子供の問いを引き出す(24) 式と図を関連付ける:5年「体積」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第30回)
算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回は、立体の複合図形(L字型)の体積を求める学習です。
「まだ求め方があるよ!」を引き出す
ここで押さえたい内容は下記の3つです。
- 立体の複合図形(L字型)の中に直方体や立方体を見い出して、それらを用いて体積を求める。
- 4年の平面の複合図形(L字型)の面積の求め方と関連付ける。
- 式と図を関連させて体積の求め方を考える活動を行う。
1については、立体の複合図形(L字型)を見て、習っていないから分からないと諦めるのではなく、立体の複合図形を構成する直方体や立方体に目をつけて、それらを使って体積を求めることです。例えば、縦に分けて直方体や立方体にし、それぞれの体積を求めて、合わせることで立体の複合図形(L字型)を求めます。
2については、今回の体積の問題が、4年の平面の複合図形(L字型)と似ていることに気付くことです。見通しや学び合い、振り返りの時にその気付きを生かして関連付けることができます。子供の中で関連付けされると、例えば、4年で活用した「ひく作戦」が今回も活用できないか考えます。
3は、数学的活動「ウ 問題解決の過程や結果を、図や式などを用いて数学的に表現し伝え合う活動」を指します。本時の活動は、4年の平面の複合図形(L字型)の面積の求め方(学習指導要領解説P.229)と似た展開になります。
ただ、4年の時と違うのは、平面図形から立体図形になったため、図だと分割したり移動したりするイメージがもちにくい子がいたり、模型だと準備が大変だったりするなど、指導の難しさがあることです。
そこで、スクプレを使って、図でもイメージがもてるように、分割・移動ができるファイルを作りました。また、式がどの直方体や立方体を示した分かるように、色をつけられるように設定しました。
授業の様子
まず、「この形の体積を求めよう」と黒板に書き、電子黒板にスクプレで作った直方体と立方体を映しました。
「直方体と立方体の体積の公式を覚えているかな?」と聞くと、
「直方体は、『縦×横×高さ』です。」
「立方体は、『一辺×一辺×一辺』です。」
と声を揃えて言いました。
「では、次は、この形の体積を求めてみましょう!」
と言って、電子黒板にスクプレで作った立体の複合図形(L字型)を映しました。
「あれ?凸凹している。」
「でも、できそうかも…。」
「(画面に向けて指を動かして)ここを切れば、直方体になるから…」
いつもなら解決の見通しをもたせる場面ですが、ほとんどの子が困った様子を見せず、問題と向き合っています。この姿から、前述の1はクリアしたと判断しました。そこで、あえて立ち止まらず、そのまま解決させることにしました。
子供たちは黙々とノートに自分の考えを書いています。多い子はもう3つ目に取り組んでいます…。
「あと、2分したら、体積を求める式を発表してもらいます。」と声をかけました。
前述の3に取り組むため、あえて式だけ発表してもらうことにしました。その式を手かがりに、別の子に、図で説明をさせていきます。
時間になりました。まず、Aさんに式を発表してもらいました。
「『3×2×3+3×2×2=30』です。」
式を板書して振り向くと、ほとんどの子がにこにこしています。
「どうやって求めたのか、図を使って説明してくれる人?」
と問いかけると、全員が勢いよく手を挙げました。その中から指先までピンと伸びているBさんに当てました。
「縦に切って左が『3×2×3=18』で、右が『3×2×2=12』。合わせて30㎤です。」
Bさんは、渡されたマウスを使ってPCを操作し、立体の複合図形(L字型)を2つに分け、右側に赤色を塗りました。
「直方体にするために、縦に切ったんだね。なるほど!」
と言って、後で振り返られるように黒板に書き残しておきました。
子供たちが活発に発表するようになると、言葉だけが行き来し、考え方があまり黒板に残らないことがあります。立ち止まって振り返った時に、どんな考え方が出たのか分かるようにするため、子供たちの言葉を生かした言葉で板書していきます。
「先生、違う求め方でもできたよ!」どうしても発表したかったのでしょう、Cさんが大きな声でつぶやきました。発表させました。
「『3×4×2+3×2×1=30』です。」
式を板書し終わり、「どうやって求めたのか、図を使って説明してくれる人?」と問いかけようと思って振り向くと、ほとんどの子が指先までピンと伸ばして手を挙げていました。
「いいかな、先生が誰に当てても、『えー!』と言わないこと。気持ちは分かるけど、当てられた人が説明しづらくなるからね。」
と約束をさせました。発表したい子が増えてくると、当てて欲しい気持ちが前に出過ぎて、友達への配慮が見られなくなります。誰でも気持ちよく発表できるように事前指導しました。
Dさんに当てました。
「横に切りました。下が『3×4×2=24』。上が『3×2×1=6』。合わせて30㎤です。」
Dさんも、マウスで2つに分けて、立体の複合図形(L字型)を2つに分け、上部に緑色を塗りました。
「直方体にするために、横に切ったんだね。なるほど!」
と言って、後で黒板に書き残しました。
すると、次のようなつぶやきが聞こえてきました。
「あ!どっちのやり方も直方体にしている。」
「先生、4年生でやった凸凹した面積の勉強に似ているよ。」
「だったら、まだ求め方があるよ!」
前述の2でねらっていた4年での学習と関連付けが、子供たちの中で動き始めました…。
お勧め教材(全国学力・学習状況調査の算数の問題のスクプレ化)
7月29日に「令和6年度全国学力・学習状況調査報告書」が公表されました。すでにご覧になった方も多いと思います。
この調査は授業の改善・充実がねらいの一つであることから、正答率の低かった問題については、個人的にスクプレを使った手立てを講じた教材化に取り組んでいます。報告書を参考にし、令和6年度版の教材を作りましたので紹介します。授業改善の参考になれば幸いです。
なお、興味のある方は、第20回で紹介した「全国学力・学習状況調査の算数の問題のスクプレ化」も合わせてご覧ください。
①小5算数 ボールが入った箱の体積(2024R6全国学力学習状況調査3-3)
②小5算数 道のりと時間と速さ(2024R6全国学力学習状況調査4-4)
速さの問題です。正答率が54.4%だったことからスクプレ化しました。アニメを使って問題把握をしやすくしたり、数直線に「100mごと」「1分間ごと」の区切りを入れ、速さの妥当性を検討しやすくしたりしています。また、デジタルワークシートとしてタブレットで書き込めるような画面構成にしています。問題提示と自力解決、学び合いの場面で使います。
③小4算数 桜の開花(2024R6全国学力学習状況調査5-3)
複数の折れ線グラフの問題です。正答率が44.2%だったことからスクプレ化しました。折れ線グラフをカラーにしてグラフを見やすくしたり、折れ線グラフを3月と4月それぞれ時系列で提示できるようにしたりしました。また、選択問題にしてどの子も問題に関われるようにしています。問題提示と自力解決、学び合いの場面で使います。
④折り紙(2024R6全国学力学習状況調査1-1)
加法と減法の数量の関係を捉える問題です。正答率が62.3%だったことからスクプレ化しました。数量の関係を捉えられるよう、テープ図をかく順に提示できるようにしたり、マス目の上にテープ図を提示したりしています。また、紙芝居風に問題文を少しずつ提示して問題把握をしやすくしています。問題提示と自力解決、学び合いの場面で使います。
こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、6年「メイク10」を取り上げます。お楽しみに!
種市 芳丈(たねいち よしたけ)
階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約670ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」
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