子供の問いを引き出す(27) きまり発見を楽しむ:2年「引き算」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第34回)
算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回は、2年「引き算」を取り上げます。
※「スクプレ」の販売、「スクプレ道場」のサイトは2025年3月末日に終了することになりましたが、本連載は4月以降も継続します。第33回までの記事中で紹介しているスクプレ教材も引き続きダウンロードできます。
100までの数表を使って

九九表や100までの数表、カレンダーなどの数表にはいろいろな規則性があります。それを発見したり、ほかの場所でも成り立つか探したりする活動は、子供にとってとても楽しいものです。帰納的な考え方を育む上でも、低学年のうちに自分できまりを発見する活動をたくさん取り入れたいものです。
九九表の事例については、第16回で取り上げました。今回は100までの数表の事例を紹介します。
100までの数表には、下記のようなきまりがあります。
- 左右隣り合うマス目の数字の差は1
- 上下隣り合うマス目の数字の差は10
- あるマス目の左上と右下の数字の差は22
- あるマス目の右上と左下の数字の差は18
- 連続する3つマス目の数字の平均は、真ん中のマス目の数字
- あるマス目を中心とした9つマス目の数字の平均は、真ん中のマス目の数字
- 横に見ると、上の行のマス目の数字の和とその下の行のマス目の数字の和の差は100
- 縦に見ると、左の列のマス目の数字の和とその右の列のマス目の数字の和との差は10
※ほかにもあります。
今回の授業では上の4.のきまりを活用した教材を使用します。
教材化に向けて、下記の3つに配慮しました。
ア.「きまりを見つけよう」と発問せず、子供から「きまりを見つけた!」を引き出す。
イ.子供が調べる場所を決める。
ウ.きまりを2段階にする。
アについては第16回や第17回で説明しましたので割愛します。
イについては、子供が自分で数値や場所を決めることは、教材との距離を縮め、自分ごととして捉えることに大きな効果があります。そこで、スクプレで、3×3のマス目の右上と左下を隠している格子型が自在に動かせる教材を作り、使用しました。
ウについては、教師の提示より子供がはじめに発見するきまりは、「右上13」「左下31」のような「いつでも十の位と一の位が反対」になります。しかし、自分でほかにも調べてみると、このきまりが成り立たない箇所が出できます。そこから、データを見直して「いつでも差が18」に気付くように展開し、どの子もきまりの発見を楽しめるようにしました。
授業の様子
まず、100までの数表をプロジェクターで黒板に提示しました。そして、ウサギのマークをクリックして22を中心とした9つのマス目で隠し、全員を立たせてこう問いました。
「オレンジと黄の部分の数はいくつかな?分かった人は座りましょう。」
この起立させて自分の考えをもったら座らせる手法は、第5回や第23回でも紹介しましたが、すべての子を問題と関わらせることができます。
全員が座ったのを確認し、指でその数を表すように指示しました。
オレンジを尋ねると全員13、黄色を尋ねると全員31を示しました。
この指で一斉に表させる手法もお勧めです。一度に全員が表現する機会を作ることができるとともに、短い時間で全員の考えを把握することができます。
もう一度ウサギのマークをクリックし、隠した数を提示して確認しました。オレンジは13、黄色は31です。「やったー!」と子供たちは大喜びです。

「次は難しいよ。」とトラのマークをクリックし、先ほどと違う場所(中心66)を隠しました。
「オレンジと黄の部分の数はいくつかな?今度はノートに書きましょう。」
机間巡視してノートを確認すると、どの子もオレンジ57、黄色75と書いていました。
すると、Aさんが「あっ!反対になっている」とつぶやきましたが、周りの子は無反応です。
ここでは敢えて、全部は聞こえないふりをし、黒板に「あ!」だけ板書しました。第12回でも説明したとおり、その子がもう一度同じことをつぶやいたり、ほかの子も同じ内容をつぶやいたりするまで待つことが大切だからです。
もう一度トラのマークをクリックし、隠した数(オレンジ57、黄色75)を確認しました。
「簡単、簡単!」と喜んでいる声の中に、Bさんのつぶやきが聞こえました。
「ねえ、先生、1個分かるともう1個も分かるよ!」
Aさんの方を見ると頷いています。そこで、AさんにBさんの言いたいことを代わりに説明してもらいました。
「さっきは13と31、今は57と75。反対になっていたの。だから、Bさんは1個分かるともう1個が分かると言っていると思います。」
Bさんに付けたしはないかどうか聞くと、「ないよ!100点満点!」と笑顔で答えました。

Bさんに説明させればよいと考える方もいると思いますが、この段階で言いたいエネルギーが高まっている方のAさんにまず説明させました。「みんなに言いたい」という思いが、聞く人の気持ちを動かすからです。
この2人のやり取りを聞いて周りの子も感化されたのか、「早くネズミの問題をやりたい!」と声が上がってきました。
ネズミもマークをクリックすると(中心88)、すぐ挙手する子が何人も現れました。
手を挙げている子に一斉に言わせて、もう一度ネズミのマークをクリックし、答えを確認しました。オレンジは79、黄色は97です。

