2025.09.12
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

ドキドキの一年生とのアクティビティ「1年生ギャップを埋めるためのアクティビティ」(NO.5)

9月になっても、挨拶に付け加える言葉が「暑いですね」しか思いつかないような猛暑が続いていますが、いよいよ2学期が始まりました。
久しぶりに出会う、ひと回り大きくなった子どもたちの様子は、いかがだったでしょうか。
さて、私は夏休み中に個人面談をしました。そこで、保護者と共感したことは、1年生ギャップでした。保護者の多くが、子どもたちが学校に慣れるかという点において、不安が大きかったと言っていました。もちろん、担任をしていた私自身も、1学期中は子どもたちが学校生活に慣れるように配慮するのが精一杯だったと思い出されます。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

学校というのは良くも悪くも管理的であり、強制力が働いている場です。多くの子どもたちが一定の枠の中で過ごすのですから、自分のクラスだけは時間にルーズであってもいいということはありませんし、空いているからといって勝手に特定の場所を使っていいとはいえません。6歳という年頃の子どもたちにとって、就学前の教育の場と大きく異なる環境に馴染んでいくのは並大抵ではないのだと、改めて痛感した次第です。

今回は、そんな子どもたちのために、どのようなアクティビティを取り入れていけばいいのかについて、考えてみたいと思います。

集中力や持続力を育てるために

ある一定の時間、座って学習するためには、座っていることに慣れているばかりではなく、体幹が育っていることや、集中力や持久力があることが求められます。子どもたちが育つ環境として自然が多く、外で遊ぶことが十分に保障されていれば、身体がしっかりと育っていくのかもしれません。また、何かに夢中になって遊ぶことを通して、集中力も、継続して活動をする力も育つのだろうと思います。

もちろん、さまざまな地域や環境がありますから、必ずしも自然が豊かな環境がなくてはならないものと言うつもりはありません。しかし、きっと野山があったら、虫探しに興じるだろうと思うタイプの子どもたちがいるのは確かです。時間が経つのを忘れるほど夢中になる子ども時代であったなら、座学に相応しい身体や心が自然と育つのかなと、都会の学校に勤務する私はつい欲張ったことを考えてしまいます。

そこで、どんな環境であっても、集中力や持続力を高めるために、継続性のあるアクティビティを取り入れてみましょう。例えば、名刺を作って交換し、友達を増やそうというアクティビティを取り入れるなら、休み時間などに気が向いたら続けて名刺を作ってもいいという環境を設定するのです。自由にカードを持って行ってもいいとか、雨の日ならば校庭に出ないで続きをやってもいいといった環境設定です。

それによって、活動への興味や関心が高まり、「先生は自分たちの小さな願いを叶えてくれる存在なんだな」という信頼関係も築くことができると考えています。

友達との関係を作り、関係性を維持する力を育てるために

小学校に多くの幼稚園や保育園から入学してくる地域では、子どもたちが互いの名前や個性を知り、揉めながらも関わりを深めていく必要があります。アクティビティの多くは、遊びを通して互いを知り、関わり方を学ぶチャンスとして取り入れることが可能です。

この学びの場でも、今後もたくさんのアクティビティをご紹介していきますので、ぜひ参考になさってみてください。

指先や身体の器用さを育てるために

色塗りが未熟であったり、基本的な折り紙が苦手であったりという姿が珍しくないと感じています。また、鉄棒やマット運動などの様子を見ていると、危なっかしさを感じます。いずれも、経験が少ないからだろうと思われます。

図工や体育の時間だけではなく、ちょっとした隙間時間や休憩時間に、器用さを育てるためのアクティビティを取り入れていってみてください。言うまでもなく、器用さは思考にも大きな影響を与えます。

ユニバーサルデザイン教育を意識して

例えば、朝の会などで一斉に詩を読むことは、子どもたちの姿勢や心を整えるのにとても効果があります。特に発達に課題のある子どもたちにとって有効です。言い換えれば、課題のある子どもに有効だということは、誰にとっても効果的だということです。これがユニバーサルデザイン教育の根幹だと考えています。

不器用な子どもだけに折り紙をさせるのではなく、関わりが苦手な子どもたちにだけ関わり方をレクチャーするのではないということです。

もとより、いわゆる通常の学級では、個の課題に応じた支援を個別に行うことには限界があります。ですから、効果的だと思うことは全員にやっていくという潔い姿勢が大事なのです。

小さなアクティビティであっても、それを意識的・継続的に取り入れることによって、子どもたち全体が成長していくと考えています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

同じテーマの執筆者
  • 松井 恵子

    兵庫県公立小学校勤務

  • 松森 靖行

    大阪府公立小学校教諭

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

この記事に関連するおススメ記事

i
pagetop