演劇いろいろ~演劇・表現活動指導研究会~(31)
73年続く尼崎市の演劇教育の実践の中で、学級経営や授業力向上に役立つ指導法を市内の教員に広げようと、今年度より演劇・表現活動指導研究会という研究グループを立ち上げました。その研究会の様子を報告します。
尼崎市公立小学校主幹教諭 山川 和宏
第2回演劇・表現活動指導研究会より
今年度、尼崎市内の有志の教員13名で「演劇・表現活動指導研究会」を立ち上げた。そのねらいは、尼崎市で73年続いてきた演劇発表会に関わる先生たちが培ってきた演劇・表現活動の指導スキルの中から、学級経営や児童理解、授業力などの向上に役立つものを共有することにある。演劇教育とは人間力を育てることであり、教師が普段の実践の中に演劇的な要素を取り入れることで、「人(自分や相手)を受容し、理解するチカラ」「コミュニケーション力」「自分を表現するチカラ」をはじめとして、人としてあらゆる方面に成長させることに大いに役立つはずだと考えている。
7月31日(月)に、第2回演劇・表現活動指導研究会を開催した。
今回は、私が指導している尼崎市立立花南小学校演劇クラブの児童ならびに卒業生が、どのような活動をしているかを体験してもらうという形で行うことにした。参加してくださった教員は、市内9校12名、児童・生徒は21名。また、外部講師として、元タレント事務所講師の方を1名招いた。
内容は以下の通りである。
①8月17日(木)に兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)大ホールで行われるピッコロフェスティバルで上演予定の劇より、2つのシーンを子どもたちが実演した。
②演劇クラブの発声練習を子どもたちが実演した。
③自分のありのままの姿を安心して表現できる場づくりとしてのアイスブレイク的なゲームを子どもと大人が一緒に体験した。
・室内を歩き回って、すれ違う人に次々とあいさつして回る。→あいさつの代わりに動物の名前を云って、鳴き声で返事する。→すれ違う人と次々にじゃんけんして、違う人を相手に3連勝できたらゴールできる(負けると勝ちはリセットされる)。
・6~7人で円になって、「わたし、あなた」と云って、ランダムにリレーする。→普通にやってみる→動きなしで声と目線だけでやってみる→声なしで動きと目線だけでやってみる→目線なしで声と動きだけでやってみる→普通にやってみる。(※フィードバック…目線の重要さが感じられた。声がなくても意外とリレーできた)
・6~7人で円になって、「あ」「い」「う」「え」「お」「か」「き」「く」「け」「こ」・・・と五十音をリレーしていく。
・全員で円になって、円の中心に立った一人の動きに合わせて、全員がリアクションをとる。
・2人で向かい合って、自分自身の中の怒りの感情を同時にぶつけ合う(相手に対する怒りではなく、自分自身の体験の中から怒りの感情を呼び起こす)。
・ウインクキラー。室内を歩き回り、鬼はウインクで人を倒していく。人は鬼を見つける。
④質疑応答
Q 初めて演劇する人に、どんな指導(活動)をしているのか?
A 今日やったようなウインクキラーなどのゲームが中心。それに加えて、エチュード(即興劇)も行う。
Q 演劇をやって成長したと思うのはどんなこと?
A 人前でも物怖じせずに表現する力や、発表する力が身についた。おかげで市内のスピーチコンテストで優勝することができた。緊張しなくなった。児童会や生徒会の役員になって活躍することができた。
Q 練習頻度は?
A 週一回土曜日の午前中が基本的な練習日で、発表会前は増やしている。3か月続けて活動し、その後2~3か月休むのペースで行っている。
Q 劇づくりは教師が演出するのか、子どもが演出まで考えるのか?
A 両方。子どもたちで意見を出し合い、教師が助言する形で行っている。子どもたちが主体となって計画して稽古を進めることも多い。
Q 発表が苦手な人は、どうやって発表できるようになったのか?
A 先輩やみんなが大丈夫だよと声をかけてくれて、発表しても大丈夫な雰囲気を作ってくれたことでだんだんできるようになった。
Q 女子ばかりだけど男子はどうしたら入るか?
A 今日は欠席しているが、男子も一緒に活動している。
⑤外部講師(元タレント事務所講師)より
・自己紹介
・受容リズムゲーム(連想した言葉をリレーしていく。目的…ジャッジをしないで受け入れる。連想した言葉を云えなくて止まってしまう現象はどうして起きているのかを考える)
・手と脳の協応。単純な指の運動をして、自分の身体の動きが思った通りにいくかいかないかを感じる。次に、腕の動きでやってみる。
・見えないものを感じる。手の中で見えない球をつくって、身体に入れて感じてみる。その見えないものを「わたしあなた」で回してみる。
⑥手品の実演とレクチャー
・球が増えたり減ったりする。消えたり出現したり、大きさが変わったりさせる。
・選んだカードを当てる。
・学級でできる手品のタネの紹介。
参加者の感想より
①今日の研究会で得られたことはどんなことですか?
