2026.03.25
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番外編 ロイロノートを活用した複線型授業<5年「面積」> 「はてな?」「なるほど!」「だったら…」で作る算数授業(第12回)

今回は番外編で、5年「面積」の単元内で、ロイロノートを活用した複線型学習の実践事例を紹介します。

この単元の面白さは、既習の求積可能な図形に帰着させて考えると、どんな多角形の図形の面積でもどんどん求められるところです。実際に何度も、三角形と平行四辺形の面積の求め方を学習した子供たちが五角形や台形などの多角形の面積を自ら進んで解いていく姿を見かけました。かえって、一時間ごとに扱う図形が区切られる教科書に合わせた単元計画をもどかしく思ったほどです。

複線型授業とは

そんな中、複線型授業を知りました。複線型授業とは、「子供一人一人がそれぞれの興味・関心や理解度に合わせて学習課題や学習の進め方、学習形態等を自ら選択しながら学びを進め、教室において同時に多様な学びが生まれる授業」(「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」のためのサポートマガジン『みるみる』実践編②より引用)のことです。

前述のサポートマガジンには5年「面積」の実践は紹介されていなかったのですが、複線型授業と相性がいいのではないかと思いました。

そこで、まず、今使用している教科書(啓林館)を参考に単元計画を立ててみました。自ら進めたい子のための取組という趣旨から、複線型授業の時間は発展的な内容も扱うことができる2時間連続で設定することにしました。

すると、以下のように全14時間の単元内で2か所設定できることが分かりました。

時間 ねらいや内容
三角形などの面積について考えていくという単元の課題をつかむ。 直角三角形の面積の求め方を、求積可能な面積の求め方を基に考えることができる。
・長方形と正方形の面積の求め方について振り返る。
・既習の面積の公式を使って直角三角形の面積の求め方を考える。
鋭角三角形の面積の求め方を、求積可能な面積の求め方を基に考えることができる。
・長方形や直角三角形の面積を基にして考える。
・等積変形や倍積変形、分割の方法を使って面積を求める。
求積に必要な長さを見いだして、三角形の底辺と高さという用語を知り、公式を導くことができる。
・三角形の面積を求める公式についてまとめる。
・方眼の描かれていない三角形の面積を求める。
平行四辺形の面積の求め方を、求積可能な面積の求め方を基に考えることができる。
・長方形や三角形の面積を基にして考える。
・等積変形や分割の方法を使って面積を求める。
平行四辺形の底辺と高さの関係を理解し、求積に必要な長さを見いだして公式を導くことができる。
・平行四辺形の面積を求める公式についてまとめる。
・方眼の描かれていない平行四辺形の面積を求める。
高さが外にある場合の三角形や平行四辺形の面積の求め方を考え、公式が使えることを理解することができる。
・高さが外にある三角形の面積の求め方を考える。
・高さが外にある平行四辺形の面積の求め方を考える。
底辺の長さが等しく、高さも等しい三角形や平行四辺形は、面積も等しくなることを理解することができる。
・底辺と高さが等しい三角形の面積について調べる。
・底辺と高さが等しい平行四辺形の面積について調べる。
8 ・ 9 【複線型】台形やひし形、たこ形の面積の求め方を、求積可能な面積の求め方を基に考えることができる。
・三角形や平行四辺形の面積を基にして考える。
・等積変形や倍積変形、分割の方法を使って面積を求める。
10 求積に必要な長さを見いだして、台形の上底と下底や高さ、ひし形の対角線という用語を知り、公式を導くことができる。
・台形やひし形の面積を求める公式についてまとめる。
・練習問題を解く。
11 ・ 12 【複線型】多角形の面積を、三角形分割の考え方を用いて求められることに気付くことができる。
・一般の四角形や五角形について、面積の求め方を考える。
・実測して四角形の面積を求める。
13 三角形の高さや底辺の長さを変えたときの面積との関係について調べ、それぞれの関係が比例していることに気付くことができる。
・三角形の高さが1cmずつ増えていく場合の高さと面積の関係について調べる。
・三角形の底辺が1cmずつ増えていく場合の底辺と面積の関係について調べる。
14 既習事項の確かめをする。
なお、複線型授業にした教材は以下です。
  • 台形やひし形、たこ形の面積(8・9時間目)

  • 多角形の面積(11・12時間目)

