文化対応教育(Culturally Responsive Teaching )とは?~文化と教育をつなぐ視点
アメリカの教育界では、文化的に対応することの重要性が話題になり、今日学校現場ではCulturally Responsive Teaching(CRT)「文化的教育」の実践が求められています。
※CRTとは、学習のあらゆる側面において、生徒の多様な文化的背景を認識し、尊重することです。
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃
文化対応教育(CRT)とは何か?

Classroom Board
このような「文化的」側面は、現在アメリカの教育現場で教師と生徒の関係において最も誤解されやすい面であると同時に、学校の規律制度において生徒が問題を起こす原因ともなりがちであるようです。多文化共生にあまり馴染みのない私たちの中には「何のことやら?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
今回はその「文化的教育」は何を意味するのか、そしてそれは本当に重要なことなのだろうかという点で少し掘り下げてみたいと思います。
なぜ文化対応教育が必要なのか?
CRTは、教師が文化的な違いやニュアンスを理解することで、教師と生徒間の誤解やギャップを埋めるためのものです。
ここでいう「文化」とは、世代から世代へと受け継がれる規範、信念、行動のことを指しています。
例えば生徒がある質問になぜそのように答えるのか、その答えや、教師が話しかけているときにその生徒が目を見て会話をすることに抵抗を感じるその理由。実は彼らの育った家庭やコミュニティでの文化的背景や境遇により、そのような行動になっているかもしれません。
ザレッタ・ハモンドは著書『Culturally Responsive Teaching and the Brain』の中で、「文化的・言語的に多様な生徒の多くは、三年生になると読解力が1年以上遅れる傾向にある」と述べています。現在、CRT(文化対応教育)は、生徒がその学力格差から抜け出す道を見つけるための、最も影響力のあるツールの1つであるとアメリカの教育現場では捉えられています。
つまり、内面を深く掘り下げ、見たくないもの、話したくないものを認識し、特定すること。人生で経験したことにより固定観念を形成し、それが暗黙のバイアス、偏見に変わっていく、このような無意識の特性は、生徒やその保護者との関わり方、カリキュラムの選び方、学習評価、授業計画の立て方に良くも悪くも影響を与えます。
我々教師は、学校が置かれている社会政治的背景を認識し、その現状を深く認知し、生徒自身もまた、学校で置かれた立場、自分たちを取り巻くシステムを理解する必要があると考えられています。
その文化的教育の為にまず私たちができること、それは振り返り
過去と現在の実践を振り返る時間を作ることが大切です。そしてまず自分の偏見を振り返ることです。過去に特定の人種と接したことが、保護者とのコミュニケーション能力に影響を与えていませんか?
変化を起こすためには、自分の教育実践の根源を特定し、掘り起こす必要があります。継続的な自己認識を繰り返すことで、自分の文化的背景がどのように自分の指導スタイルに影響しているかを考えることです。グローバルな繋がりを増やすことで生徒の生活や地域社会に関連する世界的な問題とを関連づけることも効果的でしょう。
次回はCulturally Responsive Teaching 文化対応教育を用いた教室実践を紹介します。

下條 綾乃(しもじょう あやの)
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。
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