〇子どもたちが心を開いていくきっかけや自分を表現しようとするきっかけになるための心のほぐし方などを学べた。目や動作の大切さや、逆にそれを制限されても伝え合うことができることを子どもたちに再確認させる方法を学んだ。
〇言葉はもちろんですが、それがなくても人とつながれる感覚を学ぶことができました。普段忙しさに追われ、ついつい授業を進めることが中心の毎日だったので、新鮮でした。すぐにできそうなアイスブレイクは新学期に実践してみようと思います。“心を開放する”感覚を子どもが身につけられたら何でもできそうな気がしました。
〇アイスブレイクとして有効なゲームの活用や、教師が中心になるのではなく、子どもたちが中心となって活動を進めていく環境づくり、サポートの仕方。
〇色々なアプローチの方法で子どもたちが思い切り表現できることが分かりました。手を挙げさせたり、しゃべらせようとしたりするのではなく、自ら表現しようとするためには日ごろのトレーニングが必要だと思いました。
〇演劇を学ぶことを通して子どもたちがこんなにイキイキするということを目のあたりにして、子どもたちが自信をつけていっていることがよくわかりました。
〇あらためて演劇が人と人とのコミュニケーションに与える影響が大きいことに気づきました。
〇子どもたちと一緒に楽しく活動することで、自分もやってみたいと思うことが見つかりました。
〇表現というのは、声、動きだけでなく、心もあるのだなと感じました。何かあたたかいものがつたわっていく不思議な感覚がありました。
〇教室での姿とは違った輝く場所があるのは、子どもの居場所づくりという意味でのとても意義があることだと思いました。
〇子どもたちが自分を表現すること。いろいろなアクティビティや特活の時間やアイスブレイクで使えそうだと思いました。
〇児童の考えや思いを表現するために必要なこと。自分を受け入れてくれる関係・環境。アイスブレイクを通しての信頼関係づくり。等を教えて頂きました。
〇子どもたちが自分を出すために教師側も自分を表現する術を身につけたいと思いました。
〇子どもたちが楽しそうに(卒業生も仲良く)活動しているのを見て、チームワークのよいステキな集団だなあと思いました。私も「わたしあなた」を最初より終わりの時の方がすごく楽しむことができました。
②今後の研究会でやってみたいことは?
〇学校生活の中で表現活動をどのように取り入れていくと有効か、どんな場面での活用の具体例があるかを学びたい。
〇演劇活動をしたことのない子どもに、まず導入としてゲームなどを取り入れるが、次により自分自身の感情表現をはずかしく思うことなく取り組める方法。
〇お芝居の稽古も見学したり、体験したりしてみたいです。また、劇以外の表現方法も知りたいです。
〇表現活動を通して、得られることは多くある中で何を一番に思うかというところ話し合って、そのためのメソッドというか方法を探っていきたい。
〇演劇・表現活動のそれぞれの活動の意味と効果を確認しながら体験する活動。
〇思い浮かびません。が、クラスですぐ取り入れられる、まねできるような表現活動があればやってみたいです。
〇演劇・表現活動の楽しさを広める為には何度もこのような場を設けて、一緒に考えていけたらよいと思います。
〇表現活動が幅広いことを知ったので、各校でのクラブの状況など情報交流ができたらいいなと思いました。学校の限られた時間の中でどこまでできるのかなと思いました。
〇学校(限られた)の時間の中で、どんな積み上げ方をして、それを活躍の場につなげるか。その方法など。
〇また是非参加させて下さい。
③その他
〇はじめて参加させて頂きましたが、子どもたちも生き生きとしており、自分の気持ちを物怖じせず伝える力の素晴らしさを感じました。ありがとうございました。
〇市内で、このような活動を広めていけたらと思います。本日はありがとうございました。
〇今日は子どもたちといっしょに活動できて楽しかったです。手品のネタもいただいて、ためになりました。
〇台本の用意や指導するにあたって何を学ばれてきたのか知りたいです。私はありがとうございました。
〇子どもたちを交えて、実技演習もできたのでよかったと思います。夏休みならではの研修で楽しかったです。
〇子どもたちの明るく活発な雰囲気がとても心地よかったです。本日はありがとうございました。
〇楽しい時間でした。ありがとうございました。
〇すごくたくさんの先生方が参加して、元気で明るい子どもたちと一緒に楽しく体験できたことがとてもよかったです。
ピッコロフェスティバルに今年も出演しました!
8月16日(水)・17日(木)の両日、兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)大ホールにおいて、ピッコロフェスティバル小中高校演劇の部が開催され、兵庫県内の7校が参加しました。私が指導している尼崎市立立花南小学校演劇クラブ有志with演劇ユニットふろんてぃあも、出演しました。
山川 和宏(やまかわ かずひろ)
尼崎市公立小学校主幹教諭
演劇ユニットふろんてぃあ主宰
富良野塾15期生。青年海外協力隊平成20年度1次隊(ミクロネシア連邦)。
テレビ番組制作の仕事を経て、小学校教師になりました。以来、子どもたちと演劇を制作し、年に2回ほど発表会を行っています。
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札幌市立高等学校 教諭
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