2023.06.21
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⼦供の問いを引き出す⑫ スポットライト提示2︓2年「かけ算(九九表)」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第16回)

算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回の教材は2年「かけ算(九九表)」です。

九九表のきまりに気づく姿を引き出す

九九表を用いた学習では、九九表を書いたり観察させたりすることを通じて、数の並びの規則性や美しさ、計算の性質に気付かせるのがねらいとなります。

しかし、「きまりを見つけよう」と発問しても、何をしたらいいか分からない児童を見かけることがしばしばあります。これは、「きまり=ルール」と解釈し、「数の並びの規則性に気付いてほしい」や「美しい数の並びに気付いてほしい」などの教師の意図が伝わらないケースです。

そこで、そのような児童にも九九表のきまり発見を楽しめるよう、本時では下記のような工夫をしました。

  1. 前時に、九九を確認しながら九九表を書く時間を設けました。九九表とじっくり向き合うことで観察が促され、九九表のきまりに気付く素地が育まれるようにしました。
  2. スクプレを使って教材を作成し、スポットライト提示で九九表の一部だけ拡大できるようにしました。対象への興味・関心を高めながら、着目してほしい部分に注目がいくようにしました。
  3. 何の表に見えたかを考えさせ、その根拠を尋ねるようにしました。そして、児童の根拠の説明の中から、数の並びの規則性や美しさや計算の性質などにつながる言葉を教師が意図的に取り上げることで、「ほかにもありそうだ…」と進んで探す姿を引き出すようにしました。

授業の様子

スポットライト提示(小2算数 九九表)

まず、電子黒板にスポットライト提示の表を提示し、すぐ隠しました。

「これはある表の一部です。何の表かな?」
と子供たちに尋ね、もう一度見せました。

はじめに今日の問題(教材)を提示するとき、すべての子に「見てもらう・聞いてもらう」ことはとても重要です。ここで漏れると、勘違いの解答が生じたり、授業の途中で集中が切れたりします。子供たちの作業を強制的に制止して注目を集める方法もありますが、目はこちらを向いていても気持ちが向いていないことが多いようです。そこで、今回は「いったん全部隠す」という方法で興味を引くようにし、子供たちの気持ちが向くようにしてみました。

「あっ、分かった!」とAさんが大きな声でつぶやきましたが、他の子は首を傾げています。

さらに、スポットライト提示の表を斜め右下に移動させると、
「私も分かった!」
「あれだね!」
とたくさんのつぶやきが聞こえてきました。

一斉に何の表が言わせてみると、「九九!」と全員の声が揃ったので、思わず笑いが起きました。

「『九九表』って本当?」と問い返すと、
「だって、2の段が…」とBさんが言いかけたところを止め、全員に自分で考えた「だって…」の続きをノートに書くように指示しました。

私の経験ですが、元気よく発表している子に理由を尋ねた途端、その子が沈黙してしまうことが何度かありました。「理由」や「根拠」と言われると、ちゃんとした文にしないといけないと考えるのからでしょうか、言葉が出てこなくなるようです。

しかし、「それ、本当?」と尋ねられると、「だって…」とその子なりの見方・考え方が含まれた言葉が出てくることが多いので、この発問を使っています。

ノートを見ると、下記のようなものがありました。

  • 1 の段は 1 ずつ増えて、2 の段は 2 ずつ増えているから。
  • 横も縦も答えが出ているから。
  • 1 の段と 2 の段をたすと、3 の段になっているから。

これらの考えを発表させた後、スポットライト提示で隠していた部分をすべて取り払って見せました。

「やっぱり九九表だったね!」と子供たちは予想が当たっていたことに喜んでいました。

すると、CさんやDさんが、
「先生、面白いこと、見つけた!」
「私も!」
と手を挙げ、発表を始めました…。

※教材の作り方~多角形のON(表示)・OFF(非表示)~

  • 「ボタン」「アクション機能」「スポットライト提示用多角形」の順にリンクでつなぐ。

  • 「アクション機能」のプロパティ「実行」タブの「表示」の「ON/OFF交互」の項目にチェックを入れる。

上の教材は、「多角形」を使って真ん中を切り抜いたような図形(スポットライト提示)を作成し、それを「アクション機能」を使ってON・OFFできるようにしています。

スポットライト提示の作成の仕方については、第9回を参照ください。ここでは、多角形のON(表示)・OFF(非表示)のやり方について説明します。

まず、編集画面でキャンパスに、あらかじめ作っておいた「スポットライト提示用多角形」、「アクション機能」、「ボタン(スタンプから選択)」を配置します。

次に、「ボタン」「アクション機能」「スポットライト提示用多角形」の順にリンクでつなぎます。このとき、リンクされたことを示す青い矢印が何もない部分を示しますが、それで合っているので大丈夫です。(「スポットライト提示用多角形」とリンクされたことを示しています)

「アクション機能」のプロパティで、「実行」のタブをクリックして、「表示」の項目の中から「ON/OFF交互」に「チェック」を入れます。

最後に、このページをコピーして、スポットライト提示したいものの上で、ペーストして完成です。

関連するお勧め教材(「九九表」を扱った教材)

  • 小2算数 隠せる九九表
    九九表です。全体を隠し、必要に箇所だけ提示できるようにしました。使い方は、まず提示したい箇所をクリックします(左隅が赤くなります)。次に、画面左上の半透明の正方形をクリックします。これで提示します。もし、戻したいときや赤くして強調したい時は、画面左上の黒や赤の正方形をクリックしてください。2年生の九九表だけでなく、3年生以上の九九表を使った学習で使えます。
  • 小2算数 九九表のきまり
    九九表のきまりの教材です。九九表を半分しか提示しないで、空白の場所がいくつなのか考えさます。「両方12だよ」だけでなく、「隠れているところにも12がもっとある」という声を引き出すことができます。九九表の対称性や同じ数が何度か出てくることを扱うことができます。空白はクリックすると提示することができます。灰色の長方形は下の方に移動させることができます。
  • 小2算数 九九表パズル
    九九表の教材です。九九表を4つに分割した部分の位置を考える教材です。それぞれのパーツを動かすことができるので、問題提示や確かめに使えます。
  • 小2算数 九九表を広げよう
    九九表を広げて、被乗数や乗数が12までの積を考える教材です。指定したマスを赤や黒にしたり、答えを提示したりすることができます。また、ワークシート用のページも設定し、子どもたちが記入できるようにしました。
  • 小3算数 九九表を2マス隠すと
    九九表を使ったきまりのある教材です。長方形で隠した2マスの合計を求める際に、上下の数を使うと素早く求めることができます。長方形は自由に動かしたり、半透明にしたりすることができるように設定しました。また、「4マスだったら」「6マスだったら」という発展させることもできます。
  • 小5算数 九九表を正方形で隠すと
    九九表の教材です。赤いスイッチを押して3×3の正方形で隠し、その数の合計をぱっと先生が答えます。何度か繰り返すと、(真ん中の数×9)のきまりに気付く子が出てきます。平均の考えを使っていることを理解させることができます。正方形は大きくなるので、5×5や9×9の場合も発展的に扱うことができます。細水保宏先生の実践を参考にしました。

こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、4年「1けたでわるわり算」を取り上げます。お楽しみに!

※ダウンロードした教材は、スクールプレゼンターで開いてください。選択肢にスクールプレゼンターが無い場合は、下記の参考資料にあるURLから体験版をダウンロードしてください。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約600ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」(※2025.3にクローズしました。)

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