番外編「ICTを活用した乗法九九の指導」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第32回)
今回は番外編として、算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使った2年「かけ算(九九)」の教材を特集します。
※第16回で九九表の教材も特集しています。
「九九って楽しい」を育てる
初めて2年生を担任したとき、「九九をしっかり身に付けさせて、困らないようにしたい!」と意気込み、暗記・反復練習中心の学習に取り組ませました。計算カードを使ったり、教室の入り口に関所を設け「今日は3の段」と掲示したり、暗記できるたびに合格シールをあげたりしました。
結果、乗法九九は全員言えるようになったのですが、時間が経つと、4の段と7の段のような発音が似ている段や覚えるのに時間がかかった段ではすぐ誤答が見られるようになりました。見つける度に指摘しましたが、間違って覚えてしまったものの修正は、新しく覚えるより時間がかかったことを覚えてます。
この実践から、暗記・反復練習中心の学習は、下記の課題があると実感しました。
- 練習がつらい(楽しくない)。
- 相手(九九をマスターした人)がいないと、チェックできない。
- 間違って覚えると、自己修正ができない。
そんな思いをもった数年後、『おもしろ発見!九九の授業づくり(坪田耕三著/国土社/1994)』という本に出合いました。この本の中で、私に響いたのは巻頭の下記の文章です。(引用)
「ただ覚えろというのは、よい指導の方法ではない。(中略)未熟な方法である。」
「これからは『考えることの楽しさにふれる教育』をめざすべきである。」
「それぞれの九九を構成していく段階から『きまり発見!』の面白さを味わいながら、授業を進めていく」
さらに、具体的な実践の頁も読み進めていくと、まさに目から鱗でした。自分が感じていた課題への解決が見えたように気がしました。(現在入手が難しいですが、)乗法九九の指導に悩んでいる方は、一読の価値があります。
これから紹介する教材は、その後2回ほど2年生を担任した時に実践したものです。坪田先生から学んだ「きまり発見!」の要素を取り入れたスクプレ教材になっていいます。参考になれば幸いです。
お勧めの「ICTを活用した乗法九九」教材
①小2算数 アレイ図九九
イメージをもって乗法九九の定着を図る教材です。アレイ図のシルエットと積をヒントに、式を考える学習ができます。積が同じでも式が違うことから、交換法則などに気付く場面も作ることができます。2の段から5の段まで作成しました。
②小2算数 かけ算九九ビンゴワークシート2
ゲーム性のある乗法九九の定着のための教材です。乗法九九を使ってビンゴをします。慣れてきたら、2つに段を混ぜ、交換法則に気付かせることができます。1頁はルール説明、2頁はワークシートです。
③小2算数 九九までのアレイ図
乗法九九までのアレイ図です。6・7・8・9の段を既習の2~5の段を合わせることで求めることができます。分配法則の理解の素地を培うことができます。アレイ図の大きさを自在に変えたり、ドットに色を付けたりすることができます。
④小2算数 九九の一の位でできる形
乗法九九の教材です。積の一の位に着目して、線でつないでいきます。星になったり五角形になったりする点が面白いだけでなく、できる形が点対称になる関係にも気付くことができます。
⑤小2算数 九九表のきまり
九九表のきまりの教材です。九九表を半分しか提示しないで、空白の場所がいくつなのか考えさます。「両方12だよ」だけでなく、「隠れているところにも12がもっとある」という声を引き出すことができます。九九表の対称性や同じ数が何度か出てくることを扱うことができます。空白はクリックすると提示することができます。灰色の長方形は下の方に移動させることができます。
⑥小2算数 昔の九九(口遊)
昔の九九の教材です。平安時代(970年)に書かれた『口遊(くちずさみ)』に掲載されていたものです。今と違って唱え順が九九八十一から始まっていたり、九九の次は八九だったり、半九九(交換法則を適用して、36通りを省いた45通りの九九)だったりします。違いを発見しながら楽しく九九の復習ができます。
次回は、6年「対称」を取り上げます。お楽しみに!
種市 芳丈(たねいち よしたけ)
階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約670ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」
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