愉しい授業を創る~愉しい授業づくり 新年度スタート編
「愉しい」授業は、どのように創ればよいでしょう?と問われたら、どのように応えますか。
人それぞれ異なるでしょうけれど。新年度がスタートして1週間。
どんな授業開きをしましたか?
どんな学級づくりを子どもたちと話し合っていますか?
子どもが愉しい授業を具体で考えられるようにしたいですよね。
具体をイメージするには?
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授 川島 隆
YouTubeのよさ
年度末の休日。
子どもの用事で車を走らせていると、最近の子どもに関する話題が流れてきました。
「うちの子どもは、YouTubeを見て、バスケットボールの練習をするんだよね」
「それで、うまくなるんだよね」
「フォームなんかも様になってきた」
「そういえば、泥団子だって、作り方をYouTubeで覚えちゃうんだよね」
そんな内容が耳に入ってきたのでした。
バスケットボールのようなスポーツは、分かるような気がします。
実際に、コツを解説している動画を見て、真似てみる。
言葉だけじゃ伝わらないですからね。
うまくいかなきゃ、何度も繰り返し見てみる。
「いつでも、どこでも、気軽に、くり返し」見られるのがYouTubeのよいところですよね。
でも、泥団子は実体験を繰り返し重ねて、覚えてもらいたいなって個人的には思います。
目指す授業、愉しい授業は、どう創る?
目指す授業、愉しい授業を考え、創っていくためには、YouTube同様に、やっぱり授業の具体を見てみなきゃって思います。
「百聞は一見に如かず」って言いますから。
新年度の学級で、どんな授業を創っていきたい?
と、子どもに投げ掛けることがあります。
学級目標は、どんな学級を皆で創っていきたいかということ、それは、どんな授業を皆で創っていきたいかということですね。
つまりは、学級づくりは、授業づくり、授業づくりは、学級づくりであるということです。
そこで、話を元に戻してみると、その目指す授業を皆で、子どもたちと考えるには、話は、もちろん大事ですが、イメージを創る・共有するための具体としての授業が必要になると思うのです。
つまりは、子どもたちが授業を実際に見てみるということが必要じゃないかと思うのです。
子どもによる授業参観を
私が勤めていたある小学校では、積極的に、子どもたちが他の学年・学級の授業を参観する機会をつくっていました。
参観させてもらう学級の了解があれば、大丈夫です。
校内で行うことですから、そんなに構えなくてもいいのです。
「子どもたちと一緒に授業を見せてもらってもいいですか?」
「どの教科?」
「じゃ、いつの何時間目ね」
そんな感じですね。
もちろん、見られる学級も、見に行く学級も子どもたちには、それぞれ事前に話をしておきます。
授業を参観する学級では、
「皆がこれから一年間、どんな授業を創っていくかを考えるために、○年○組の授業を見せていただきます。どんなところを見ればよいと思いますか?どんなことに気を付けますか?」
そんな事前指導(話合い)をし、探検バッグにワークシートを持たせ、まるで社会科見学に行くような感じで臨みます。
一方、参観される学級では、
「○年○組が、授業を見に来てくれます。どんな授業を創りたいと思いますか?どんな姿をみてもらいたい?」
そんな話合いをしてみます。
見られることを必要以上に意識することはありませんが、先生が見にくる授業とは、また違った意識や緊張感があるようです。
こんな感じで、授業を参観します。
中には、相互に参観し合う学級もあったように思います。
授業を参観してみて
参観して、教室に戻った子供たちは、ワークシートに授業を参観しての気付きや思いを感想としてまとめていきます。
A4の用紙は、子どもの率直な思いで、あっという間にいっぱいになります。
これらをもとに、どんな授業を私たちの学級で創っていきたいかをあらためて話し合うのです。
一方、参観された学級では、参観してくれた学級のワークシートが届きます。
担任の先生が、それらのいくつかを紹介してくれます。
子どもたちにとっては、気になるところでもありますから、先生の語りに耳を澄ませます。
そして、参観した子どもたちに自分たちの授業がどのように映ったのか、どのようにしていったらよいのか、気付きを生んだりしていきます。
子どもの教育力
日本のフェミニスト・社会学者の上野千鶴子氏が、以前、教育雑誌の巻頭記事に
「教師の教育力より、ピアの教育力の方がはるかに大きい。このピアを形成するのが教師の役目です」
と語っていたのを思い出しました。
教師がいくら魅力的な理想の学級、授業を語るよりも異なる教室ではあるけれど、同じ学び手として、授業を創っている仲間を直接見ることが大きな学びになるのだと思います。
結びに
園における子どもの遊びや活動。
どのようなことが意図され、子どもたちに学ばれているか。
とかく「幼小接続」というと、生活面におけるルール、言い方によっては、「しつけ」の部分が話題にのぼることが多いように思います。
しかし、接続していくべきは、それだけでなく、「学びの接続」です。
小学校教育でいうならば、幼児期の学びを踏まえた授業をどのように創っていくかということではないかと思います。
今回取り上げた遊びや活動の子どもの姿を見取ることができているといないとでは、小学校で、どのような指導の違いがでてくるのでしょう。
ドッジボール遊びに見られた姿、卒園式に向かう子どもの姿を、小学校の授業に、活動に、うまくつないでいくことはできないでしょうか。
とりわけ、小学校1年生の授業づくりのポイントの一つは、そこにあるのではないかと思いました。
次号では、さらに、教科とつながる、園での活動を公開保育から紹介していきたいと思います。
つづく。
参考資料
- 上野千鶴子:「巻頭インタビュー ピアの教育力は 教師の教育力に優る」 総合教育技術2016年6月 小学館

川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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