2020.12.25
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演劇いろいろ~演劇稽古日誌その④~(8)

師走に入り、教師も走り回る忙しい毎日ですね。
演劇発表会に向けての稽古も佳境に入ってきました。
今回も、稽古の様子を紹介します。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

12月5日(土)9:30~16:00

今日の稽古は全体的に弛緩した空気で終始した。欠席者が数名いたこともあり、シーン稽古や基礎トレーニングに時間を割く。

体幹を鍛えるため、頭の上に少量の水を入れたペットボトルを載せて、部屋の中を歩き回る。これがなかなか難しい。体に力が入っていると、ちょっとした振動でペットボトルはすぐに落ちてしまう。身体をリラックスさせつつも、バランスを意識して、じゃんけんしたり、相手のペットボトルを落とそうと小突いたりして、トレーニングする。

スローモーションやその場を走る動作のトレーニングでは、1年半ほど前に特別講師として招いた役者さんが教えてくれたプリントを今も大切に持っている子が中心になって、そのコツを教えていた。

子どもたちが話し合って、今週から毎朝登校してすぐに、基礎トレーニングを中心とした自主練習を行うことに決まった。あまり無理はしてほしくないのでとめようかとも思ったが、休み時間には委員会活動や音楽会の楽器練習があって集まりにくく、朝休みに集まりたいとのことだったので、その気持ちを尊重する。

12月12日(土)9:30~16:00

この日はもりだくさんのメニュー。

午前中、体育館が空いていたので、体育館のステージを使って声出しを行う。「五十音(あめんぼの歌)」「外郎売の台詞」「今回の台本」の3つをテキストに、体育館いっぱいに声を響かせることをめあてにする。
これがなかなか大変。特に初めて演劇をする子にとっては、思うように声を響かせることができない。上級生が様々なアドバイスを送るが、それですぐに声を響かせられるようなものではない。現時点での自分がどれくらい声を出せているのか、自覚ができればそれでよしとする。あとは、今回の経験をいかに普段のトレーニングにつなげようと意識できるか、である。

さらにダンスシーンを実際の舞台の広さで稽古する。フロアにCDデッキを置いて音楽を流すと、激しいダンスの振動でCDデッキが不具合を起こして音が飛ぶことがある。今回は、「音が飛んだらダンスの稽古終了」というめあてを設定して行う。あまりに激しい振動で、2回目で音が飛ぶ。今日は休日で校内に人はいないが、平日だと階下の人たちにすごく迷惑をかけたのではないだろうか。

昼食中に、前回の公演のビデオ鑑賞する予定が、機器の不具合で再生できず。過去の作品を見るのも善し悪しなので、それはそれでよかったか。

午後は、生き埋め救出のシーンを体験するため、大きなスコップを手に、砂場で穴掘りする。3分掘るだけで息が切れる重労働。それを繰り返し数回行うと、結構大きな穴が2つ掘れた。
生き埋めになってしまう役の子が「実際に埋まってみたい!」と云い出したので、とりあえずカッパを着せて埋めてみる。……生き埋めというより、まるで砂風呂だ。だけど、砂はとっても冷たかったそうである。ちょうど2つ穴を掘っていたので、2人が体験できた。

衣装合わせは、みんな似たような地味な服を選んで持って来た。一部の子は個性がはっきりと表れていてよかったが、色の被りも多く、来週、もう一度合わせてみることにする。

さらに通し稽古を行う。予定の上演時間を8分オーバー。午前中に体育館で声出しをしたので、声がしっかり出ていたのはよかった。

12月14日(月)14:50~15:35

正規のクラブ活動の時間として、平日にトレーニングを行う。

今回の演劇発表は有志が参加しているので、どのような劇を創っているのかを紹介する意味で、有志として参加していない人にお客さんになって見てもらう。
初めてお客さんの前で演じて、お客さんの反応が新鮮だったのか、稽古よりも芝居に熱が入っていた。

見てくれた男の子が、「面白かった!来年も演劇クラブに入って、来年は自分も出たい!」と云ってくれて、うれしかった。

12月19日(土)9:30~16:00

子どもたちは、台本を出発点にそれぞれの役柄の履歴を考え、役を掘り下げてきた。そのうちにそれぞれの役のイメージが膨らんできたのか、徐々に演じている役柄の個性が表れてきて、面白くなってきた。
人柄の良いお嬢様みたいなイメージだった先生役はいつの間にか「ブチギレキャラ」に豹変しているし、不良役は「かわいらしい駄々っ子」になっている。真面目な部長役は、徹底的に「ダサい」をキーワードに役柄を創り上げてきている。

前回公演を見てくれたOBが今日の稽古を見て、「〇〇って、こんなキャラクターでしたっけ?」としきりに聞いてきた。交通整理は必要だが、できるだけ個性を生かしてあげたいと思っている。
そのOBは、自分が初任の時に演劇を教えた子だったが、「先生、こういう云い方は失礼ですけど、教えるのがうまくなりましたね」とのこと。「やってることは変わらないけど、教える時の言葉のチョイスが、ちゃんと相手に伝わるように選んでいるように感じた」そうである。

稽古後のダメ出しで、そのOBが必死に言葉を選んで伝えようとしてくれていた。感謝!

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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