2026.02.20
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総合的な学習の時間から育む探究的な学習― 教科書のない教科で進める探究的な学習の実践例 ―(2)

教科書がない教科や授業は得意ですか。
総合的な学習の時間は、授業計画に困る教員も多いのではないでしょうか。
私自身は、何かを創り上げる取組や地域とのコミュニケーションが大好きなので、総合的な学習の時間は毎年力を入れています。
ここでは、私の過去の実践例を紹介しますので、来年度の取組に悩んでいる先生方の参考になれば幸いです。

岡山県和気町立佐伯小学校 教諭 角田 直也

実践①地域とつながり花を育てる探究的な学習の実践(3年生)

地域の30か所に花を設置した児童たち

取り組みやすさ◎ 教科横断性◎ 手間△

総合的な学習の時間が始まる3年生は、授業の中でどんなことを学習するのか、イメージしにくいかもしれません。そこで他教科の授業で気付いた学びをもとに、探究的な学習を進めていきます。1学期の社会科では、学区の周りから市町村の特色を調べていく内容を学習しています。
そこで児童から出てくるワードは「こんなところ、初めて知った」「もっと探検したい」です。その言葉に沿って、「地域のことをよく知らない」という問題点から課題を設定していきます。

3年生では、理科で植物の生長を学習することに横断的に取り組み、地域の施設に植えた花を配る活動を始めました。まずは、花を植えて世話をしますが、児童だけではうまく管理ができず、生長せずに枯れてしまうこともあります。これも児童の学びです。
「どうやったら元気に育つのだろう」と児童が疑問をもてば、地域の花好きの方に相談して季節に合った丈夫な花を教えてもらい、畑好きの方に堆肥を譲ってもらいます。花の世話にも当番制が生まれ、児童同士で試行錯誤し始めます。たくさん花が咲けば、社会科で学んだ地域の施設に活動の趣旨を添えて、設置依頼をしていきます。3年生ながら、電話などで活動の説明を繰り返すことで、自分の言葉で話すことができるようになります。

この活動のメリットは、地域の人と関わりやすく、調べる内容が教科学習で補填できるので、3年生からも取り組みやすいことです。デメリットは、新しい知識を得たり、郷土愛を醸成するには至らないところです。

実践②地域の課題から生まれたマルシェ開催プロジェクト(6年生)

地域の方から学び、地域に還元する児童たち

取り組みやすさ✕ 教科横断性◯ 郷土愛◎

6年生では、学区には、コンビニが1件だけで買い物する場所がないという問題点から、「お店を開きたい」という思いを、そのまま実現に向けて動いた取組です。

3年生の頃に学区探検などを通して知った、企業や農家さんに出店依頼をして、マルシェを開催しました。営業班や広報班、経理班などに分かれて、開催の趣旨や、利益の取り扱いなどについて、連絡調整を全て児童が行いました。
9月に行ったプレオープンでは、1つの企業に対して1人の児童が担当となり、企業の方に指導を受けながら実際の金銭を扱いました。しかし、当日来店したのは、ほとんどが近隣の地域の人や保護者でした。もっといろんな人に来てもらい、地元企業の良さを知ってもらいたいと改めて課題を設定し、1月の本番に向けて活動を進めました。

この活動を通して、児童は地域の人からたくさんのお礼の言葉をいただきました。そのうれしさから、売上金で地元に還元したいと考え、図書を購入して子育て支援センターに寄付しました。児童は、自分たちが地域活性の一翼を担っていることを心底実感しているようでした。

実践③名刺作成を通して自分を語る力を育てる学習(6年生)

自分の好きを自分の言葉で話す

取り組みやすさ◯ キャリア◎ 手間△

6年生の総合的な学習の時間の総合開きで、名前だけ書かれた児童の名刺を渡します。1年かけて、この名刺を自分用にアレンジしていく活動です。
大人の名刺には、仕事の内容や肩書が書かれています。そして、名刺を交換したときには、書かれている情報をもとに得意なことについて話しています。児童は、50人の大人と名刺を交換することを目標に、自分のことを話したり、大人が夢中になっていることを聞き出したりします。
好きなことを自分の言葉で話すことができるようになるためには、普段の生活の中で得意なことを深掘りしていかなければなりません。
たくさんの大人と会話することで、未来の可能性をアップデートしていきます。

この活動のメリットは、キャリア教育に視点をおき個々の探究を進めていけることです。デメリットは、大人との接点の場を整えたり、個々の探究を伴走する教員の労力です。

※令和8年度に予定している取組です。

教員がワクワクする総合的な学習の時間を目指して

ここまでの3点の実践内容はいかがだったでしょうか。
総合的な学習の時間は、教員の得意不得意の差ができやすい教科です。しかし、意図的・計画的に探究学習を行うことで、全教科の質が向上することは間違いありません。教員がワクワクする総合的な学習の時間を目指して、取り組んでみてください。

角田 直也(かくだ なおや)

岡山県和気町立佐伯小学校 教諭


特別(聴覚)支援学校、青年海外協力隊(マラウイ)、公立小学校に勤務。
近年は、総合的な学習の時間に行う地域をフィールドにした活動を軸として、教科横断的なカリキュラム編成を実践・検証し、地域学習と教科学習の双方の深化について研究しています。
また、先輩教員のノウハウと新しい"観"の教育を融合しつつ、若手教員と共に学ぶ新しい研修方法を実践しています。

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