2024.01.23
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子供の問いを引き出す⑱ 動きのある教材4:2年「三角形と四角形」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第23回)

算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回は2年「三角形と四角形」です。

置く向きで図形が変わる?

動画「三角形かな?四角形かな?」

既習の「3本の直線で囲まれている形を『三角形』」、「4本の直線で囲まれている形を『四角形』」を活用し、提示された図形を三角形や四角形に弁別する学習です。

一見簡単そうですが、実際授業すると、子供たちにとってなかなか難しいことが分かります。それは、子供たちが生活の中で使っている言葉の「さんかく」が山のようにとんがった形を意味し、「しかく」が正方形や長方形のような整った形を意味するからです。

例えば、上の図形③をこのまま提示すると、山のようにとんがっていないので「さんかく」ではないから三角形ではないと考え、向きを変えて提示すると、山のようなとんがった形に見えたので三角形だと考える子が多くいます。

そこで、スクプレを使って、下記のような手立ての教材を作り、授業に臨みました。

  1. 向きを変えて見る話題が自然と出るように、「アニメ」を使って提示した図形が360度回転するようにする。
  2. 「アクション」と「フィルター」を使って、回転している図形を見たい位置で止められるようにする。
  3. 三角形や四角形の概念が豊かになるように、円弧や鈍角三角形、楔形四角形なども提示する。

授業の様子

まず、黒板に「三角形かな?四角形かな?」と板書し、全員に立つように指示しました。

そして、「これから電子黒板で図形を見せます。その図形が、三角形か四角形のどちらか分かったら座って、ノートに『三角形』や『四角形』と書きましょう。」と発問しました。

このような立場が決まるまで立たせたり自分の考えを書かせたりする手法は、第5回でも紹介しました。すべての子を問題と強制的に関わらせることができ、短時間で問題との距離を縮める効果があります。ただ、1時間で何回も使うと効果が薄れてくるので、私は1時間に1回だけと決めています。

図形①を見せると、「かんたん!」や「あれだね!」とつぶやいて、全員があっという間に座りました。ノートを見ると、全員が「三角形」と書いていました。

「正解は…、三角形です!」と伝えると、みんな大喜びです。

どうしてそう考えた聞くと、Aさんは、「3つの先が3つあるから。」と答えました。これは、Aさんの「さんかく」の概念と「三角形」が混じったものでしょう。

次に指名したBさんは、「3本の直線で囲まれた形だから。」と答えました。

強調したかったので、すかさず褒めました。
「これは、前に習ったことを使っていていいね!どこだったかな?」

子供たちは自分のノートをめくり始めました。
「はい!52番です。」
すぐ見つけたCさんが元気よく手を挙げました。

この「52番」というのは、4月から行った算数の授業の通し番号のことです。毎回授業の始めに、黒板の赤の四角で囲むめあてや活動内容の文頭に、子供たちと一緒に書きます。学習したことの目次の役割を果たします。先ほどの既習を振り返る活動により、Cさんをはじめ多くの子が、第52回の算数の学習で「3本の直線で囲まれた形が三角形」という内容を学習したことを思い出すことができました。

番号を書くだけなので気軽に取り組め、「既習を生かして解決する」という態度も育つので、お勧めの方法です。

次に、図形②を見せました。

「分かった人はノートに書きましょう。」

図形①で三角形の定義を確認したこともあり、ほとんどの子はノートに、「三角形じゃない」とか「どちらでもない」と書きましたが、2人が「三角形」と書いていました。

そのうちの一人であるDさんに理由を聞いてみました。

「こことこことここにぼうがあるから。」
どうやら、「ぼう」と「直線」の概念が混在しているようです。

「さんかく・三角形」や「ぼう・直線」などは今まで使っていた言葉や概念と似ているので、一度定義を学習しても数日経つと、もともと使っていた言葉に置き換えられてしまうのです。

2つの頂点を結んでいる線が曲がっていて直線ではないことを確認していると、
「三角形に見えたけど、『三角形じゃない』に変えます。」
とDさんが自ら考えを変えました。もう一人の子はその様子を見て書き換えました。

概念の修正は、自ら気が付くよう促し続けることが有効だと感じました。

次は、図形③を見せました。

3回目となると、教師が発問しなくても、子供たちは図形を見るなり、すぐノートに書き始めました。

ノートを見ると、学級の半分の子は「三角形」、残り半分は「三角形じゃない」と書いていました。

突然、Eさんが、「先生、止めて!」と言いました。

理由を聞いてみると、「はじめ見たとき、三角形じゃなかったのに、ノートの書いた後にもう見たら、三角形になっていたから。」

それを聞いた周りの子が、「そう、そう!」と共感する声が挙がりました。

そこで、Eさんにマウスを渡し、止めて欲しかったタイミングで回転する図形③を停止させてもらうことにしました…。

※教材の作り方~図形が回転し続ける設定~

  • 「アニメ」を配置し、とりあえずの移動先を指定

  • その場所で360度回転するよう設定

  • 何秒間で1周させるか設定

  • 繰り返しを設定

この教材は、三角形や四角形が360度回転し続けるように、「アニメ」を設定しています。また、回転している三角形や四角形を好きな向きの時に一時停止させることもできます。

作り方は、「アニメの一時停止の設定」「360度回転させるアニメ」「アニメの繰り返し」の大きく3つに分かれますが、「アニメの一時停止の設定」については、第10回で紹介しましたので今回は割愛します。

まず、「360度回転させるアニメ」の作り方です。

  1. 「アニメ」を配置し、三角形とリンクさせ、とりあえずの移動先を指定する。
  2. 「アニメ」の「プロパティ」を開いて、「実行」のタブから「回転」を360にしてチェックを入れ、「適用」をクリックする。
  3. とりあえずの移動先の三角形を元の三角形と重ねる。

これで、三角形がその場所で360度回転します。しかし、1秒間で一周するため、かなり速いです。

そこで、回転スピードをもっとゆっくりにしたい時は、「アニメ」の「プロパティ」を開いて、「座標」のタブの数値を大きくします。デフォルトの1000は1秒を意味しますので、仮に7000(7秒)にして試してみましょう。

なお上記の教材は、50000(50秒)に設定しました。

次に、「アニメの繰り返し」の作り方です。

  1. 三角形を右クリックし、「リンクする」を選びます。
  2. その「リンク」の矢印を、「アニメ」とつなぎます。

両方に矢がある矢印になれば、設定完了です。なお、ここで紹介した「アニメ」の設定は、なかなかうまくいかないことが多く、よく質問を受けます。うまく設定できない原因として、三角形やアニメをきちんとクリックしないまま、リンクさせようとしていることが多いです。急がずゆっくり操作することがコツです。

関連するお勧め教材(図形の構成要素やその性質に気付かせる教材)

こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、3年「かけ算」を取り上げます。お楽しみに!

※ダウンロードした教材は、スクールプレゼンターで開いてください。選択肢にスクールプレゼンターが無い場合は、下記の参考資料にあるURLから体験版をダウンロードしてください。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約630ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場

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