資質・能力を育成する授業づくり~国語編~
9つの資質・能力を育成するための教科学習。
その具体例を紹介します。
今回は4年生の国語(物語文)です。
姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭 竹内 哲宏
発達段階に合わせた9つの資質・能力
前回は、めざす子ども像と9つの資質・能力について紹介しました。新年度がスタートして1カ月。日々の授業の実際の取り組みを伝えます。といっても、何か特別なことをしているわけではありません。新年度の始めの1カ月は子どもの状況を見取ることに注力します。その中で、どの教科でも意識しているのは次の2点です。
- 教科における目標の達成を目指して授業を行う。
- 子どもが自分の学びを自覚できる活動を位置付ける。
本校では、1~9年生をジュニア(1~4年生)、ミドル(5~7年生)、シニア(8~9年生)と分けています。それに伴い、9つの資質・能力を発達段階に合わせて提示しています。
4年生では、このような言葉で示し、子どもたちが意識できるようにしています(図1)。ただし、始まったばかりなので、こちらが意図していることと子どもたちが自覚していることのちがいを見取りながら、必要であれば更新していこうと思います。
資質・能力の育成を目指した国語科の授業

図2:単元のふり返りシート(筆者作成)
それでは、この表の活用方法について具体例を挙げます。今回は、国語科『白いぼうし』(光村図書)での実践です。単元の流れは次の通りです。
1時間目 初発の感想を交流し、単元のめあてを設定する。
2・3時間目 松井さんの一日の行動を整理し、そのときの気持ちを考える。
4時間目 女の子はちょうだったのかについて考える。
5時間目 松井さんの性格について考える。
6時間目 松井さんになっておふくろに手紙を書く。
7時間目 単元のまとめとふり返りをする。
この中で2・3時間目の活動を探究のプロセスに沿って紹介します。
【問いを立てる】では、「松井さんの一日を読み取ろう」というめあてを設定しました。
【やってみる】では、文章の叙述から松井さんの行動を読み取りました。4年生になって初めての物語文ということもあり、全体で確認しながら丁寧に行いました。ここまでが1時間です。
そして、次の時間では、叙述や会話文を基に松井さんの気持ちを考えるという活動を行いました。探究のプロセスでいうと【やってみる】の続きになります。このときの活動は、第一場面を一斉で行い、第二場面から第四場面については「一人で読み取ってもいいし、自分で選んだ仲間と読み取ってもいいよ。」と指示しました。
【確かめる】では、読み取ったことや考えたことを全体交流しました。
最後の【まとめる・ふり返る】において、今回の学習活動で発揮したと思う資質・能力を記述するように指示しました。図1で示したものを黒板に貼り、子どもたちには、「発揮したと思う学びの力とその理由を書きましょう」と伝えました。
記述を紹介します。
◆この学習で身についた力は「協力する力」だと思います。理由は、その気持ちを考えるときに自分の意見と相手の意見の共通点をさがして答えを出すからです。
◆ぼくは「比べる」が身についたと思います。なぜなら、人の意見を聞いて自分と比べることができて、よりいい案を思いついたからです。
◆一場面ずつ考えていって、「集める」などが身についたと思います。どうしてかというと文章から、いろいろな気持ちを集めたからです。
単元のふり返りでは、図2に示すようなふり返りシートを用意しました。ふり返る視点は2点です。
①は、単元の学びについてです。「白いぼうし」を学習してどのようなことがわかったか、また、物語の読み方についてどのようなことができるようになったかをふり返ります。これは、学習内容についてのふり返りです。
②は、学びの力についてです。単元を通してどのような「学びの力」が身についたかをふり返ります。自分が身についたと思う力(資質・能力)を選ぶとともに、その力が身についたと思う理由を具体的なエピソードとともに書くようにします。子どもの記述を紹介します。
① 「白いぼうし」を学習して、登場人物の気持ちを考えることや物語のどんな状況かを考えて、物語の言い方はこういう意味だなとおもって読むことができるようになりました。
② 「白いぼうし」の学習で、話し合う力が身についたと思います。どうしてかというと、考えを交流して黒板に1ついいものを書くときに、「これがいい」「あれがよかった」と話し合えたからです。
このように、一時間ごとの授業や単元のふり返りに資質・能力を自覚できるような取り組みを継続していきます。今後、学校行事での活用や別の教科の実践も紹介していこうと思います。

竹内 哲宏(たけうち てつひろ)
姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭
世界遺産姫路城の目の前にある姫路市初の義務教育学校に勤めています。
資質・能力を育成するための授業づくりを中心に発信できればと考えています。
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