2022.08.19
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子供の問いを引き出す⑤ くじ引き:3年「三角形」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第6回)

算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回の単元は3年「三角形」です。

仲間として見る姿を引き出す

今回の教材は「三角形」の導入教材です。教科書でよく見られる導入は、ストローや等分された円などを使って幾つかの三角形を作り、それらを仲間分けしていくという流れです。しかし、これらは、前半の構成活動も後半の弁別活動も、教師からの一方的な指示で行われてしまうことが多く、子供から見れば必要感に乏しい活動になってしまいがちです。子供の思いや問いを生かした学習に変えたいものです。

そこで、スクールプレゼンター(以下スクプレ)を使って、「三角形くじ(図形構成学習セット対応)」という教材を作りました。これには、下記のようにメリットが3つあります。

1.「当たりを作りたい!」という子供の思いのある構成活動

子供の作る三角形は、これから行うくじのために作るという設定にしました。始めのうちは教師に指示されて作っていた三角形が、くじに取り組むうちに、「次はこれが当たりになるかも…」という子供の思いのある構成活動に変化していきます。

2.「これも仲間かも…」という見方・考え方を引き出す

くじは誰でも当たりが出て欲しいものです。その気持ちが三角形の見方・考え方の広がりに生かせるように、「こんな感じだったら当たり」という発問で子供自身に当たりかどうか判断させます。「提示された物と同じだから当たり」という見方・考え方だけでなく、「3辺同じ色なら当たり」や「2辺が同じ色なら当たり」などの正三角形や二等辺三角形の見方・考え方を引き出すことができます。

3.準備が簡単

ストローを使った構成活動には、4種類の長さに切ったストローを長さごとに着色し、児童の人数分用意する必要があります。本当に手間がかかります。そこで、ウチダの「図形構成学習セット」を使って本時の活動が取り組めるように、スクプレで提示する三角形の長さと色と揃えました。準備に手間がかかりません。

授業の様子

まず、図形構成学習セットを子供たちに配付し、
「これから『三角形くじ』をします。まず、三角形を一つ作ってください。」
と指示しました。子供たちは慣れた様子で三角形を作り始めました。

子供たちは図形構成学習セットに触るのは今日が初めてはなく、課題が早く終わった時や雨の降った昼休みなどで、事前に自由に遊ぶ経験をしています。パターンブロックもですが、見た目がカラフルな教具は見ていると何か作りたくなるのが子供です。日常的に触れさせておくと本時の課題に専念できます。

全員が三角形を1つ作り終わるのを確認した後、スロットマシンのように動いているスクプレの画面を提示しました。
「このストップボタンを押して、出た三角形と同じ感じだったら当たりです。ストップボタンを押したい人はいますか?」
と尋ねると、多くの子供が手を挙げました。いつもの算数の時間は静かにしているAさんが、指先まで手をぴんと伸ばして挙手していたので、思わず指名しました。画面の前でAさんがストップを押す様子を、みんながじっと見ています。

この提示のよさの一つに、どの子も関わりたくなる点が挙げられます。いつもの算数の時間は静かにしている子も、「押してみたい!」と自ら動き出します。ウォームアップとして有効です。また、ストップをクリックする度に何が提示されるかは、あらかじめ設定してありますが、スロットマシンのように動いている画面を見たり子供自身で『ストップ』を押したりすることで、本当のくじ引きをしていると思わせる点でも有効と言えます。

三角形くじ

「やったー!」
1回目のくじの結果は、「黄・黄・黄」でした。
喜ぶ声の中に、「色が違うけど…」というつぶやきが聞こえました。つぶやいたBさんに困っていることを聞いてみました。
「私が作ったのは色(緑・緑・緑)が違うけど、当たりの仲間かもしれないと思って…。」
そこで、どう見れば当たりの仲間といえるか、みんなで考えました。

すると、Cさんが、「『辺の長さが3本同じ』って見ればいいんじゃない。」とアイディアを出してくれました。それを聞いて、みんなも「なるほど!」と頷き、Bさんはにっこり笑顔になりました。

すると、「僕のも当たりの仲間だよね?」と、「紫・紫・紫」や「青・青・青」の三角形を作った子たちも、喜び始めました。

Bさんの困っている姿に寄り添う気持ちが、「提示された物と同じだから当たり」という見方・考え方から、正三角形の定義の見方・考え方である「3辺等しい長さだから当たり」へ子供たち自身で広げることができました。

2回目の当たり

2回目のくじです。まず、三角形を作らせました。

「次は、3辺同じ色は出ないな。」
「2辺同じ色かな?」
と、自分の予想をつぶやきながら、作っています。

くじの結果は「橙・緑・黄」でした。
しばらくシーンとなりましたが、「これは当たりかな…」とDさんが自信なさそうに手を挙げました。Dさんの三角形は「黄・緑・青」でした。

すると、さっき助けてもらったBさんが、
「3つ辺の長さがどれも違う仲間と見れば当たりだよ。」
Dさんはにっこり笑顔になりました。そして、自分のも当たりだと思う子がたくさん手を挙げはじめました…。

※教材の作り方~「スクショ」の活用~

  • 三角形を作る

  • 絵で保存(「実行画面」左下)

  • 機能「パラパラ」とリンク

この教材のスロットマシンのように変化する部分は「パラパラ」を使って作りました。大まかな仕組みは、第3回の連載の「パラパラ」を使って数字カードで作ったものと同じです。

大きな違いは、予め用意されている数字カードではなく、自作の三角形の画像データを使った点です。これは、スクプレの「絵で保存」ボタン、通称スクショ(スクリーンショット)を活用すると、簡単に作成できます。

まず、辺を組み合わせて三角形を作ります。くじなので全種類作る必要はありませんが、多めに作ります。

これを1つずつスクショしていきます。「実行画面」の左下にあるカメラのアイコンをクリックすると、jpeg形式で保存されます。この時、保存先をディスクトップなど、後で探しやすい所にしておくとよいでしょう。

次に、保存した三角形の要らない部分を切り取ります。スクプレにはトリミング機能がないので、慣れたアプリで加工しましょう。私はwindows標準の「フォト」で行っています。

最後に、画面に貼り付け、「パラパラ」とリンクすれば完成です。

なお、スクプレはpng形式にも対応しています。著作権フリーの画像でjpeg形式やpng形式であれば、それらを活用することができます。

関連するお勧め教材(三角形に関する教材)

こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、「番外編 Jamboardのワークシートの作り方①」です。お楽しみに!

※ダウンロードした教材は、スクールプレゼンターで開いてください。選択肢にスクールプレゼンターが無い場合は、下記の参考資料にあるURLから体験版をダウンロードしてください。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

南部町立名川南小学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約600ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場

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