2026.02.22
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穏やかで控えめな子が人気者になる教室~ボーズマン・モンテッソーリ保育園での発見

アメリカ・モンタナ州のボーズマンという町で、モンテッソーリ保育士として働くかたわら、大学院でも学びを深めています。
ボーズマンの異常な暖冬はまだ続いていて、雪はすっかり溶けてしまいました。
今回は、ボーズマンのモンテッソーリで働き始めて、意外だったことのひとつを紹介します。

ボーズマン・モンテッソーリ保育士 城所 麻紀子

「静かな子」が人気者になる理由

それは、穏やかで口数の少ない子が、子どもたちの間で人気があるということです。

私の記憶では、幼稚園とか小学校で人気者といえば、明るくて活発で、場を盛り上げる子が思い浮かびます。けれど、今の私のクラスでは、にぎやかさよりも、一緒にいて落ち着くことに、子どもたちの価値が置かれているように見えます。

ほぼ1日中 自主活動で過ごす教室の一日

その背景には、教室の一日の流れが関係しているような気がします。私たちのクラスは、1日のうち、20分ほどみんなで集まって同じ時間を過ごすことはあるものの、それ以外は基本的にずっとバラバラに自分の作業を進めます。

子どもたちは、自分で活動を選び、場所を決め、必要なら誰かと関わりながら、思い思いに“お仕事”を続けていきます。外ではみんなで一緒に遊ぶものの、クラスの中では、自分の集中をつくる時間であり、誰かの集中を壊さないで共にいる時間でもあります。

もしかすると、こういう環境だと、人気の形が変わってくるのかもしれません。声が大きくて目立つ子が中心になるというより、隣にいても落ち着ける子、相手のペースを乱さない子が、じわじわと選ばれていくような。

たとえば、誰かが困っているときに、頼まれていないのにやり方を教えたり、場を仕切ったりするのではなく。失敗を繰り返しながらも自力で取り組むのを邪魔しないような子ども。その態度に、他の子が安心するのかもしれない、と思います。

大人の「理想の子」と子ども同士の人気が重なるとき

そして、興味深いのは、こうした子ども同士の人気が、ボーズマン・モンテッソーリの保護者間の理想の子像とも重なっています。大人同士で、「彼は本当に理想的な子どもよね。誰もが想像するような」と言われる子がいます。
大人の言うことをよく聞き、穏やかで、賢い子。落ち着いていて、周りをよく見ていて、頼まれたときなど必要なときにだけ、小さな声で短く話します。

そのとき少しだけ立ち止まりたくなったりもします。理想的という言葉は、子どもの良さをほめる言葉であると同時に、大人が安心できる、扱いやすい、という都合が混ざりやすい言葉でもあるからです。

わたしたちが落ち着きや自立を大切にするほど、元気で声が大きい子、動き回る子、感情を外に出しやすい子は、扱いにくいとくくってしまうこともあります。

これはアメリカ社会だから、日本だから、という話ではなく、その教室では、どんな行動をすると“いいことが起きやすい”仕組みになっているか、ということなのかもしれません。

サンディエゴの補習校で出会った教え子の事例

ここで、サンディエゴの補習校で出会った教え子を思い出しました。彼は口数が少なく、人の目を見て話すのが苦手な中学2年生でした。
小学6年生のときに日本からサンディエゴに引っ越してきたと聞き、「最初は苦労したんじゃない?」と尋ねたところ、彼はこう言いました。
「みなさん本当に親切で、特に女子の何人かが、手取り足取り面倒を見てくれて、あまり苦労しなかった」
わたしは密かに驚きました。

さらに別の、はきはきとした運動神経の良い活発な男子生徒からは、「最初はひどいいじめにあった。あれはつらかった」という話も聞いていました。

クラスが求めるふるまいと歓迎される行動

元気で目立つ子ほど、クラスの空気やルールと合わないと摩擦が起きやすいのかもしれません。もちろん、これはどちらが良い悪いという話ではありません。

つまり、どう振る舞うと歓迎されるかは、その場の雰囲気や周りの見方で変わる、ということです。

アメリカ社会には、口数が多くて声が大きい元気さが評価されやすい場面が多い、と感じます。でも、子どもたちの小さな共同体の中では、どこでもいつでもそのような価値観ではないのです。特に、長い時間を自主活動で過ごす教室では、にぎやかさよりも、安心と集中を守る力が強みになる。

子どもたちが静かな子を選ぶのは、静けさが「良い子」だからというより、静けさが「一緒に過ごしやすい関係」をつくってくれるからなのかもしれません。

みなさんのクラスの人気者は?

そこには、子どもたちの好みだけではなく、大人も含めて、みんなが守りたい教室の雰囲気と、知らず知らずのうちに強化している価値観の両方が映っている気がします。

城所 麻紀子(きどころ まきこ)

ボーズマン・モンテッソーリ保育士、元サンディエゴ日本人向け補習校講師、モンタナ州立大学院家族消費者科学科 修士課程


2020年からアメリカのモンタナ州の人口5万人の町で、モンテッソーリ保育園の保育士をしています。
アメリカといっても、白人約90%、アジア人約2%(最近増えました!)という環境です。
あまり日本人の方に知られていない、アメリカの田舎での教育や生活の様子などを共有できたらいいなあと思っています。

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