子供の問いを引き出す⑬ 算数手品2:4年「1けたでわるわり算」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第17回)
算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回の教材は4年「1桁でわるわり算のひっ算」の発展教材です。
算数手品で問いを引き出す
本時で扱うきまりは、「わられる数の各位の数字の和=9で割った時の余り」です。わり算をしなくてもわり算の余りが簡単に求められる点が、子供たちの興味や関心を高めます。元ネタは「九去法」で、それを小学生向けにアレンジしたものです。
このきまりが成り立つ理由は下記のようになります。
3桁の整数は「100a+10b+c」だから、
100a+10b+c=9(11a+b)+(a+b+c)
9(11a+b)は9の倍数だから、各位の数字の和「a+b+c」は9で割った時の余りに等しい。
小学生には理解が難しいので本時では無理に扱いませんが、教材化する際、仕組みを理解しておくことは大切です。授業での子供の発言にこの原理を見出したり、自分で教材をアレンジしたりするとき、支えになるからです。
算数手品は第13回でも紹介しましたが、子供の「調べたい」「確かめたい」という気持ちを高めるために有効な手法です。スクプレを使って下記のような教材を作りました。
- 第3回や第6回で紹介したスロットマシンのような提示を用います。あらかじめ出る数値は決まっていますが、児童に自分で数値を決めた気持ちにさせることで、手品をしている雰囲気を出したり、ほかの数値を考える姿を引き出したりすることができます。
- 色紙を使った図をスロットマシンに用います。上記1は数字でもできますが、成り立つ理由を子供が考え始めた時、図なしでは説明しにくいです。そこで、はじめから色紙を使った図を用いることで、各位を9で割った時の余りについて図を使って考えられるようにしました。
- 数値設定は、各位の和が9以上になるものが出ないようにしました。各位の和が9で割り切れる場合や各位の和が10を超える場合を子供たちが自ら発展的に考え、そのやり方を類推して考える姿を引き出すことができるからです。
授業の様子
まず、電子黒板に色紙で示した図を提示し、「これがいくつを表しているか分かるかな?」と子供たちに尋ねました。すぐ÷9の話題に入りたいのですが、色紙の図の解釈を子供たちが間違ってしまうと、元も子もありません。
「123です!」と大きな声で答えてくれたので、安心しました。
「先生は筆算をしなくても、この数を9で割った時の余りが分かります。123÷9の余りは6です。」と言うと、何人かがノートに筆算を始めました…。
「あ、本当だ!」
「すごい!」
黒板に123÷9の筆算を書いて余りを確かめていると、「でも、はじめから数が決まっていたし。先生は前もって計算したんじゃないのかな?」と、疑う声が聞こえてきました。
そこで、電子黒板をスロットマシンのような提示に切り替え、「これで数字を決めましょう。誰かストップをクリックしてくれる人はいますか?」と言います。
たくさんの子が挙手した中から一人を指名し、スロットマシンで数字を決めてもらいました。
「132か…。余りは6です。」
全員がノートに筆算を始めます。
「え、すごい!」と驚いている中に、次のようなつぶやきも聞こえました。
「私もできるかも。」
「やり方、分かったよ!」
この子たちの発言にすぐ飛びつきたいとことですが、我慢をして、わざと聞き流すことにしました。理由は、やり方に気が付いた子がまだ2人と少人数であることと、自分から挙手して言いたくなるまで気持ちが高まっていないと感じたからです。

黒板に132÷9の筆算を書いて余りを確かめた後、同じようにスロットマシンで数字を決めてもらい、「213÷9」「512÷9」と、全部で4問の余りを瞬時に答えて見せました。
「全然、やり方が分からないでしょ?」と子供たちに投げかけ、考える時間を取りました。
実は、4問目の数字が決まった時には、ほとんどの子が「8」とつぶやいていたのですが、Aさんだけ「6」と言った声が聞こえていたのでした。
Aさんは、はじめじっと黒板を見て考えていましたが、しばらくすると、「あ、やり方、分かったかも…」と表情が明るくなりました。
Aさんを指名しました。
「今まで余りが6になっていたのは、百の位と十の位と一の位の数を足すと6になっていて、4問目は5+1+2で8だから、余りは8になる。」
周りの子たちが「そう、そう」と頷いていました。「Aさんの説明を、黒板に書いてくれる人はいますか?」と聞くと、たくさんの子が手を挙げました…。
※教材の作り方~意図的な数値の表示のさせ方~
-
1頁目:「スタート」ボタンで、百の位・十の位・一の位が同時に動き出すように設定
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1頁目:「ストップ」ボタンで、「頁送り」されるように設定
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2頁目:「スタート」ボタンで、「頁送り」されるように設定
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3頁目:ページが表示されると同時に自動的にパラパラが始まるように「ON-頁」を設定
上の教材は、一見ランダムに数値が決まっているように見えますが、意図的に設定した数値が表示されるように作成したものです。
そのために下記の3種類の頁を組み合わせています。
(ア)スタートの頁
(イ)意図的に設定した数値の頁
(ウ)「パラパラ」の頁
今回はこれらの頁構成の仕方を詳しく説明します。なお、「パラパラ」を使った表示は第3回を、折り紙の束の画像データの作り方は第6回を参照ください。
まず、1頁目に(ア)を配置します。この頁の「スタート」は、百の位・十の位・一の位の「パラパラ」を「分配器」を使ってリンクでつないでいます。これにより、実行画面で「スタート」をクリックすると、百の位・十の位・一の位が同時に動き出します。
また、「ストップ」は、「頁送り」とリンクします。「頁送り」のプロパティは「頁」を「1」にし、「相対」にチェックを入れます。これにより、実行画面で「ストップ」をクリックすると次の頁に移動しますが、見た目は「パラパラ」を止めたように見えます。
次に、2頁目に(イ)を配置します。このとき、「スタート」は「頁送り」とリンクします。「頁送り」のプロパティは「頁」を「1」にし、「相対」にチェックを入れます。実行画面で「スタート」をクリックすると次の頁に移動しますが、見た目は「パラパラ」を始めたように見えます。
なお、「ストップ」は配置するだけです。
そして、3頁目に(ウ)を配置します。一見、(ア)に似ていますが、よく見ると、「パラパラ」は「スタート」とリンクでつないでおらず、「ON-頁」とリンクさせています。これにより、実行画面では「スタート」をクリックしなくても、百の位・十の位・一の位が同時に動き出します。
また、「ストップ」は、(ア)と同様に「頁送り」とリンクします。プロパティも同様です。実行画面で「ストップ」をクリックすると次の頁に移動しますが、見た目は「パラパラ」を止めたように見えます。
4頁目以降は、4頁目は(イ)、5頁目は(ウ)、6頁目は(イ)、7頁目は(ウ)のように、繰り返して配置します。
関連するお勧め教材(わり算のあまりを扱った教材)
こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、6年「分数のかけ算」を取り上げます。お楽しみに!

種市 芳丈(たねいち よしたけ)
階上町立道仏⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約600ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」
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