掲示物に命を与える~効果的で変動的な掲示物を目指して~
「掲示物」。
あなたはそれをどのように捉えていますか?
掲示物に「掲示物が掲示物として生きて行く意味」を与えて、命を宿しませんか?
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介
目指す掲示物
私は学級経営を行う際に掲示物を重要視しています。4月最初に頑張ることは学級経営方針を児童に感じさせることと、掲示物を整えることです。
特に掲示物にはとても時間をかけています。掲示物を作成する際に、絶対重要視していることがあります。それは、「効果的な掲示物であると共に、変動的な掲示物であるべき」という考え方です。
呼吸できない掲示物たち
教室には給食当番表、掃除当番表、係りの紹介、児童一人ひとりの個別掲示ファイルなど、様々な種類の掲示物があると思います。しかし、それらの掲示物にはどのような効果があるのでしょうか。ただ貼られているだけの物もあるのではないでしょうか。誰が見ることもない係り活動紹介の掲示物、誰も見ることができない高さに貼られて文字も読めない掲示物、イベント化しない児童の誕生日が書かれた掲示物。これらの掲示物を見かける度に、「せっかく難儀して作成したのにもったいない」「掲示物が生きていない」と感じます。
掲示物を貼るからにはその掲示物に意味を見出さないといけないです。ただ教室の壁を隠すだけの掲示物ならいっそのこと剥がしてしまった方が良いかもしれません。ましてや、期限を過ぎた地域イベントのビラや誰も参加意思のない募集要項などは言うまでもありません。
掲示物は毎日児童が目にするものです。しかし、その掲示物にほぼ変わりがないと見慣れてしまい、ただの背景と化してしまいます。「掲示物」とは「見られること」に意味があります。つまり、「思わず見てしまう掲示物、見ることがルーティン化された掲示物」を目指していくことが大切だと思います。
掲示物の持つ力
掲示物には、教室の環境や雰囲気、空気感をガラッと変える力があります。いつもと同じ掲示物や書かれている内容が何も変わらない掲示物だと、教室の環境に何も変化がなく、児童も飽きてしまいます。児童が登校したとき、「わっ、昨日と何か違うものが貼られているぞ」「昨日と違うことが書かれているぞ」と言わんばかりの表情を見せたり、ランドセルを背負ったまま新しい掲示物に向かって行く姿はとても輝いています。児童にとっては、昨日と今日を比較した間違い探しのようで、小さなドッキリみたいなものだと感じます。それだけで登校するのが楽しくなりそうです。
掲示物は教室環境をつくる上でとても画期的なものです。掲示物を通して教室を担任の思うカラーに染める事ができます。他の業種では自分のデスク上を彩る程度ではないでしょうか。学校教諭には学級という部屋全体の空気感を変える権限があります。この仕事唯一の特権ではないでしょうか(社長職に就かない限り)。そして、良くも悪くも、この広い空間を自分の空気一色にすることができる。掲示物一つで空気を変えることができる。学級カラーを決めることができる。だからこそ掲示物作成は奥深く、工夫する点、方法が無数にあります。様々な工夫を通して、児童も楽しく、担任自身も楽しくなれるような空気がつくれたら幸いです。
命はみんなで与えるもの
掲示物を作成するときに気を付けてほしいことがあります。それは、「担任だけで作りすぎてしまう」ことです。大切なことは「児童と共に作る」ことです。児童にも空気を変える経験や掲示物を作る技能を身につける場面を与えていきたいです。担任だけで掲示物を作成すると、大人の字やパソコンの印刷の字など、大人の感覚やイメージで教室の空気が少し堅く感じられます。空気をやわらかくする意味も含めて児童に作成させてほしいです。さらに、児童に掲示物を作成させることは自己肯定感の向上も目指しています。児童自身が作成した掲示物が貼られることで「自分が学級づくりの一部分を支えている」と感じさせることができます。そして、自分たちが作った掲示物には愛着を持つものです。我が子のように愛する心が芽生えることもあります。
もちろん児童に作成させるときには、児童が作業に取り組みやすくなるよう、担任が事前に準備をする必要があります。紙やペン、ラフスケッチなどを準備したり、担任の構想を伝えたりすることが大切です。
「効果的で変動的な掲示物」とは
序盤で話をした「効果的で変動的な掲示物」という言葉について触れます。
ここでいう「効果的な掲示物」とは、担任の目指す学級づくりに合わせた内容や児童に何かを伝える内容などを目指したものです。簡単に言うと、「児童や学級経営にとって何かしら意味のある掲示物」です。児童にとって見る必要のあるもの、活動の際に見る必要のあるものを指します。
さらに、動きがあって変化のある掲示物や活動によって変化をもたらす掲示物のことを私は「変動的な掲示物」と呼んでいます。大まかに、書かれていることが変化したり、直接書き入れたり何か増えたりなどする掲示物のことを指します。
それでは、そのような掲示物とはどのようなものでしょうか。次回から不定期ですが、「効果的で変動的な掲示物」の例をいくつか紹介していきたいと思います。私個人のオリジナリティーのクセが強いと思いますが、何かしらのヒントを与えられたら幸せです。
私の教室を見た児童や先生方に「この教室は空気感が違うね」「先生のクラスっぽいね」とよく言われます(もちろん良い意味でです)。掲示物によって作る学級の空気感は唯一無二です。自分なりのオリジナルの空気を作成していきたいものです。そのオリジナリティーは児童たちにも伝わり、自分たちの教室を好きになってくれます。
掲示物に「掲示物として生きていく意味」を与え、掲示物が学級づくりの中心となって生き生きと過ごしている学級を作っていきませんか?
何卒。

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭
沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。
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