2024.09.18
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子供の問いを引き出す(25) 手ごたえのある問題を:6年「分数の計算」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第31回)

算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回は、6年「分数の計算」を取り上げます。

「答えは言わないで!」を引き出す

10年ほど前に放送されたGoogleのNexus7のCMを覚えているでしょうか?「1・1・5・8で10を作る」というメイク10の問題に親子で取り組む内容です。

このメイク10(make10)はテンパズル(10puzzle)とも呼ばれ、4桁の数字を1桁ずつの数字と見て、その4つの数字を使って四則演算やカッコを用いて10を作る遊びです。数字の順番は変えて構いませんが、必ず4つ数字を全て使います。例えば、「2・0・2・4」であれば、答えは下記のようになります。

2・0・2・4 → 2×4+2+0=10 ※別解あり

シャッフルしたカードで数字を決めてもいいですが、対向車の4桁の車のナンバーを使って出題するのも楽しいです。社会科見学や修学旅行などの移動中のバスで子供たちと取り組むと、盛り上がります。

実はCMの数値「1・1・5・8」は、小学生の知識で解けるメイク10の中でも、最も難しい部類の問題に入るものです。大人でも最低5分はかかるかもしれません。(※自力で解決したいと思う方もいると思うので、この答えはこの記事の最後に示しておきます。)

解いて分かるように、分数の知識・技能(引き算、商分数、わり算)が必要です。このことから、分数のわり算を学習する6年生であれば、算数の授業で扱うことができます。

また、根気強い試行錯誤も必要です。自分の力で見つけたいという思いや粘り強さなどの資質・能力が必要ですが、これらは一朝一夕には身に付きません。私は、「1・1・5・8で10を作る」ような手ごたえのある問題を時々取り組ませることが必要だと思っています。「力だめし」のような問題や一見簡単そうで難しい問題などを、子供が力を出し切ってようやく解けたという経験をさせたいものです。

動画(小6算数 ナンバープレートでメイク10)

ただ、この「1・1・5・8で10を作る」問題をそのまま出題したら、下記の3つの理由で、かなりの子が解く前に辞めてしまうと予想しました。そこで、全員が取り組むところまで行けるよう、それぞれ手立てを講じて授業に臨みました。

  1. メイク10のルールが分からない。
    →ルールを掲示して、まずは簡単な数値で取り組ませる。
  2. 解いてみたいという気持ちが起きない。
    →スクプレを使って、車のナンバーでメイク10をする遊びからスタートする。
  3. 「1・1・5・8」が難しすぎる。
    →分数の知識(商分数、たし算、かけ算)を活用する「1・1・9・9」をまず解かせ、類題として「1・1・5・8」に取り組ませる。

授業の様子

メイク10のルール

まず、黒板に「メイク10にちょうせん」と書き、「メイク10」を知っているかどうか尋ねました。

2人だけ手を挙げましたが、ほとんどの子は「メイク?」「10?」など、初めて聞いた様子でした。この様子から、想定していたルール説明より、一層、丁寧な説明をすることにしました。

そこで、掲示程度の扱いの予定で前もって準備していた「メイク10のルール」の紙を、まずは、みんなで一緒に読むことから始めました。そして、読み終わった後、「1・2・3・4」を使って、3つほど式を紹介し、先ほど読んだルールに合っているかどうか考えさせました。

ア 1+2+3+4=10
イ(1+4)+(2+3)=10
ウ 3×4-2=10

「アはルールに合っていますか?◯だと思った人は両手を使って◯を作ってください。×だと思った人は、×を作ってください。3、2、1、せーのっ!」

掛け声をかけて、全員参加を促しました。突然なので、2~3人は戸惑ったのでしょう、手を動かしませんでした。

「今のは練習です。次は本番だよ。3、2、1、せーのっ!」

今度は全員が両手を使って◯を作ました。

このように、これから取り組むゲームや問題などで全員の理解を揃える時は、多少強引に関わらせる必要があります。ここで理解を揃えておくと、授業の後半でのつまずきをかなり防ぐことができます。

イは◯、ウは×と確認した後、モニターの画面を付けて、ナンバープレートを提示しました。

「この『メイク10』は、社会科見学や修学旅行などの移動中のバスで、すれ違った車のナンバーを使って遊ぶゲームです。車のナンバーをいくつか用意したので、それを使ってやってみましょう。」

スロットマシーンのように変わる車のナンバーを、ピンク色のボタンを押して止めました。

「これは、2・3・3・4です。2分時間を取りますから、ノートに式を書いてみましょう。」

子供たちは、ノートに向かって計算を始めました。

「12になった…」
「私、13。」
「本当に10を作れるのかな…」

子供たちに呟きが聞こえます。あっという間に2分経ちました。

できた人がいるかどうか聞くと、Aさんが「たぶん…」と言いながら手を挙げました。

「たぶん、『(3×3-4)×2』。」

それを聞いて、何人かがノートに計算をしました。

「本当だ、10になってる!」
「すごいね、Aさん!」

すると、Bさんが、「ほかにもあるよ。」と言って手を挙げました。

「『(3÷3+4)×2』。でも、もっとあるかも。」

Bさんの式が10になるのを確認した後、「もっとあるかも」も板書しました。

実は、「2・3・3・4」の数値は、下記のように商分数を使っても10を作ることができます。「1・1・9・9」を解決した後に、この数値を見直してほしくて強調しました。

