東日本大震災を題材にした授業実践(3) わたしたちが生まれた時に、どんな思いがあったのだろう(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池 健一さん)

東日本大震災を題材にした授業について、さいたま市立植竹小学校教諭の菊池健一さんが、全6回にわたって連載します。震災から年月が経つ中で、記憶の風化が指摘される一方、学校教育において、命の大切さや日常の尊さを伝えることの重要性は今も変わりません。低学年の子どもたちが震災を自分事として受け止めていく学びの過程を、授業実践を通して報告します。
道徳の授業で「命の大切さ」を考えました。教材を通して自分が生まれた時の思いに向き合い、さらに震災の語り部の話を聞く学びへとつなげた実践を紹介します。
道徳教材『やっと会えたね』で命の大切さを考える
子どもたちが学習に使用する教材には、「生命の尊さ」を学ぶ資料があります。小学校2年生の道徳教材『やっと会えたね』では、お産のためにお母さんの妹のまゆ叔母さんが自分の家に来ますが、急に産気づき病院に行くことになるという話が描かれています。
主人公がまゆ叔母さんのお腹に手を当てて赤ちゃんに話しかけたり、お産に向かうまゆ叔母さんを心配する様子、そして無事に赤ちゃんが生まれた後などを取り上げ、主人公の気持ちを考えました。子どもたちは友達と話し合いながら、生まれた赤ちゃんに話しかけるときの気持ちなどを考えていました。
「きっと、無事に生まれてよかったと思っているよ」
「急にまゆ叔母さんが病院に行ったから、とても心配していたと思うよ」
「まゆ叔母さんのことも赤ちゃんのことも心配だっただろうね」
まゆ叔母さんを心配する気持ちや無事に赤ちゃんが生まれて安心する気持ちを、資料から読み取っていました。
そして、命はみんなから祝福されて生まれてくるのだということに気づいていきました。
「自分が生まれた時はどうだったのだろう・・・」
子どもたちは、そう考えていました。
きっと主人公と同じように、自分もみんなから心配されて、生まれたことを喜んでもらえたのだろうと想像したようです。一方で、「実際にお父さんやお母さんがどう思っていたのか知りたい」という気持ちが芽生えているのを感じました。
保護者の言葉から知る生まれた時の思い

保護者による生まれた時のシート
子どもたちに内緒で保護者の方に協力をお願いし、子どもたちの生まれた時の様子や、その時の気持ちなどを知らせていただきました。道徳の授業の最後に、それを披露しました。
「とても難産でちゃんと生まれるか不安でした。だから生まれてきたときには本当にうれしかったです」
「お父さんがずっと付き添っていてくれました。赤ちゃんを見て、お父さんは泣いていました」
「お父さんそっくりなのでみんなで笑いました。生まれてきてくれてありがとう」
「お母さんはとても苦しそうで、看護師さんに何度も『あとどれくらいで産まれますか?』と聞いていました」
「生まれた時には、ほっとした気持ちと安心した気持ちになりました。少し時間が経つと、赤ちゃんがかわいくてたまらなくなりました」
「お父さんお母さんお兄ちゃん、みんなで家族が1人増えたことを喜びました」
子どもたちは自分が生まれた時の様子を聞いて、本当にうれしそうでした。そして、自分がみんなから祝福されて生まれてきたことを改めて感じたようです。この授業は保護者にも参加していただいたので、その後家族でも話題になったようです。
今回の学習を通じて、子どもたちは自分が家族みんなから愛されていること、そして家族はかけがえのないものだということを学びました。そして何より、愛されて生まれてきた命がどんなに大切かを知ることができました。
震災の語り部である佐藤さんの話を聞きたいという思い

児童に示した石巻の写真
この取組の始めに、震災の語り部である佐藤美香さんを紹介しました。連載の第1回でも触れましたが、佐藤さんは東日本大震災で当時6歳だった娘の愛梨ちゃんを亡くしています。震災後、命の大切さを伝えたいと、積極的にさまざまな場で講演を続けています。
「石巻の佐藤さんからお話を聞いてみたい」
「娘の愛梨ちゃんはどんな子だったのか聞きたい」
「どうして今でもお話をしているのかを知りたい」
子どもたちは、佐藤さんから直接話を聞きたいという気持ちを強くしていました。
今回、日本赤十字社宮城県支部の「JRCオンライン語り部LIVE 2025」の取組に参加し、オンラインではありますが、佐藤さんから話を聞く機会を得ることになりました。新聞記事や担任の紹介で知った佐藤さんが、どんなことを語りかけてくださるか。そしてどんな学びを得られるのか。思いを込めてオンラインでの学びに臨むことになりました。
直接質問できるか分かりませんが、子どもたちは佐藤さんに聞きたいことをワークシートに書きました。
「佐藤さんはどうして今も語り部を続けているのですか?」
「もし娘の愛梨ちゃんにもう一度会えるとしたらどんなことを言いたいですか?」
「どんな気持ちで語り部をしているのですか?」
多くの問いが書かれていました。佐藤さんの御厚意で、後日子どもたちの質問に答えていただけることになりました。まずは、しっかりと佐藤さんのお話を聞きたいと思います。私も子どもたちとさらに学びを深めていきます。
次回は、石巻の語り部・佐藤美香さんにお話を聞いた授業についてレポートします。
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文・写真:菊池健一
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