子供の問いを引き出す⑰ 動きのある教材4:5年「図形の面積」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第22回)
算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回は5年「図形の面積」の発展問題です。
ズレを引き出し、解決への意欲につなげる
取り扱う教材は、図にように重なり合った部分(〇)がある底辺と高さの等しい2つの三角形の、重なっていない部分アとイの面積を考える問題です。
計算で求めようとすると、〇の部分の高さが分からないため手が止まってしまいます。しかし、「ア+〇=イ+〇」のことから「ア=イ」を導き出すことができます。論理的に考えるため、5年生の段階だと難易度の高い問題になります。このまま出題したら、どこから手をつけたらいいか悩んで鉛筆が止まることが予想されます。
そこで、この問題に意欲的に取り組めるように、下記の手立てで授業に臨みました。
- 「ア+〇」と「イ+〇」の三角形が等積変形すると同じ面積になることをイメージできるよう、スクプレを使ってアニメで変化する教材を提示する。
- 代表的な3つの場面(下記A・B・C)の求積を取り上げ、「同じ面積になるもの」という観点で立場を決めさせることで、子供の立場のズレを作り、解決への意欲を高める。
- 簡単な場面から類推して考えられるように、下記Bの求積では、計算で求める方法と、論理的に考える方法(ア+〇=イ+〇)を扱う。
授業の様子
まず、電子黒板で赤い三角形に重なった青い三角形が等積変形していくアニメを見せて、ここをA、ここをB、ここをCと教えました。
直後に画面を消し、次のように問いかけました。
「重なっていない部分の面積が等しくなるのは、A・B・Cのどれでしたか?」
すると、案の定、
「えっ?そんなこと考えてなかったよ…。」
「先生、お願い!もう一度、見せて。」
と声が上がりました。
初めてその教材との出合わせる時、「画面を消す」という小技を時々使います。シンプルな方法ですが、消した瞬間、下を向いていた子が顔を上げて話を聞いてくれるほど効果があります。また、「もう一度見せて」という声も引き出しやすくなります。
「もう一度見せますが、1つ約束があります。等しくなったと思った瞬間、手を1回パチンと叩いてください。それでは、見せますよ…」
電子黒板の画面をONにし、
「せーの、3、2、1、スタート!」
とみんなで声を合わせてカウントダウンをしました。どの子もじっと見ています。
再びアニメを動かすと、まずAでは2~3人が手を叩きました。しばらくしてBでは、たくさんの子が手を叩きました。最後のCでも2~3人が手を叩きました。
このように、どの子も教材をちゃんと見る場面を作ることが大切です。その子なりの考えを引く出しやすくなるからです。また、今回の「手で1回パチンと叩く」は、挙手させる方法に比べ、誰が叩いたか分かりにくいという良さをあるため、気軽に自分の考えを表現しやすくなります。
「パチンがずれたね。多かったのはBかな?」
と言って、黒板に「A 同じ広さ?」「B 同じ広さ」「C 同じ広さ?」と板書しました。
すると、Dさんが、何か言いたさそうにこちらを見ました。発表させると、
「どれも同じだと思うんだけど…」
これを聞いた周りの子たちも、つぶやき始めました。
「僕もそう思うけど、まだ計算してないから自信がなくて…。」
「AとBは同じだと思うけど、Cは本当かな?」
「Bは計算の仕方は分かるけど、AやCはどうやるのかな?」
みんなの確かめたい気持ちが高まってきました。
「では、まず自分で求められるものから計算してみましょう。5分たったら、相談して求めていいですよ。」
A・B・Cの図を印刷した用紙を配付すると、静かに解き始めました…。
※教材の作り方~マス目を背景にする~
図形領域では、マス目を背景にした方がいい教材が多くあります。マス目があることで、大きさを表示しなくても、数えると長さや面積が分かるよさがあります。
スクプレは配置した順に上に重なるようにできているので、上で紹介した教材は下記の順に配置しました。
- マス目
- (マス目の上に)半透明な赤い三角形
- (半透明な赤い三角形の上に)半透明な青い三角形
しかし、作る順番を変えたり、一度作ってから修正したりするときには、これらに順番が入れ替わってしまうことがあります。
そこで、下記のように「プロパティ」を開いて「順位」の設定をすると、作る順番に関係な上になるものを設定できます。概念的には、お絵かき系アプリの「レイヤー」とほぼ同じです。
「順位」のデフォルトは「50」になっていますので、下記のように設定すると、上で紹介した教材のような配置になります。
- マス目…順位50
- 半透明な赤い三角形…順位51
- 半透明な青い三角形…順位52
なお、「方眼紙」は、「教具」の中にあります。
マス目の大きさはは角のグリッドをドラッグすると自在に変更できます。マス目の数は、「プロパティ」の「マス目」の数値を変更することで、縦と横の数を設定できます。
また、上で紹介した教材のように、上に図形などを置いて作成する場合は、せっかく配置したマス目が動いてしまうことがあります。そういう時は、「プロパティ」を開いて「編集中ロック」にチェックを入れると、編集画面で動かなくすることができます。
関連するお勧め教材(「マス目が背景にある教材」に関係する教材)
こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、2年「三角形と四角形」を取り上げます。お楽しみに!
種市 芳丈(たねいち よしたけ)
階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約630ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」
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