愉しい授業を創る 「遊びの中に学びを創る編」
人は、楽しいから学びます。もし楽しくなかったら、それは苦痛でしかありません。子どもたちも、楽しい遊びの中にこそ、本物の学びを創っていく、そのように考えます。
今回は、遊びの中に学びを創る「プレイフル・ラーニング」の授業を紹介します。この2月に行ったばかりの、ホヤホヤの授業実践です。
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授 川島 隆
2年生の教室で始まった「遊び系授業」の導入

今日の授業テーマ「時間どり じゃんけん!」
「見て、これ!」
(ガラ、ガラ、ガラと教室に響く音)
ブロックがたっぷり入ったケースを揺さぶってみせます。
「何これ?」
「パズルみたい。組み合わせるのかなあ?」
「ブロック?」
「遊び系なんだ!授業じゃないの?」
今から、何が始まるんだろうと、口々にいろんなつぶやきが聞こえてきます。
「今日はね、このブロックを使ってこんな遊びをしましょう」
大型モニターに今日の授業テーマを映し出します。
「みんなで読んでみましょう」
「時間どり じゃんけん!」
こんなふうにして、始まった授業。
2月のある日、ある学校の2年生の教室でのことです。
私は、この授業の「めあて」を、子どもと一緒に次のようにつくりました。
「時間どりじゃんけんを 楽しもう」
すると、ある子どもがつぶやきます。
「楽しもう、って授業なの?」
子どもの反応に「うん、うん」と納得しながら、ルールを説明していきました。
プレイフル・ラーニング理論に基づく「時間どりじゃんけん」との出会い

ブロックを確かめる子どもたち
さて、私が、この「時間どりじゃんけん」と出会ったのは、こんな経緯がありました。
小学校で長く授業をしてきていながら、今も年に何時間か授業をしながら、子どもたちにありがちな「算数ができない」「読解ができない」とは、どういうことなのかについて、きちんと向き合い切れていないという思いがいまだにありました。
その問題を自分の中ではっきりさせていなければ、子どもたちに身に付けるべき資質・能力を育むなんて言っても、
口先だけのことに終わってしまうのではないかと思いました。
そんなとき、出会ったのが、今井むつみ氏の『学力喪失』でした。
購入していたものの「積ん読」状態だった一冊でした。
ある日、ふと、その本を手に取り、読み進めると、なぜもっと早く読まなかったのかと後悔の念に駆られました。
その中で、プレイフル・ラーニングという理論に出会いました。
「どうしたら生きた知識をつくるための学びが可能になるのか」
「人は楽しいから遊ぶ。学ぶために遊ぶのではない」
「『問題が解けた!』『答えが合っていた!』ではなく、
『意味がわかった!』という瞬間、『学びは遊び』が実現するのである」
という言葉に引き付けられていきました。
そうして、遊びの中で学んでいくプレイフル・ラーニングに基づく「時間どりじゃんけん」に辿り着いたのでした。
さらに、こんな授業をやってみたい、子どもたちは、どんなふうに学んでいくのだろうというワクワク感が強くなっていきました。
(本実践は、今井氏の著書で紹介されている実践を、私なりにアレンジしたものです。)
時間の量感と図形感覚を育む「時間どりじゃんけん」のルール
「時間どりじゃんけん」のルールは、こんな感じです。
10分、20分、30分、60分の時間を表す4種類のブロックを1人あたり4時間分配り、グループに分かれて、違うグループの友達とじゃんけんをしてブロックを取り合うというものです。
(スライド図参照)
そして、最後に、各自が持っているブロックをグループごとに集めて、どれだけ時間を集めたかを競うというものです。
この授業は、2年生を対象として、2時間構成としました。
最初の1時間は、ルールの説明と実際のじゃんけんを行いました。
後半の1時間は、どうやって合計の時間を求めるかをグループで考え合い、求めていく時間としました。
この授業のねらいは、次の二つです。
・ 時間の概念や量感を育むこと
・ 図形の感覚を育むこと
時間の量感は子どもにとっては、なかなかつかみにくいのですが、ブロックで表すことでつかみやすくなります。
60分は10分が6つであることをはじめ、ブロックを操作したり、じゃんけんの勝敗でブロックのやりとりをしながら時間の概念を育みます。
さらに、じゃんけんでとった時間を考えるのですが、ブロックを並べたり、組み合わせたり、重ね合わせたり、積み上げたりすることを通して、図形に親しみつつ、感覚づくりにつなげます。
困った状況を学びのチャンスに変える先生たちとの「約束」

時間どりじゃんけんの約束
袋に入ったブロックを配ると、もう子どもはスタートが待ちきれない様子です。
袋からブロックを取り出し、思い思いに並べたり、数を確かめたり。
でも、その前に、私から「やくそく」を追加しました(スライド図参照)。
理由は、2つです。
一つは、学級内で多くの友達と交流させたいという思い。
もう一つは、じゃんけんに負けてブロックを渡さなくてはならないときに、そのブロックが手元になかったらどうするのか。
この困った状況を、どう考えるのか、それを見取っていきたいと考えたのです。
そこで、「困ったら、近くの先生に聞いてね」と付け加えました。
(この授業では、2人の学生と担任、参観の校長、そして、私。5人の先生がいます。)
困ったときこそ、学びが生まれるチャンスです!
図形の「形」に着目して時間を考える子どもの不思議な捉え方
私にとっても沢山の学びがありました。
その1つが、時間を示すブロックの説明をする導入場面でした。
「これが60分です」と、六角形の黄色のカードを提示します。
そして、
「これは、なんて言う形?」と、問うと、
「六角形」という声が返ってきます。
「60分は?」と言うと、
「1時間」という声が、これも即答でした。
次に、赤色のカードを提示します。
すると、子どもたちからは、
「40分!」という声が返ってきました。
「へぇー。どうして?」と理由を問いました。
すると、ある子どもが答えます。
「六角形は60分。これは、四角形だから40分です」
なるほど。そんなふうに考えるんだと、子どもの考え方に納得しました。
そこで、赤色のカードを、60分を示す黄色のカードに重ねて見せました。
多くの子どもが反応します。
「黄色の半分だ!」
「30分?」
私は、「そうだね。ちょうど半分だね。だから、赤色は、30分になりますね」
そして、続けました。
「では、次ね。これ(青色のカード)は、どうだろう?」
と3つ目のカードを示します。
「今度は、ひし形だ!」と、子どもたちの声。
これも、赤色と黄色のカードに重ねて見せます。
30分よりも小さいことが分かります。60分との関係にも気付く子がいるようでした。
「これは、そう、20分ですね」
最後、4つ目の緑色のカードを示します。
青色(20分)に重ねて見せれば、すぐに「10分!」という声が一斉にあがりました。
子どもたちは、最初は図形(ブロック)の大きさではなく、形に着目して、時間を考えるのだということが分かりました。
子どもの捉え方ってそうなんだ、と改めて気づかされました。
この遊びのよさは、基本のルールを理解していれば、誰もが参加できるところです。
このことは、今井氏が、著書の中で述べているところです。
全員参加の授業(遊び)になる、授業UDの考え方の基本にもつながるところです。
いよいよ、待ちに待ったじゃんけんの始まりです。
子どもたちは、どんなふうに遊び、学んでいったでしょうか。
その姿と学びの具体、そして、私の学びは、次回へと続きます。
参考資料

川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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