけてほしい子」「よく発表する子」「少しやんちゃをする子」などに視線が向かっているのではないでしょうか。それは私も同じです。第一印象というものは厄介なもので、第一印象が強い子にどうしても意識を持っていかれます。
しかし、上記のどちらにも当てはまらない「標準的な生活を過ごしている子」もあなたの学級の子であり、意識を向けなければいけません。それが分かっていても印象の強い子に最初は意識を持っていかれてしまいます。そこで、全ての子どもと先生の心を繋げる「Rブック」の登場です。

Rブックとは?

「Rブック」とは簡単に言えば今日一日何があったのかの振り返り日記です。
「Rブック」の「R」は「reflection(振り返り)」「return(戻る)」「remember(思い出)」の3つの言葉の頭文字を意味しています。今日一日何があったのかを振り返り、短い文章の日記を書きます。
「よくある一日の振り返り文じゃないか」と思う方もいるかと思いますが、侮るなかれ。Rブックには思わず子どもたちが書きたくなるいくつかのポイントがあります。それが子どもたちと先生の心を繋げるkeyとなります。

Rブックというネーミング

まず、ネーミングです。
Rブックを普通に言うと「振り返り日記」です。子どもたちに「今から振り返り日記を書きます。ノートを出してください。」と言うよりも、「今からRブックを書きます。Rブックを出してください。」と言った方が楽しくなります。
子どもたちは「Rブック~♪」と言いながら机の中から出してきます。呼び名を言い換えただけですが、どんな活動でもネーミングはとても大切であり、子どもの食いつきが全く異なります。

心奪われるサイズ

Rブック

B5ノートを半分に切ったサイズ

次に、Rブックのサイズです。
普通のB5やA4ノートのサイズは渡しません。
B5ノートを半分に切ったノートを渡します。
この小ささが良く、とても可愛く見えます。
これまで触ったことのないサイズが子どもの興味を掻き立てます。
このサイズ感が一番大切かもしれません。

センス問われるプレッシャーコメント

Rブックでは、子どもの書いた日記に対するコメントを先生が書きます。Rブックは帰り間際に提出するため、放課後に担任がゆっくりと読んでコメントを書き、子どもたちの机に並べて帰宅することになります。
教科や学校行事に関する感想などであればしっかりとしたコメントを返しますが、Rブックでは子どもたちがクスっと笑いそうなコメントや砕けた言葉でコメントを返します。
例えば「めっちゃ分かる!」「何だそれ」「はーーーーーい」など、普段先生が授業中に使わないような言葉をコメントにするとより効果的です。この砕けた感じが返ってきたRブックを見る楽しみになります。登校時、ランドセルを背負ったままRブックを見る子の姿をたくさん見てきました。
私はここでは紹介できないような恥ずかしいコメントをたくさん書いています(笑)。子どもたちの期待があるのでなかなかのプレッシャーです。

子どもに好かれる時間設定

さらに、Rブックは授業時間内に行うことが大切です。一日を振り返る日記なので、やはり帰りが近い時間に行います。しかし、6校時終了後や帰りの時間に行うと子どもからRブックは嫌がられてしまいます。なぜなら、帰る時間が遅くなるからです。
他の学級は帰っているのに、自分の学級はRブックを数分書いていたせいで遅くなっていると認識させることになります。そうするとRブックが悪者になってしまいます。
このような理由から、Rブックは授業時間内、つまり6校時終了前の数分に行うことが望ましいです。授業時間内にすると、帰り時間に影響がない上に、6校時の教科の授業が数分早く終わることになります。Rブックは善者となります。このように、「Rブックが好き」と思わせるような工夫も大切です。

飽きさせないテーマ設定

また、Rブックは基本的に「今日の振り返り」がテーマですが、日によってテーマを変えることも飽きさせないポイントです。
例えば「好きなジュースについて」「最近見たテレビについて」「今日の学級会について」など様々です。
時には、「好きな絵を何でもいいから書いて」という文章ではないテーマも出しています。

Rブックに隠された本当の狙い

ここまでRブックのポイントを伝え、子どもたちがRブックが好きになる工夫をお伝えしてきました。子どもたちはただ楽しいだけの活動に感じるでしょうが、Rブックの本当の狙いは実は他に秘めています。
最初に述べたように、「Rブックは子どもと先生の心を繋ぐ道具」です。しかも、新年度に担任が意識を向けていない子との心の繋がりです。
新年度が始まって、まだたくさんお話をしたことがない子や意見が言えずに黙っている子がいるのではないでしょうか。そんな子の心の中を知ったり、文面上での会話をしたりするためにもRブックは有用です。
「意外とこんな素敵なことを考えていたんだ」「あの表情はこういうことだったんだ」「実は好き/嫌だったんだ」と担任は把握することができます。

Rブックに慣れてくると、「最近の悩み」「みんなには言えないけどお家でこんなことがあった」「友達と少しトラブルがある」など、テーマとは関係ない話を書く子が出てきます(もちろん最初にこのようなことを書いても良いと伝えておく必要がある)。
実はRブックに隠された本当の狙いはこれです。「子どもたちの秘めた声を聞くこと」が本当の狙いです。
子どもの心の喜びや悲しみ、実は言えなかったことなどを毎日聞く機会を設けることができます。先生に伝える機会が多ければ多いほど、子どもたちはいざというときにRブックという手段を活用します。それにより迅速な対応をすることができます。中には、「本当は受験したくない」「お父さんとお母さんが仲良くしてほしい」など、声には出せない悩みを書く子がいます。

先ほど、迅速な対応と言いましたが、Rブックの基本的なルールは「Rブック上のことはRブック内でしか会話をしない」ことです。実際に会話として話題にはせず、Rブック上だけに秘めた内容にするということが大切です。「おおごとにはしてほしくない」「先生にどうにかしてほしい訳ではなく、ただ聞いてほしい」「恥ずかしいから言ってほしくない」などの気持ちを持っている子もいます。どこかに吐き出したい気持ちがあるのです。しかし、内容によっては実際に聞き取りをしたり行動したりすることはもちろん必要です。
このような活用法があることから、Rブックは特に悩みを心に秘めてしまう高学年に効果的です。

Rブックは楽しい活動と悩みを聞き取る活動の二面性を持っています。楽しんで書いている子にとっては「先生と関係づくりの楽しい日記」に。悩みがある子にとっては「先生に心の叫びを伝える日記」に。
子どもと先生の心を繋げるRブック。いかがでしょうか。

何卒

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭


沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。

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