次に、複線型授業を具体的にイメージしてみました。何より難しいと感じたのは子供の学習の見とりです。

一斉学習であれば、全員が同じ問題に取り組んでいるので、予想される解答やつまずきはある程度把握できます。しかし、複線型授業では同時にいくつかの問題を扱うので、一斉授業のようにはいきません。今、どの子が何の問題に取り組んでいるのか把握し、そして支援する方法が必要です。

よく行われている黒板に名前プレートを貼る方法だと、今、何に取り組んでいるかは分かりますが、それまでにどの問題を解いたか経過が把握できない点が気になります。紙媒体による一覧表のチェックシートの方法も考えられますが、児童に1枚ずつ持たせると教師が瞬時に全体を把握しづらく、かといって模造紙のように大きくして掲示したものに児童に記入させる方法も混雑する時間帯がありそうです。

ロイロノートで進捗管理

そこで、デジタル学習基盤(ロイロノート)を使って、これらの課題解決に取り組んでみました。

今までの算数の授業では、ロイロノートを「考えの共有」に使っていました。自力解決の時間にノートに書いた解答を、児童ひとりひとりがタブレットで撮影し、タブレット上でその写真を見合えるように共有していました。

この方法をベースにして、今、どの問題に取り組んでいるか分かるように、ロイロノートのサイトに掲載されている荒濵先生の実践を参考にしながら、授業する学級の担任の先生と協力して、以下のようにロイロノートの共有ノートをデザインしました。

  1. 一画面で収まるようにデザインする。
  2. 画面を4つの区切りにする。
  3. 児童の名前のついた付箋を準備し、自分の解いている問題のゾーンに動かす。
  4. 付箋の色に意味を持たせる(赤…手が出ない、黄…途中までなら分かる、青…解けそう)
  5. 取り組む問題を途中で変えてもよい(その時は付箋を動かす)
  6. 同じ問題を解いている人たちなら、自由に聞き合ってよい。
  7. 問題が解けたら、ノートを写真撮影して、そのゾーンに置いていく。

1.~4.については、電子黒板に映した共有ノートを一見するだけで、誰がどの問題を解いているか分かるようにするためです。教師の支援が適切にできるようにしました。5.については、今までの授業では5分間は考えようと言いたいところですが、自己選択・自己決定の力を育むことを意図しています。6.と7.については、児童自身が聞いて解決したり友達の考えを参考にしたりできるようにし、児童自ら問題にアプローチしようとする力を育むことを意図しています。

なお、子供への対応が多岐にわたるため教師一人で授業するのも難しいと判断し、教師二人で行うT.T(チーム・ティーチング)のような複数の教師で授業するのが望ましいと考えました。今回の実践では、学級担任がT1、私がT2で取り組んでいます。

授業の様子

まず、前々時(9時間目)の学習の振り返りを紹介しました。

Aさん:台形やひし形も、工夫すれば面積を求めることができることが分かった。これを使って、習っていない図形の面積を求めることができるかもしれないと思った。

Bさん:今日の授業でいろいろな形があったけどうまくできて良かったです。「〇〇さんのたすけありで」

Cさん:今日分かったことは、ひし形を求めるときは、2倍にしても分けても、答えは同じになることです。台形は3つに分けて求めることができました。明日はちがう形をもとめます。

前々時の学習の振り返りを紹介したのには2つ理由があります。

  1. 前々時が複線型授業の1回目で子供たちには好評でたったので、2回目の本時もそのときの気持ちを思い出して取り組んで欲しかったこと。
  2. 習っていない図形でも工夫すれば面積を求めることや友達と協力してもよいこと、1つの問題を多様な解き方で考えた子がいることなどを価値付けたかったこと。

数学的に望ましい態度を形成するには、知識や技能にくらべ、かなり時間がかかります。近道は、毎回見られる望ましい態度を褒めることしかないと思います。振り返りの紹介は有効な手立ての一つです。

次に、今日も問題を4問、提示しました。先ほど紹介した振り返りを褒めたせいか、やる気満々の子がたくさん見られました。しかし、中には不安そうな子もちらほら見られます。そこで、1問ずつみんなで見通しを立てました。

