2021.10.27
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演劇いろいろ~新たなる出発~(16)

ピッコロフェスティバルから2か月のインターバルを挟んで、来年1月の尼崎市小中学校演劇発表会での上演を目指して、演劇活動を再開しました。
私たちがどのような立ち位置で活動しているのかと基礎トレーニングの仕方について紹介します。

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭 山川 和宏

演劇ユニットふろんてぃあ

私たちは、「尼崎市立立花南小学校演劇クラブ有志with演劇ユニットふろんてぃあ」という名称で活動しています。どうしてそのような名称になっているのかということについては、若干の説明が必要だと思います。
小学校におけるクラブ活動は、学習指導要領の特別活動の中に位置づけられています。それをもとに学校で計画を立て、本校であれば年間8回程度のクラブ活動の時間が設けられています。しかし、大きな劇場で発表するような劇をその限られた時間で完成させることは到底不可能です。そのため有志を募って、教育課程外の活動として芝居づくりをしているのです。中学校の部活動も教育課程外の活動ですが、小学校の場合は、部活動というものがありませんので、教育課程外の活動として学校長の特別な許可をもらって休みの日に活動しているのです。
教育課程外の活動であり、部活動でもないため、学校長の厚意により行わせていただいていると自分は解釈しています。そのため、あたりまえのことですが、休日にいくら活動しても金銭的な報酬は一切ありません。
ここで課題となるのは、いわば私がボランティアとして行っている活動なので、私が学校を異動してしまうと、この活動自体も次の学校に移さざるを得ないということです。前任校の子どもたちの中には演劇を続けたいと強く願う子もいるので、異動先の学校長と前任校の学校長と保護者の了解を得て、学校の枠をこえた活動にしています。また、中学校に進学してからも演劇を続けたいという卒業生の受け入れも行っています。学校外の子も参加しているので「演劇ユニットふろんてぃあ」という名称を使用することにしたのです。
活動自体は、芝居づくりのために集まっているので、劇の発表のおよそ3か月前に有志を募るようにしています。劇の発表が終わると一度解散します。そして、次の発表会のおよそ3か月前になるとまた再結成するのです。年に2回程度それを繰り返して、17年目を迎えています。教育課程外のボランティアのような活動がそのように長く続けられているのは、周囲の方々の理解があってこそです。その点には、いつも深く感謝しています。
今回も、新たに募集をかけて再結成したので、8月のピッコロフェスティバルのメンバーから数名の入れ替わりがありました。
10月23日(土)に行った第一回目の活動では、新しいメンバーに対して活動の流れを親身になって教える先輩の姿が見られました。今回も新型コロナウイルスの感染防止に留意しながらの活動になります。今後の感染状況によっては、発表会の中止の可能性もあります。そのような中でどのように芝居作りを進めていくことになるのかについては、随時報告させていただこうと考えています。

基礎トレーニング

活動を再開すると、芝居づくりに先立ってシアターゲームなどを取り入れながら、基礎的なトレーニングを行います。今回はどのようなことに気をつけて基礎トレーニングを行っているのかを紹介します。

①ペットボトルアクティビティ
500mLのペットボトルに半分くらいの水を入れて、頭の上に載せる。100均で購入できるネット状のすべり止めをコースターサイズに切り取り、その上に載せると落ちにくい。
身体に余計な力を入れずに、耳と肩とくるぶしが真っすぐのラインになるように立つ。頭でペットボトルを押し上げるイメージを持つとよい。
慣れてくると、座ったり立ったりを繰り返す。さらに、二人組で押し合いをする。押し合いは、相手が押してくる力を受け流す感じでバランスをとる。さらに、全員で鬼ごっこをしたり、落としあいをするのも楽しめる。
集中力と身体感覚やバランス感覚が鍛えられる。

②外郎売りの台詞
早く言うだけでなく、滑舌をもっと意識する。声をいかに響かせるかが大事。前だけでなく、後ろに響かせる感覚を持つ。はじめだけ大きな声を出せるがだんだんと小さくなって先細りになる言い方ではなく、どんどん大きく強く広がっていくイメージで云うとよい。
身体に余計な力を入れると声は響かないので、必要なところ以外はリラックスすることが大事。

③スローモーション
◆歩くスローモーションは、実際に歩いてみてだんだんとゆっくりしてみる。腕は、後ろにふるときは腕ごとふる。前にふる時は、身体の前側のラインまでは腕ごとふり、身体の前側のラインを過ぎるとひじを曲げる。実際のスピードで歩くときは遠心力が働いて自然に腕をふれるが、スローモーションだと遠心力が働かないので、意識しないと腕はふれない。足はかかとをあげて前に重心をかけて踏み出す。上に伸び上がるのではなく、前に踏み出すことをイメージする。目線は前の物に。意識が足元にいかないようにする。ふりむきながらまばたきをスローでする。ぼんやり遠くを見ながら目線を動かすなどのテクニックも使う。呼吸は、息をとめずに実際の呼吸よりもゆっくりする。ペアを作って、お互いのスローを観察し、アドバイスしあう。

◆走るスローモーションは、実際に走っている通りにはいかないが、上に伸び上がるのではなく、前に走ろうという意識を持つ。腕を後ろにふる。前に出る足とは反対側の肩を前にひねり、腕をふる。楽をしようとせずに、しっかり身体を動かす。しんどさに負けない。

◆スローから元のスピードに戻る場合は、その切り替えははっきりした方が見た目がよい。

④その場走り
その場を走る時は、腕を後ろにふる。ひざはしっかりと前に出して足を回転させる。後ろにしっかり蹴り上げる。顔をあげて走る。曲がるときは、目線、首、身体の順で曲がる。曲がる方向の肩を下げ、反対側の肩は上がる。鏡の前で練習する。

⑤ダンス
表情も大切!

⑥セリフがない時の芝居
グループで2個のペットボトルのキャップを投げあいしている状況を体験させる。ペットボトルのキャップが自分のところに飛んでこないで、他の人たちの間を飛んでいるのを目と体で追いかけている状態が、セリフのない芝居。

⑦その他
普段の生活では姿勢や発声を意識するが、舞台上ではそれは演技(その役になること)にとって余計なことになってしまうので、意識せずにできるようにしておく。セリフはどんどん自分から外へ外へとエネルギーが広がりでるイメージで云う(役のキャラクターにもよって違う)。

山川 和宏(やまかわ かずひろ)

尼崎市立立花南小学校 主幹教諭
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。

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