「先生、ペンギンの問題もやりたい!」と声が上がったので、
「実はペンギンの問題は、自由の場所を決めることができます。決めたい人はいますか?」と問うと、たくさん手が上がりました。その中のCさんの9マスの場所(中心36)を決めてもらいました。
「あれ?」と見ていた子から声が聞こえました。
Cさんも「反対じゃない…」と困っています。
Bさんは、「変だ…」と首を傾げました…
すると、Dさんが大きな声でこんなことを言いました。
「そういうことか!」
みんながDさんの方を向きました。Dさんに少しヒントを言ってもらいます。
「27から45は反対じゃないけど、13と31に何かすると同じに見える。」
一瞬、教室がシーンとなりました。
そして、「ああ!」という声と「どういうこと?」という反応に別れました。
そこで、近くの人同士で教え合う時間を取りました…。

※教材の作り方~「文字表」の活用~
-
「項目」タブで表の行・列数を設定
-
半透明にする
-
「ドラッグ可」と「同時実行」にチェック
今回の教材は、「文字表」を使っています。オレンジと黄色の部分を見えなくしたり、半透明にしたりしました。
文字表は、表の中に文字を入れることができます。初期設定は4列・3行ですが、「項目」の数値を変更すると、自在に変更できます。今回の「100までの数表」も文字表で作成しています。
作り方は下記の手順になります。
- スクプレの編集画面で、「文字」の中から「文字表」を選び、画面に配置します。
- 文字表の上で右クリックしてプロパティを開き、「項目」のタブをクリックし、項目数を「行3・列3」に変更し、「適用」をクリックします。大きさは事前の作成した100までの数表のマス目と同じ大きさにします。
- 「図形」の中から「長方形」を選び、100までの数表のマス目と同じ大きさにします。2つ作成し、一方はオレンジ、もう一方は黄色にします。
- 半透明にする場合(上の教材ではペンギンの問題)は、オレンジや黄色の上で右クリックしてプロパティを開き、「線」の「透明」にチェックを入れ、「面」の「透明度」を「30」に設定して、「適用」をクリックします。
- 「機能」の中から「グループ」を選び、画面に配置します。そして、「3×3の文字表」と「オレンジの長方形」と「黄色の長方形」をリンクさせます。オレンジの長方形は3×3の右上に、黄色の長方形は3×3の左下上に配置します。
- 「グループ」の上で右クリックしてプロパティを開き、「実行」のタブをクリックし、「ドラッグ可」と「同時実行」にチェックを入れ、「適用」をクリックします。
お勧め教材(数表の教材 ※九九表を除く)
①小1算数 10づくり

「いくつといくつ」の教材です。数表から合わせて10になる組み合わせを探します。ペアだけでなく3つの場合も許すと、より数感覚が高まります。空白のカードは、好きな数字を入れてもいいことにして使います。数表は全部で5シートあります。
教材のダウンロード
②小1算数 隠せる100までの数表

100までの数表の教材です。全部示して一部だけ隠す頁と全部隠してから一部だけ示す頁に分けて作りました。マス目の上をクリックすると、提示・不提示の切替ができます。
教材のダウンロード
③小4算数 2018年4月のカレンダー

カレンダーを使った教材です。十字に隠した部分は自由に移動させることができます。隠した数の合計が常に真ん中の数の5倍になっているという「はてな」を引く出すことができます。そして、「なぜ」そうなるのか理由を考えさます。「だったら」と違う形の隠した場合についても成り立つか考える頁も作りました。
教材のダウンロード
④小5算数 100までの数表

100までの数表です。ひとマスずつ色が塗れるようにしてあります。5年「倍数」だけでなく、3年「あまりのあるわり算」や1年「100までの数」でも使うことができます。消すときは、左側の「ページクリア」か「アンドゥ」を使います。教具のXYテープ図(四隅のグラブで拡大・縮小を行った場合はマスの数は変わらず全体の大きさが変化します。左から2列目または上から2行目の線上にあるグラブをドラッグすると、全体の大きさは変わらずマスの大きさが変わります)で作成しています。
教材のダウンロード
⑤小5算数 エラトステネスのふるい

倍数の発展教材の「素数」です。古代ギリシアの科学者エラトステネスが考案したとされる素数を見つけるための方法です。数表を6区切りにしたことと灰色の枠を縦に伸ばせることで、この方法の良さが表現できるようにしました。
教材のダウンロード
こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、番外編「パズル教材」を取り上げます。お楽しみに!

種市 芳丈(たねいち よしたけ)
階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約670ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」
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