2025.11.12
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

小学校体育「走り幅跳び」授業実践 ~あの日の自分を 飛び越えろ!~(1)

今回は、2学期の前半に実施した「走り幅跳び」の単元での学習の様子を紹介します。
子どもたちの「高く跳びたい!」「遠くまで飛びたい!」という思いを引き出す場づくりにこだわって指導しました。

明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之

単元について

6か所の場をデザイン

 

「学習指導要領解説体育編」の3・4年生の内容の中で、幅跳びについては以下のように書かれています。

「幅跳びでは,その行い方を知るとともに,短い助走から強く踏み切って遠くへ跳ぶこと。」(2017.文部科学省)

ポイントは3つあります。

1つ目 走り幅跳びの行い方を知ること
2つ目 助走について知ること
3つ目 強く踏み切ること

この3つを指導内容として構成した単元が「あの日の自分を飛び越えろ!」です。

この3つを子どもの学びの文脈に沿って引き出すために、6か所の場をデザインしました(写真)。段ボールとゴムひも、コーンを組み合わせて、3つのコースを作り、それぞれに「遠くバージョン」と「高くバージョン」を位置づけました。子どもたちが体育館に入ってきたその1歩目から「えっ!何あれ!?跳んでもいいん?」というような場にしたわけです。

場のデザインについて

配布した単元シート

筆者作成

図に示すように、6つのコースにはそれぞれ特徴があります。

まず、1つ目は「恐怖の段ボールエリア」です。このエリアは、前後と上下に置いた段ボールによって構成したコースで難易度は低く設定しています。
なぜかというと、4年生の中には「怖い」「跳び越えられない」と言って、そもそもジャンプすることが難しい子もいます。そういった子にとってもなじみもあり、踏んでもケガをしない段ボールを設置することで少しでも恐怖心をやわらげ、跳び越えるきっかけになればと思い用意しました。

2つ目は「灼熱のゴムひもエリア」です。このエリアは、コーンとゴムひもで構成した中難易度のコースです。
コース③では、ひざ程度の高さまで上げたゴムひもを跳び越えます。回数をこなす中で子どもたちが「もっと高くして!」と言うことを狙い、はじめは低く設定しておきました。ゴムひもは、引っかかってもコーンが倒れるだけなので、力強い踏切を自然と意識して跳べるように用意しました。
また、コース④は、同程度の高さのゴムひもを2段階設置することで、高く遠く跳ぶことを狙って用意しました。

3つ目は「地獄の針山エリア」です。このコースはミニコーンとキラキラのレースで構成した中難易度のコースです。
コース⑤では、ばらばらに置いたミニコーンに当たらないように跳び越えることで、高く跳ぶことを意識できるようにしました。
コース⑥は、実は私の一番のお気に入りのコースで、キラキラのレースを針山に見立て、子どもたちが遠くを意識して跳び越えることを狙って用意しました。

以上の3つのコースを準備して学習を行っていきました。

幅跳びに入る前に

学習の前半はどの単元でもスキルウォームアップを行っています。スキルウォームアップは、その単元で使うだろう体の動きや技能を意識して体を温めることを狙った運動です。
今回の単元では、折り返しリレーやフラフープ鬼ごっこ、島鬼ごっこなどを行い、体を温めてから幅跳びの学習に取り組みました。

特に、今回の単元の安全面において重要となるのが着地です。一般的に幅跳びは「砂場」で実施する単元です。しかし、4年生という、まだまだ体が身軽であるという実態を生かして、今回は体育館で実施しました。その分、ありったけのマットやセーフティーマットを敷き、着地の衝撃を吸収するように工夫しています。

さて、先ほども述べた通り、幅跳びで重要なのが「着地」の指導です。なぜなら、着地の仕方によっては「捻挫」につながるからです。そこで、「1・2・ジャンプ」と言いながら軽く幅跳びをして、両足で着地する折り返しリレーや、その場ジャンプでの両足着地など、形を変えて跳んでは両足で着地する運動を何度も実施しました。
そうすることで、着地を両足で行うことを体で覚えてほしかったわけです。
また、片足着地と両足着地を比較して体験したり、実際に着地した際の違いを交流したりする中で「両足着地の良さ」についても交流していきました。

学習の実際

次回は実際に4時間の単元の中で子どもたちがどのような「思い」や「願い」を抱き、どのような学びがあったのかを記述していきたいと思います。
4年生という素直な年齢だからこそ、場をデザインすることで「したい!」「やってみたい!」という思いが引き出されていきます。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)

明石市立鳥羽小学校 教諭


「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。

同じテーマの執筆者
  • 関田 聖和

    兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)

  • 若松 俊介

    京都教育大学附属桃山小学校 教諭

  • 菊池 健一

    さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 杉尾 誠

    大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長

  • 笠原 三義

    戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表

  • 赤堀 達也

    旭川市立大学短期大学部 准教授

  • 熊井 直子

    小平市立小平第五中学校 主幹教諭

  • 羽渕 弘毅

    西宮市立総合教育センター 指導主事

  • 川上 健治

    明石市立高丘西小学校 教諭

  • 山本 裕貴

    木更津市立鎌足小学校

  • 川島 隆

    浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授

  • 今村 行

    東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

  • 都築 準子

    愛知県公立中学校勤務

  • 今宮 信吾

    大阪大谷大学 教育学部 教授

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

  • 山口 小百合

    鹿児島市立小山田小学校 教頭

  • 大村 高弘

    静岡大学大学院教育学研究科特任教授

  • 小清水 孝

    目黒区立不動小学校 主幹教諭

  • 廣瀨 紘太郎

    千代田区立九段中等教育学校

  • 大橋 健太郎

    大阪府泉大津市立条南小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop