2025.12.25
  • x
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

子供の「だったら...」を引き出す教材3<6年「単位の仕組み」> 「はてな?」「なるほど!」「だったら…」で作る算数授業(第9回)

今回は、単位の仕組みの教材です。重さや長さ、かさの単位を表す漢字を予想します。

単位の仕組みを探る子を育てる

メートル法の接頭語による仕組みは下の図のようになっています。

この内容は、前学習指導要領では6年「メートル法の単位と仕組み」で扱っていましたが、現学習指導要領では、3年でk(キロ)、m(ミリ)など接頭語について、4年で長さと面積の単位の関係について、5年で長さと体積の単位の関係について扱うようになりました。これは、それぞれの量の単位の指導において単位の関係を取り扱うことで単位間の関係に徐々に気付かせ、統合して捉えられるようになることを意図しています。

ただ、教科書会社によっては、より統合的に捉えさせるため、6年「およその面積」や6年「学習のまとめ」でメートル法の単位と仕組みを扱っていることがあります。今回は、6年で統合的に扱う立場で実践しました。

単位の仕組み

今回の教材は、『算数好きな子に育つ たのしいお話365』(日本数学教育学会研究部著・2016発行・誠文堂新光社)のp351(11月2日)に掲載されている内容です。

1875年にフランスで締結された「メートル条約」に日本も参加し、1885年には国内でもメートル法の使用を許可したことや、その際、m(メートル)に「米」、g(グラム)に「瓦」、l(リットル)に「立」の漢字を当てはめ、接頭語としてk(キロ)に「千」、c(センチ)に「厘」、m(ミリ)に「毛」をつくりにして表すことになったというものです。

ちなみに、この本は、細水保宏先生(元・筑波大学附属小学校副校長、現・明星学苑明星小学校校長)がリーダーとなり、当時の日本数学教育学会研究部小学校部会の部員で作成した本です(末席ながら私もその部員でした)。数や図形の小話が365話掲載されていて、毎日一話ずつ読めるように日付ごとに割付されています。

この本の趣旨は、細水先生の巻頭言の次の部分から読み取ることができます。

  • 「算数っておもしろい!」「算数好きを増やしたい!」という思いを込めて作りました。
  • 算数好きを増やすには、身の回りから算数や図形の不思議さを発見したり、算数のよさや美しさを感じたり、考える楽しさを味わったりすることが大切です。
  • 算数は知識を伝達する教科ではありません。今までのものが関連付けられたり、新しいものが見えたり、創造したりできる、だからこそ楽しいのです。

この本を自分の学級に置いた時には、算数が得意な子がまず読み始めました。自分の誕生日の日付の頁を読み、友達や兄弟などの日付の頁を読んで、休み時間の友達との話題にしていました。それが口コミで広がって、いつの間にか全員が一度は手に取って読んでいました。(結局、子供たちにせがまれ、教室に2冊置きました。)

きっと、日常の算数に関係する「なぜ」「どうして」「やってみたい」などの内容が興味を引いたことや、あまり難しい計算が出てこないこと、1話3分程度で読めることなどが人気の要因だったと思います。

どのお話も面白いですが、個人的にお薦めのお話を月ごとにピックアップしてみました。興味のある方は実際の本を手に取って読んでみてください。

お薦めのお話

1月16日「やってみよう!誕生日あてクイズ」
2月13日「段ボール箱を作ってみよう」
3月5日「1メートルはどうやって決まった?」
4月2日「ものさしと定規って違うの?」
5月25日「□5×□5の計算は筆算いらず!」
6月23日「升1つを上手に使って量ろう!」
7月1日「1年のちょうど真ん中の日は何月何日?」
8月14日「乗ったことある?新幹線で算数」
9月21日「20×20と21×19はどちらが大きい?」
10月21日「サイコロをよく見てみよう」
11月22日「ラクダをどう分ける?」
12月16日「なぜ甲子園というの?」

授業の様子

はてな?

まず、先日東京に出張したときにモノレールの中で算数的に面白いものを見つけて感動し、思わす写真を撮ったときの話をしました。(東北地方にはないので「モノレール」の説明に思ったより時間がかかりましたが…)

そして、電子黒板にその写真を映しました。

「なんだ、これ?」と子供たちは注目しました。

「『99人』のことかな?」
「『1000』なわけ、ないよね…」
「あれ?『24.5』の左の漢字『重』かな?」
「『24.5』の右の漢字、初めて見た!なんて読むのかな?」

子供たちの話題が、重さの単位「瓲」に移ったところで、右のような画面に切り替え、「瓲」が重さの単位であること伝えました。

すぐ、数人から、
「t(トン)だと思う。」
とつぶやきが上がったので、それが正解だと教えました。

なるほど!

重さの単位

喜んでいる声の中に、Aさんのこんな声が混じっていました。

「㎏(キログラム)やg(グラム)の漢字はあるのかな?」

子供の数学的な見方・考え方は、何気ないつぶやきや会話の中に潜んでいることが多いです。それを見取り、そのように考えることが素晴らしいことだと価値付けるのが、先生の大切な仕事です。

Aさんにどうしてそう考えたか問い直しました。

「だって、t(トン)の漢字があるなら、きっと重さの単位の漢字がほかにもあると思って…」

Aさんがそう答えた後に、私から大きな拍手を送りました。そして、同じように考えた子にも挙手をさせ、その子たちにも拍手を送りました。

右のような画面に切り替え、㎏(キログラム)やg(グラム)の漢字を考える時間を1分ほど取りました。予想した漢字はノートに書かせます。

そして、答えを画面に提示しました。

「え~、そうなんだ!」
「g(グラム)は何にもつかないんだ…」
「なんで、㎏(キログラム)には『千』がつくんだろう?」
「1000gで1㎏だからかな?」
とつぶやきが上がりました。

そんな中、Bさんが手を挙げて何か言いたそうな顔をしています。発表させました。

「mg(ミリグラム)の漢字はあるのかなと思いました。」

思わずこちらが拍手をすると、ほかの子たちからも拍手が自然と起きました。そして、同じように考えた子にも挙手をさせ、その子たちにも拍手を送りました。

ノートに予想した漢字を書かせ、答えを画面に映しました。

「『毛』!!!」
と予想外の漢字に、思わず笑いが起きました。

これは「け」と読むのではなく、この場合「もう」と読むのが正しいことを教え、5年の割合の学習のときに昔は1より小さい数の読み方は「分・厘・毛」の順であったことを思い出させました。

だったら…

長さの単位

子供たちの見方・考え方を「だったら…」と総合的・発展的にするには、一度立ち止まって、今までのことを振り返る場を作ることが有効です。

今日は「重さの漢字だったら…」と、「瓲(トン)」「瓩(キログラム)」「瓦(グラム)」「瓱(ミリグラム)」を学んだことを振り返りました。そして「重さだったら…」と念を押して問いました。

Cさんが何か思いつき、ぱっと手を挙げたので発表させました。

「重さの漢字があるなら、『長さ(の漢字)だったら』もあると思います。」

私を含め、全員から拍手が起きました。

画面を切り替え、長さの漢字を考える時間を3分取りました。

「米(メートル)」は、はじめに教えることにしました。これが分かれば、重さの漢字から考えて「粁(キロメートル)」「粍(ミリメートル)」はすぐ思いつくからです。「糎(センチメートル)」はなかなか出ないと予想されます。

子供たちにノートを見ると、予想通り、「粁(キロメートル)」「粍(ミリメートル)」はかなりの子が書いていました。

画面に正解を映すと、

「やった!」
「重さと同じで、『千』『毛』が左にくるね。」
「1㎞は1000mだから、『千』なんだね。」
「『厘』は見たことあるけど、なんて読む漢字かな…」
「さっき、先生が言っていた「分・厘・毛」の「厘(りん)」だよ」」

かさの単位

次はかさの漢字です。

できれば、全員に「かさ(の漢字)だったら…」と思う場面を作りたいです。

そこで、「全員、起立!」と全員立たせました。そして、次はどんな単位の漢字を考えるか思いついた人から座るように指示しました。(この手法の詳細は第2回第7回を参照ください。)

あっと言う間にほとんどの子が座りましたが、何人かが座れずに困っています。

分かっている子から一言ヒントを言ってもらうことにしました。

「水。」
「ジュース。」

このヒントのおかげで、全員が座ることができました。

みんな答えを言いたくてたまらないと思ったので、「さん、はい」の後に一斉に言ってもらうことにしました。

「かさ(の漢字)だったら!」

画面を切り替え、考える時間を3分取りました。

先ほどと同じように「立(リットル)」をはじめに教えましました。これが分かれば、今までの単位の漢字から考えて「竏(キロリットル)」「竓(ミリリットル)」はすぐ思いつくからです。「竕(デシリットル)」は、「分・厘・毛」から思いつく子が数名いるかもしれません。

子供たちにノートを見ると、予想通りでした。

画面に正解を映すと、

「やった!」
「重さや長さ同じで、『千』『毛』が左にくるね。」
「やっぱり、1kLは1000Lだから、『千』なんだ。」
「また「分・厘・毛」の「分(ぶ)」が出てきた!」

普段だと算数があまり得意ではない子は頑張ってついてきている印象でしたが、今回はその子たちも楽しめた授業になったことが印象的でした。

「次回は、3年「かけ算」を取り上げます。お楽しみに!

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

小中一貫三戸学園 三戸町⽴三戸⼩学校・三戸中学校 教頭
子供たちが夢中になる算数授業づくりに取り組んでいます。算数専科や複式学級の指導の経験あります。今、チャレンジしているのは、ロイロノートを活用した算数授業です。算数の教材づくりの会「ガウスの会(代表:細水保宏)」の会員。

pagetop