2025.04.23
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鉄板ネタ!4月の体育授業開き(完結編)

小学校の体育って、最初に体ほぐしの運動(遊び)が超大事なんだって!
魅力的な教材と語りで、子どもたちの心を動かすんだ!
風船を使ってみんなでワイワイ、最後は大きな壁に挑戦!
失敗してもOK! みんなで話し合って乗り越えるんだ。
先生って、本当に最高の仕事だよね!
子どもたちの笑顔、見たくない?

目黒区立不動小学校 主幹教諭 小清水 孝

体ほぐし,教材,語り,そしてフェーススケール

これまでに紹介した運動例と板書例

筆者作成

前回までの記事では,【A集合ゲーム】【Bバナナ鬼】【Cフープ遊び】を通して,次の三つのことをお伝えしました。

  1. 小学校体育の「体ほぐしの運動(遊び)」は4月に行う。その後の体育学習や学級経営に良い影響を与える。
  2. 優れた授業は,「魅力的な教材」と「力強い語り」が一体となって展開される。
  3. フェーススケールを利用して心の変化に気付かせる。

風船チャレンジ1「風船を落とすな!」

風船チャレンジ

筆者作成

(1)ルール説明

  1. チームで風船を落とさないようにするゲーム
  2. 1チーム5人程度
  3. 1つの輪を作り,内側を向く。手を繋ぐ。
  4. 体のどこで弾いてもよい。
  5. 2分間続けられたら成功
  6. アウトになったら,座る。

(2)アウト3条件

  1. 風船が床に落ちたとき
  2. 繋いでいた手が,一人でも離れたとき
  3. 風船を体ではさんだとき

(3)盛り上がるポイント

  1. 教師が「手伝うよ」と近づいて,風船を遠くに弾く。
  2. 子どもたちが「先生邪魔しないで!」「先生こっちこないで!」と言い,笑いが起きる。
  3. 成功したチームに得点を入れる。
  4. 男女で手を繋げない雰囲気の学級では,ゼッケンを握らせると抵抗なくできる。

風船チャレンジ2「風船を運べ!」

風船を運べ!

(1)ルール説明 ※「風船を落とすな!」との違いのみ記載

  1. 20m先まで風船を運ぶゲーム
  2. 2分間以内に運べたら成功
  3. アウトになったらスタート位置に戻ってやり直し

(2)アウト3条件

「風船を落とすな!」に同じ

(3)盛り上がるポイント

  1. 教師が「先生に何か手伝えることある?」と近づく。
  2. 子どもたちが「ありません!あっち行って!」「また邪魔しに来たよ!」と言い,笑いが起きる。
  3. 成功したチームに得点を入れる。

風船チャレンジ3「風船を入れろ!」

(1)ルール説明 ※「風船を運べ」との違いのみ記載

  1. 20m先にあるゼッケンかごまで風船を運び入れるゲーム
  2. 5分間以内に運べたら成功
  3. かごに風船が1回入ると1点。時間内に何点入れてもよい。

(2)アウト3条件

「風船を落とすな!」に同じ

(3)盛り上がるポイント

  1. 教師はゼッケンかごの付近で子どもの様子を観察する。
  2. 成功したら「お~!すういすごい!」と盛り上げ役に徹する。

ジャイアントウォール(巨大な壁)

ジャイアントウォール「ぼくが土台になるよ」

 

(1)ルール説明

  1. 体育館に積み上げられたマット(壁)を乗り越えるゲーム
  2. 学級の全員が越えられたら成功
  3. 時間は5分

(2)語り

「先生は4年生以上を担任したとき,毎年この壁を作ってきた。これまでに受け持った子どもたちは,この壁を乗り越えようとチャレンジしてきた。成功率は50%。失敗すれば涙し,成功すれば歓喜に沸いた。私は君たちが乗り越えられると信じている」

いかがでしょう。少しくらい話を盛っても構わないでしょう。教師の表情と語りで,マジな空気を作り,演出することが重要です。

(3)問い

私の経験上,1回目は失敗します。我先にと運動が得意な子が突っ込んでいくからです。体の重い子,運動が苦手な子が順番の最後の方になります。失敗します。失敗することが重要です。

失敗後,子どもたちを集合させます。問います。

「どうだった?(失敗しちゃった...)」
「どうやったらうまくいく?」

すぐに発言は出ないでしょう。おそらく体育館を沈黙が支配します。教師は沈黙が苦手です。しかし,この沈黙に負けずに待ちます。教師がぐっとこらえて待つことが重要です。待てば,必ず誰かが次のように言います。

「先生,ぼくが土台になってもいいですか?」

この発言が出たら,教師は言葉を発さず,発言者の目を見てゆっくり頷くだけでよいです。

「作戦時間は3分間」

教師はこれだけ言って終わりです。
この3分間は教師にとって至福の時間です。子どもたちが真剣に話し合う姿は光輝いて見えます。教師をやっていてよかったと思える瞬間でしょう。

「ぼくが先に言って上から引っ張るよ!」
「私は土台になってAちゃんを先に行かせるよ!」
「俺,最後まで残ってBくんをサポートするよ!俺は最後に行く!」

普段やんちゃな男子が,このときばかりは男前に見えます。
おそらく2回目は成功するでしょう。最後に残ったやんちゃな男子がジャイアントウォールを乗り越えたとき,体育館に歓声が沸くことでしょう。
読者の皆さんは,成功後にどんな語りをするでしょうか。

教師は最高の仕事

ジャイアントウォール成功で歓喜に沸く

 

1本の記事を書くはずが,3回の連載となってしまいました。すべて読んでくださった方に心より感謝申し上げます。お付き合いいただき,本当にありがとうございました。本記事を読んだタイミングが4月でなかった場合でも諦めないでください。学級を仕切り直す9月,1月にもオススメなのが体ほぐしの運動です。

教師は最高の仕事ではありませんか。ぜひ,体ほぐしの運動を実践され,子どもたちと壁を乗り越えてください。そして,子どもたちを褒めちぎってください。教師にとって,幸せな瞬間です。

もし,実技研修のご希望がございましたら,お知らせください。東京都小学校体育研究会の研究部長クラスのメンバーを揃え,私と私の仲間が無償でサポートさせていただきます。

小清水 孝(こしみず たかし)

目黒区立不動小学校 主幹教諭


フープ1本でできる運動を3つ以上言えますか? 
現場で使える技術、できる実践、リアルな指導法を日々追究しています。
現場の先生方、共に考え、指導法の選択肢を増やしていきましょう! 
NPO教育サークル「GROW5th」代表。

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