2020.12.07
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演劇いろいろ~演劇稽古日誌その③~(7)

今回も演劇発表会に向けて、劇づくりの様子と子どもたちの日々の成長を紹介します。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

11月14日(土)9時30分~13時30分

先週から始めた『青空喫茶マカベ』のホン読みからスタートする。みんなこの1週間である程度セリフが入っていたので、続けて立ち稽古に挑戦する。

前回紹介したように、あえてミスキャストで挑む今回。早々に諦めて本来のキャストに変更したい欲に駆られるが、何とか踏みとどまり、稽古を進める。

稽古後、ピッコロシアターのスタッフさんと電話で打ち合わせ。前日と当日の進行について相談する。

11月23日(月)9時30分~13時30分

ダンスシーンの稽古を中心に行う。前回公演時と振り付けは同じだが、隊形移動を加えたことで、バランスが良くなった。

後半の立ち稽古中、舞台転換で喫茶店のセットを片付ける場面に差し掛かった時のこと。誰が何を片付けるか子どもたちが話し合っていたが、初めて参加している子は何をどうしてよいか分からずに動けないでいた。子どもたちに任せて、ここはあえて静観する。結局、経験のある上級生だけで片付けることになった。

稽古終わりのミーティングで子どもたちに今日の稽古で困ったことがなかったか問いかけると、案の定、その時のことが出た。できることがあるのに何もしないのはもったいない。稽古中に出番がないときでも、自分からできることを見つけて積極的に参加することが大切……と、上級生が下級生に訴えていた。

さらに約30分にわたって、重苦しい雰囲気の中、上級生から様々な意見や教えが続く。その言葉が下級生にどれだけ響いていたか。みんなが一つになってものを創るというのは、難しい。

11月28日(土)9時30分~16時

先日、尼崎市小中学校演劇発表会の役員会が行われ、発表会の詳細が決まったので、子どもたちに伝える。まだ2カ月先の発表会で子どもたちにとっては実感が湧かないかもしれないが、2カ月なんてあっという間だ。

観覧は1家庭2名まで、出演時もマスクを着用する、他校の劇を観ることができない……など、新型コロナウイルス感染予防のため、様々な対策をとって行うことになっているが、今年度は開催できるだけでも感謝しなければならない。また、地元のケーブルテレビが劇を撮影し、テレビ放送と動画配信されることが正式に決まったことも伝える。

今日から午後も稽古することになり、初めから最後まで、場面ごとに立ち稽古を行う。

主人公が一発ギャグを披露するシーンでは、各自が考えてきたギャグを主役の子に演じてもらう。子どもたちは自分がやらなくていいものだから、容赦ないギャグを考えてきて主役の子に演じさせるので、その子のことが気の毒になるもつい笑ってしまう。バナナ2本を唇に見立てて、「たらこくちびる」と言ったのには爆笑してしまった。それにしても、よくもまあこんなに面白いことを考えてくるものだ。子どもたちの発想力に驚かされる。

前回の稽古で難儀した場面転換も、全員に役割をふってスムーズに行なっていたので感心する。

ケンカのシーン。普段なら取っ組み合って殴ったり投げ飛ばしたりするのだが、ソーシャルディスタンスをとってのケンカということで、やたら蹴りが多くなってしまうが、それはそれで迫力がある。しかし、随分暴力的なシーンになってしまったので、一考の余地あり。ここでケンカをする不良役が今回の芝居で最大のミスキャストといえる小柄で幼顔の女の子だったのだが、すっかり役に入りこんでいて、ものすごい迫力。何でも、自分のクラスの乱暴な男の子をずっと人間観察していたとのこと。そういわれると、目つきまでその子に見えてきた……。うまく真似するものだ。

クライマックス。事故の報告に駆けこんで来る先生役の子に、「自分がこの雨の中、どれだけの距離を走って来たのか想像して演じてごらん」とアドバイスすると、呼吸も乱れて、見違えるような演技になった。さらに土砂崩れが起こるシーンでは、携帯で土砂崩れの画像を検索して、みんなに見せる子もいた。ちょっとしたきっかけで芝居がリアルになる。あらためて子どもの想像力は素晴らしい。

稽古終了後、ささやかな誕生日会。先っぽにチョコレートが塗られた棒状のお菓子で乾杯し、サプライズの寄せ書きとプレゼントを渡す。重い雰囲気のミーティングで終わった先週とは打って変わり、みんな笑顔の締めくくりでこちらもうれしくなる。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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