2022.06.08
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演劇いろいろ~対人関係の効能~(25)

演劇には、人と人とをつなげるチカラがあります。
今回は、自分の体験をもとに、演劇における対人関係の効能について考えてみたいと思います。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

対人関係の効能

小さい頃から人見知りだった私は、ずっと人と関係をつくるのが苦手でした。そんな私が、人と関わる教師という仕事を何とか続けてこられているのは、やはり演劇のチカラが大きいのではないかと思うのです。

まず、役を演じるという行為によって、普段の自分が気づいていない面が引き出されます。「自分にはこのような面もあるのか」「自分はこんなこともできるンだ」という経験が自己肯定感につながり、自分に少しの自信を与えてくれるのです。

私が大人になってから初めてとある舞台に出演させていただいた時に演じた役は、「先生役」でした。しかも、普段はノー天気で剽軽な人物なのに、その裏には苛烈な過去を背負っているという難しい役柄でした。今から考えるととても演技とは呼べないつたない芝居でしたが、それでも剽軽さに振り切って楽しく演じているうちに、人を笑顔にできるエネルギーが自分の中にも眠っていたことに気づかされました。

そのようなことは、自分以外の参加者に対しても同様に起こっていました。「あの人にはこんな面もあるのか」「あの人はこんなこともできるンだ」という気づきが、互いを尊重し合う関係性をつくることにつながったのです。

そのようにして、自分の中の引き出しを増やし、相手をリスペクトする姿勢を身につけていくことができるという点に、対人関係の効能が見られると思います。

さらに、集団で一つの作品を創っているうちに、メンバー同士の意見が食い違うということがしばしば起こります。本気で一つの作品を創ろうとするのですから、意見がぶつかり合うのは当然です。それでも、その根底に相手へのリスペクトが生まれていれば、互いに納得できる答えを導き出すことができる…というのは理想論に過ぎるでしょうか。いずれにせよ、そのように意見を調整するチカラこそ、対人関係の構築には不可欠なものだと思うのです。

また、劇を演じることは、「話す」「聞く」「身体表現」といったあらゆるコミュニケーションのツールを駆使するわけですから、それらのチカラが育まれ、対人関係に寄与していることはいうまでもありません。演劇を教えている子たちは、やたらと相手の目を見て話したり聞いたりする子が多いので、人と目線を合わすのが苦手な自分はいつも恥ずかしさを感じてしまっています。

そして何より、共通の目標に向かって様々な経験を共有できることが共感につながり、人と人とをつないでいくことになっていると感じています。誰かが失敗しても、「自分もそうだった!」と云って共感してくれる人がいる安心感は何物にも代えがたいと思います。

新たなスタート

新年度の演劇活動は、新しいメンバーも加わって、15名ほどでスタートしました。初めはどこか緊張して、活動自体はギクシャクしがちです。活動の中心となっていた最上級生がごっそり抜けたのだから、当然かもしれません。しかし、歌唱披露や特技披露などの場を通して、あるいは即興芝居などを通して、互いのよさを認め合い、自然と自分の考えを伝えあう関係性ができるようになっていきます。その姿は、大人よりも子どもの方が速やかで、いつも「子どもってすごいなぁ」と感じているのです。

さて。昨年度の卒業公演が、地元のケーブルテレビ「Baycom  12ch」(ベイコム12チャンネル)で、2022年6月20日(月)~26日(日)の19:00から20:30まで、毎日放送されることになりました。「尼崎市小学校演劇発表会」として、他校のダンス発表も放映されます。遠方の方は、Baycomのアプリを無料でダウンロードすれば視聴できるそうです。子どもたちも放送を楽しみにしています。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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