あの図形…三角形
いの図形…三角形(3こ)
うの図形…三角形(2こ)
えの図形…全体をもとめる。白い所をひく

ここで配慮したのは、あえて補助線を引かなかったことです。「面積を求められる図形が見えますか?」と発問をし、子供から引き出した言葉だけ板書に残しました。

補助線を教師側で引いてしまえば、確かにかなりの子が面積を求められるようになるでしょう。しかし、一番子供に考えて欲しい部分を奪ってしまいかねません。自分から図形と向き合い、自分で補助線を引くことに意味があると考えました。

次に、本時のめあてを確認しました。

先ほど提示した4つの問題に共通していることを考えさせたところ、「多角形」というキーワードが出て来ました。これを生かして、「これまでの学習を生かして、多角形の面積の求め方を考えよう」とし、板書しました。

そして、学習の進め方を確認しました。

  1. あ~えのどの問題から取り組んでもよい。
  2. 学習形態は、「一人で」「友達と」「先生と」の3つから選択し、途中で変えてもよい。
  3. ロイロノートに、自分の取り組んでいる問題や学習形態、解決したノートを入力する。

8・9時間目も同じ進め方だったからでしょう、特に質問は出ませんでした。前回の複線型授業を実施した際、「また、これでやりたい!」とつぶやいていた子が多かったこともあり、早く学習を進めたいという気持ちが高まっていたせいかもしれません。

次は、問題を解く時間です。子供たちは、自分のタブレットPCでロイロノートの共有ノートを開き、今から取り組む問題の場所に自分の名前の付箋を動かしました。

そして、ノートに問題を解き始めました。

しばらくすると、「友達と」で行う子たちが、自然にグループになり、次のような教え合いが始まりました。

Aさん:この問題(あ)は、2つの三角形に分けたけど、どうやって面積を出すのかな?
Bさん:(Aノートを見ながら)縦に分けるんじゃなくて、横に分けるといいよ。
Aさん:こう?(と言いながら問題の図形に線を引く)

実は、前回の複線型授業のときも、いつもの教室ではなく「学習センター」というキャスターのついた机・椅子がある場所で授業を行いました。机・椅子を簡単に移動できるため、教室よりも気軽に友達同士で教え合いができるからです。複線型学習を楽しみにしていた要因の一つに、友達と一緒に学習できることがあると考えられます。

その後、子供たちの問題を解いたノート画像が、共有ノートに次々にアップされてきました。

それを見ながら、T1は、赤の付箋(手が出ない)の子たちに声をかけて、アドバイスをしていきました。T2は学習形態が「先生と」がいい子たちを集めて、個別にアドバイスをしていきました。

途中で、T1は、いの問題の図形の分割の仕方で多くの子が悩んでいることに気付いたので、全員を一度、電子黒板の方に体を向けさせ、既に解決しているCさんのノートを使ってヒントを与えました。

それを見て、次のような気付きの声が挙がりました

Dさん:(Cさんのノートを見て)私と同じやり方だった!
Eさん:(Cさんのように)底辺と高さが分かるように分けるといいのか…
Fさん:(Cさんとは違う)別の分け方でも面積が出せそう!

あっと言う間に11時間目の終わりの時間が近づいてきました。全員があ~えを解くことができました。

最後に、黒板にまとめ「多角形は三角形に分けると面積が求められる」を書き、学習の感想をロイロノートの付箋に書き込んでもらいました。

Gさん:今日勉強して分かったことは、多角形の面積を自分なりの式ができて、友達にも私の意見を言えて良かった。 うで苦戦して、友達といっしょに意見を出し合ってできた。
Fさん:今日の勉強をして、きょうは五角形や四角形などの面積を求めることができました。五角形を求めるときにどこで分けるかがわからなかったです。 でも、Hさんといっしょにやったら求めることができたので、うれしかったです。 でもそれ以外の3つは意外とすんなりとけたのでうれしかったです。三角形を使って求めることができました。教えてくれたHさんに感謝したいです。次回の算数も頑張りたいです。

次回は、3年「たし算の筆算(パリンドローム)」です。お楽しみに。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

小中一貫三戸学園 三戸町⽴三戸⼩学校・三戸中学校 教頭
子供たちが夢中になる算数授業づくりに取り組んでいます。算数専科や複式学級の指導の経験あります。今、チャレンジしているのは、ロイロノートを活用した算数授業です。算数の教材づくりの会「ガウスの会(代表:細水保宏)」の会員。

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