幼保小連携から、幼保小協働にしよう~子ども一人ひとりの育ちをつなぐ~(その②)
今回も、1年生を担当される先生に向けて、一昨年と昨年の1年生を担任した経験をもとに、幼保小接続から幼保小協働へ至るまでの話をしたいと思います。
前回の続きになります。
(※文中に出てくる個という言葉について、そこにいる子どものことを指します。その場にいるのは、その子だけなので、個という表現を使っています。)
兵庫教育大学附属小学校 箱根 正斉
幼小連携から幼小協働へ向かうための手引きの作成
前回は、給食の実践を紹介しました。その実践より、誰もが持続可能で協働できるプログラムをつくってみました。(資料①)
(1)ねらいについて
なぜ、この幼小架け橋プログラムが必要なのか、ねらいを明確にしておくことが重要だと考えました。
幼児教育の視点から小学校におけるその個の学びの在り方を考える。保育では総合的な学びから、その個の育ちを見取ることを考えていることを小学校教育でも実現していく。その視座に立ち、小学校教育においても、どのようにその個が育っていくのか丁寧に見取ることを確認する。そして、その育ちが本校の学校教育目標「人間して生きぬく力を育てる」ということにつなげていくことを意識して実践に取り組むこととしました。
(2)協働して実践をつくるプロセス
次に協働して実践をつくるプロセスについてです。まず、小学校の目標を提示し、その中でどのような経験から幼児教育、保育へのねらいを考えるか、協働して目標を立てていきます。そして、その協働して対話しながら活動を考える過程で、目指す個の具体をその個の具体で語りながら、検討します。その後、実践をもとに、事後はその個の名前で学びや育ちを語り、次の日の教師やその個の育ちへとつなげていこうとして実践に取り組んできました。
このような流れで、次のような実践を実施しました。
幼小協働実践③「おおきなふねをうかべて、のりたい。」

兵庫教育大学附属幼稚園年長 『おおきなふねにのりたいな!』 「小学校のプールをかりて、ふねにのってみよう!」 【小学校1年生は応援しています!】
こちらは幼稚園の実践です。
幼稚園の先生「先生、舟をつくってるんですけど、幼稚園のプールは、もう使えなくて」
私「小学校のプールは、もう誰も入らないのでいける(使える)かもしれません」
この話をきっかけに、小学校のプールで園児が舟を浮かべて活動しました。それを見た1年生は、手紙でアドバイスをします。
「ペットボトルでつくったほうがいいよ」という材に対するアドバイスや幼稚園の子の頑張りを素直に認める感想など1年生の子から園児に向けてメッセージを送ることとなりました。
そして、夏休みを挟み、9月になっても園児の舟づくりは、続きます。粘り強く試行錯誤しながら、園児は、活動していました。そして、ついに園児は乗れる舟を完成させることができました。
幼小協働実践④ 幼保小の校種を超えた活動の懇談
附属小学校では研究発表会や授業公開があります。その際、附属幼稚園や他の園の先生方に来ていただき、事後検討会に参加していただきました。
1月の研究発表大会では、車に見立てて木材でつくったハンドルを電動ドリルで必死に取りつけようとしていたA児の姿について、私がとことん関わる時間となりました。
その教師の関わりとその個の姿から幼保小における育ちや学びと、関わりについて協議しました。その個は、附属幼稚園出身の個でもあったため、その個理解から、育ちを共有し、見取りから協働してその個を育てるという視点でその後の関わりを考えることができました。
協議の中で幼稚園の先生からその個への関わりについて、以下のような意見が出ました。
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・電動ドリルをそこまでやりたかったのか。
・「今日全然遊んでない」と発言があったがワークシートには「今日は、全然遊んでないけど、ハンドルができて良かったです」と記述があった。本当はどう思っているのか。
・その個は、教師の関わりを本当に求めているのか。
・その関わりで個は探究し続けるのか。教師がいなくなればやめてしまうのは、その個にとって本物じゃないんじゃないか。
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こうした意見より、次の日からのその個の活動への見取りと教師の関わりへ生かすことができました。
また、私も附属幼稚園の研究会に参加しました。このように幼児期の育ちと保育を見て学び、協議することで互いにその個の育ちを語り共有することができました。
このように互いの保育と活動を見合い、協議することで、互恵的に学び合う関係性をつくることにつながりました。この互恵的な関係こそ互いに協働する姿勢につながると感じました。
幼小協働実践⑤ 小学校に向けて アプローチカリキュラムの視点から実践する
3月。保育園や幼稚園では、小学校に向けてどのようにつないでいくか、考えていく時期となります。その際、国語科「ふぞくようちえんの子に小学校のことをつたえよう」と単元を組んで実践しました。さらに、保育園や幼稚園における小学校へ向けたアプローチカリキュラム構築の視点から、給食と掃除の時間もいっしょに経験することを実践しました。
小学校としての目標は〇、保育の狙いは☆として、実践しました。
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〇園児と給食を準備して食べたり交流したりする活動を通して,園児という対象を捉え,活動内容や方法を考えたり工夫したりして,適切な関わりを考えることができる。
○園児と給食を準備して食べたり交流したりする活動を通して,園児と自分を重ね合わせ自己の成長を実感する機会とするとともに,これからの学校生活への意欲を高め,主体的に生活に向かおうとすることができる。
☆小学校の児童といっしょに給食を準備して食べる活動を通して、小学校への憧れや期待を 膨らませる。
☆小学校の児童といっしょに給食を準備して食べたり、交流したりする活動を通して、小学校での生活について知る。
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当日は、4校時から国語・給食・掃除と附属幼稚園の園児と1年生で交流しました。園児は、新しい環境だったため戸惑う部分も見られました。それに対して1年生は、園児が落とした箸を拾って洗ったり、掃除の仕方をいっしょにやりながら教えるなど関わりを持ち、自らの成長を実感する機会ともなりました。
実践より考えること
前回の実践も含めて、大切だと感じたことは、個々の経験を生かし、思いや願いを実現し、自らの暮らしをより良くしていくために教師が支えることだと思いました。幼稚園の子だから、小学校1年生の子だからではなく、互いにその個の姿を通して話し合い、より良いその個の育ちを目指し、共同しながらその個と関わっていくことだと思います。
幼保小連携の視点として目の前にいるその個を見つめ、その個の姿で、育ちを語り、あたたかい眼差しで個を育てることを共有し、協働して教育活動を考えることではないでしょうか。
私は、2年間1年生を担任して、幼稚園とどっぷり交流し、保育に染まった経験が小学校教育に生かされていると感じています。その個をみる。その個をみて考える。なぜ、その個はそうしたのか、きく、その個の心の声を、訴えをきく。このことは、年齢がいくつになっても変わりません。その個の願いをきき、その実現に向けて支えることが重要だと思います。幼保小が連携するのではなく、幼保小がその個その個の育ちに向けて協働しながらいっしょに関わり育てていこうという視点をもつことが本質だと考えます。
みなさんも、ぜひ、幼保小で協働して、その個を育てていくことを実践してみてはいかがでしょうか。

箱根 正斉(はこね まさなり)
兵庫教育大学附属小学校
個がくらしを見つめ、その個が育つことを考えて実践に取り組んでいます。個が立ち、協働し、探究する。個がくらしをつくり、個が生きる。
生活科・総合的な学習の時間を中心として、その個が自分の思いを膨らませながら、自らの願いを実現し、自己実現を更新していく。
そんな個の育ちを目指して実践しています。
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