(4÷3+2) × 3 = 10
(4-2÷3) × 3= 10

次のナンバーに問題を変えるため、スロットマシーンのように変わる車のナンバーを、目に前の子にピンク色のボタンを押してもらって止めました。

「2・4・7・7」です。何も指示しなくても、子供たちはノートに式を書き始めました。

「6になった…」
「8か、おしいなあ…」
「あっ、できました。はい、はい!」

元気よく手を挙げたCさんに発表してもらいました。

「『(7÷7+4)×2=10』です。」

すると、さっき発表したBさんがつぶやきました。

「これも『5×2=10』だよ。」

それ聞いて、
「あ…、確かに。似てるね。」
「それなら、Aさんの式も『5×2=10』だよ。」
と共感する声が上がりました。

指導者は意識していなかったのですが、子供たち自ら今まで出た式を統合的に見ているのです。こういう場面に出くわすと、「子供は本当にすごい」や「だから、授業はやめられない」と本当に思います。

なお、「2・4・7・7」の数値も、下記のように商分数を使っても10を作ることができます。「1・1・9・9」を解決した後に、気が付くことを期待して設定しました。

 (2-4÷7) × 7 = 10

次のナンバーに問題を変えるため、スロットマシーンのように変わる車のナンバーを、押してもらおうとすると、たくさんの子が手を挙げました。ピンク色のボタンを押して、スロットマシーンを止めてみたいのです。まだ、発表していない子に止めてもらいました。「1・1・9・9」です。

先ほどのように、指示しなくてもノートに式を書き始めました。でも、3分くらい経つと、

「20とか0とかは作れるけど、10がなぜかでかない…」
「これ、無理なんじゃないかな?」
「先生は、できたの?」
と、意欲が下がってきました。

そこで、黒板に「1÷9=1/9」を書き、
「先生は、5年生で習った◯÷△=◯/△を使ったらできたよ。だから、答えは…」
とわざと答えを言おうとすると、

「駄目、答えは言わないで!」
「これで十分、楽しみを奪わないで。」

と先生の発言を遮り、子供たちは、再び、ノートに向かいました…。

お勧め教材(手ごたえのある問題の教材)

①小5算数 薬師算

塵劫記にある「薬師算」を教材化したものです。手順を説明する頁と、おはじきで実際に試せる頁で構成しています。きまりに気付く態度を引き出します。

②小5算数 二等辺三角形の求積

補助線を引くよさが実感できる教材です。二等辺三角形の面積はこのままだと求められないので、補助線を引いて考えます。直角三角形を見出す場面と、正三角形の半分と見る場面の2つの思考の段階があります。補助線を2段階で提示できるように設定しています。このままワークシートとしても使えます。

③小5算数 折り返した長方形

折り返した時の角度を考える教材です。折り返して角度を考える問題は、「折る前の形を考えること」と「今、分かっている角度を書き出すこと」がポイントになります。前者については、アニメを使って長方形から折り返した場面をイメージさせます。後者についは、黄色のボタンをクリックすると今分かる角度が提示されます。

④小6算数 正十二角形の面積

円の面積の発展教材です。円に内接する正十二角形の面積を「半径」を使って求めます。補助線や合同な図形などを理解できるように、一つずつ提示しています。マス目を提示しておくことで、実際の大きさも見当をつけやすくしています。

⑤小6算数 10進法を使った時計

「量と単位」の発展教材です。フランス革命の時に取り入れられたという数学史を基に教材化しました。10進法だけで表した時刻が、一般的な時計だと何時何分になるのか考えさせます。時計の長針と短針は、CTRLキーを押しながらドラッグすると、動かすことができます。

⑥小6算数 片手だけでいくつまで数えられるかな?

10進法と2進法の違いを扱った教材です。片手だけでいくつまで数えられるか考えさせた後、31まで数えることができることを伝えると、「どうやるの?」と興味をもちます。画面を次々に送っていくと、1から31までのやり方が分かります。なお、始めの頁は、指をクリックすると、折れたり戻ったりするように設定してあります。

⑦小6算数 回転させた半円

円の面積の活用問題です。図のアとイを合わせた面積を求めます。問題の状況が分かりやすいように、作図する手順で提示できます。イとウが同じ面積になるところがこの教材の面白さです。

こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回(11月公開予定)は、番外編 ICTを活用した九九指導を取り上げます。お楽しみに!

※1・1・5・8の答え → 8÷(1-1÷5)=10

※ダウンロードした教材は、スクールプレゼンターで開いてください。選択肢にスクールプレゼンターが無い場合は、下記の参考資料にあるURLから体験版をダウンロードしてください。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約670ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場

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