演劇いろいろ~照明台本をつくろう~(26)
今年度も8月に兵庫県立尼崎青少年創造劇場・ピッコロシアター大ホールで開催されるピッコロフェスティバル演劇部門(小・中・高校の部)に、県下7校で参加させていただくことになりました。その打ち合わせ会において、ピッコロシアターの照明スタッフの方に、照明台本の書き方をていねいにレクチャーしていただく機会がありましたので、今回は「照明台本のつくりかた」について紹介したいと思います。
尼崎市公立小学校主幹教諭 山川 和宏
照明台本をつくるには
劇場で劇を上演するにあたっては、音響・照明・舞台・制作などのたくさんの劇場スタッフの方が支えてくださいます。ピッコロフェスティバル小・中・高の部(演劇部門)の場合、照明機器の操作は照明スタッフの方が行ってくださいます(なお、音響機器は子どもが操作します)。そこで、「どんな明かりが、どのタイミングで、どんなふうに点くのか(あるいは消えるのか)」のイメージを照明スタッフさんと共有しておかないといけません。そのために必要なのが、台本に照明のイメージや転換のきっかけを記した照明台本なのです。
この照明台本をもとに細かい打ち合わせを行い、照明スタッフさんが明かりをつくってくださり、操作してくださいます。
では、照明台本とはどのようなものなのでしょうか。
ト書き(登場人物の動きを示したもの)とセリフからなる演劇の台本は、A4縦向きで裏表印刷して製本しています。文は縦書きで、上の4分の1くらいは余白にしています。この余白部分に照明のイメージやきっかけを書いていきます。
例えば、「さよなら」というセリフをきっかけに夜の森のシーンに転換するという場合、「さよなら」というセリフの左側に線を引いて、上の余白部分に「夜の森」と書くのです。あるいは、「カラスの鳴き声」をきっかけに夜の森のシーンに転換するという場合は、「カラスのSE…」と書き足しておきます。SEは、効果音のことです。音楽は、Mで表します。
アルファベットで表す専門用語
アルファベットで表す専門用語には、以下のようなものがあります。
D.O(ダークオープン)・・・舞台の幕が上がった時に、舞台上が真っ暗な状態のこと。
L.O(ライトオープン)・・・舞台の幕が上がった時に、すでに舞台上に明かりがついている状態のこと。
D.C(暗転ドン帳)・・・舞台の幕が下りる時に、舞台上が真っ暗な状態のこと。
L.C(ライトカーテン)・・・舞台の幕が下りる時に、舞台上の明かりがついたままの状態のこと。
F.I(フェードイン)・・・真っ暗な状態からゆっくりと明かりがつくこと。
F.C(フェードチェンジ)・・・前の明かりから次の明かりにゆっくりと変化すること。
F.O.(フェードアウト)・・・明かりがゆっくりと消えて真っ暗になること。
C.I(カットイン)・・・真っ暗な状態から急に明かりがつくこと。
C.C(カットチェンジ)・・・前の明かりから急に次の明かりに変化すること。
C.O(カットアウト)・・・明かりが急に消えて真っ暗になること。
PIN(ピンライト)・・・人物にあてるスポットライトのこと。
台本には、通しのページナンバーをふっておきますが、それとは別に、変化する照明の数だけ、通しのQナンバーをつけておきます。例えば、「Q1 L.O 夜の森」「Q2暗転」「Q3昼の教室」「Q4混沌とした世界」…というように続けていきます。この時、どんな明かりなのかをイメージできる短い言葉を選びたいものです。この際、PINはQナンバーに含みません。PINは、別の照明スタッフさんが手動で操作するためです。
Qが多すぎると、限られた時間のリハーサルが照明の確認だけで終わってしまうことになりかねません。私はいつもQが多すぎて迷惑をかけてしまい反省しているのですが、できるだけ工夫したり精選したりして気をつけようと思います。
そして、一通り台本上に照明のきっかけを書き記すことができたら、もう一枚別の紙を用意して一覧表にまとめます。一覧表にする時には、「コピー欄」を設けておいて、同じ明かりが複数回出てくる時にはまとめて表記します。例えば、何度も「夜の森」になるのであれば、Q1のところのコピー欄にQ5,8,12などと書き加えておくのです。
注意することとしては台本に記す照明のきっかけや一覧表は、全て鉛筆書きにすることです(打ち合わせ中に書き換える必要があるかもしれないため)。他にも、「打ち合わせで決めたQナンバーを変えないこと(追加の場合は、Q1.5などのように小数点をつけることで他の通し番号に影響を与えることなく追加することは可能。ただし乱用しない)」「大きく濃い文字で書くこと」などに気をつけるとよいでしょう。
打ち合わせの最後に、ピッコロシアターの照明スタッフさんに「いつでも相談したいことがあれば連絡してください」「生徒さんにも照明機器を触って体験してもらえたらと思っています」と云っていただきました。子どもたちにとっての演劇の世界をさらに広げることができそうで、わくわくして感謝の気持ちでいっぱいになりました。
ピッコロフェスティバルを開催し、劇の上演を支えてくださる劇場スタッフの方々の熱意には感謝してもしきれません。ピッコロフェスティバルの参加が、子どもたちにとってかけがえのない体験になるよう、私自身も子どもたちとともに頑張っていこうと決意を新たにしました。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)
尼崎市公立小学校主幹教諭
演劇ユニットふろんてぃあ主宰
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。
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札幌市立高等学校 教諭
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