2022.07.21
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子供の問いを引き出す④ 筋道を立てて考える教材:5年「長方形に分けると」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第5回)

算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回の単元は5年「三角形や四角形の面積」です。

「どこでも面積が等しいかも…」を引き出す

今回の教材は「三角形や四角形の面積」の発展教材です。長方形の中に点を打ち、それを長方形の4つの頂点と結ぶと三角形が2~4個できます。これらの三角形を交互に赤・白に色分けをし、グループごとに面積を比較すると、赤グループと白グループは常に等しくなります。

このことを教師が教えるのではなく、子供が帰納的に発見し演繹的に理由を考えるという、筋道を立てて考える授業にしたいものです。

そこで、スクプレを使って、長方形の中の格子点をクリックすると、長方形が三角形に、色が付いて分割される教材を作りました。格子点を打った画用紙やジオボード(5行5列、合計25本のピンに複数の輪ゴムをかけて図形を完成させる教材)でも大差がないのでは…と思うかもしれませんが、ICT教材には下記のようにメリットが3つあります。

  1. 問いを引き出す場面を作りやすい。
    問いを引き出す時の大切な条件として、「全員が同じものを見て、同じことを感じる瞬間」が挙げられます。問題と出合わせ、一人の小さな疑問に、他の子も寄り添わせながら問いを育てていくには、プロジェクターや大型モニターなど大きな画面で提示できるICT教材が向いています。帰納的な考えであれば、みんなで同じものを見ながら友達の気付きを聞き、それを理解・共感し、ほかにもないかな…とさらに事例を探すという過程で進めていきます。

cf.ジオボード

  1. 三角形の着色に時間がいらない。
    1枚だけなら気にならないかもしれませんが、帰納的に考えさせるには、少なくとも3つ以上の事例が必要です。丁寧に色を塗る子もいるので、思ったより時間を使います。また、ジオボードは優れた教具ですが、ゴムの色を変えることしかできません。やはり、今回はICT教材が向いています。
  1. 演繹的に考えるためのヒントを提示できる。
    帰納的に発見したことは、演繹的に説明ができるとすっきりします。しかし、演繹的に考えることは小学5年生でもなかなか難しいものです。そのため、教師が演繹的に考えるためのヒントを用意しておく必要があります。
    この教材で面積が等しくなる理由として、「等積変形」と「長方形を対角線で2つに分けると半分」があります。「等積変形」のヒントを提示するには、底辺と高さが等しい三角形を連続で提示します。「長方形を対角線で2つに分けると半分」のヒントを提示するには、赤と白の三角形が長方形の対角線で分割されているように描き込みをします。

授業の様子

格子点をタッチ

「たて3㎝、よこ4㎝の長方形があります。この長方形を格子点で分けます。分けてみたい格子点はありますか?」
と言ってスクプレの画面を提示しました。Aさんが前に出で、真ん中より少し上の格子点をタッチしました。突然、赤い色が表れたので、みんなびっくりしました。

全員を立たせ、こう問いました。
「長方形の中の赤と白の部分、どちらの面積が広いでしょう?決まったら座ってください。」

「赤だと思う人は?白だと思う人は?」
と挙手させると、白が多いようでした。まずは、問題と強制的に関わらせ、少しでも問題との距離を縮めていきます。立場が決まると確かめてみたくなるものです。計算する時間を取りました。

赤 (4×1÷2)+(4×2÷2)=6㎠
白 (3×2÷2)×2=6㎠

「え!同じだ。」というつぶやきが上がりました。

「偶然じゃないの?」と返すと、Bさんがこんなことを言い始めました。

「ほかの格子点で分けても、赤と白の面積は変わらないかもしれない…。」
これは帰納的な考えが含まれたつぶやきですが、挙手しないで話したので、ほとんどの子は聞いてはいません。

そこで、Bさんの考えたことに学級全員を寄り添わせるため、次のように発問しました。
「Bさん、おもしろいこと考えるなあ。もう1回、言える人、いるかな?」

席が隣のCさんが発表してくれました。
「Bさんは、『ほかの格子点で分けても赤と白の面積は等しい』と言っていました。」

「よく聞いていたね、すごい!それだけでなく『等しい』という算数的な言葉もいいな。でも、『ほかの格子点』って、例えばどこかな?」
聞いていた子を褒めながら、Bさんの考えたことをより具体的にしていきます。

長方形を分ける

ノートに図を描いて、既に計算を始めた子が数人現れました。うなずきながら計算しているDさんに指名しました。
「Dさん、途中経過を教えてください。」

「まだ3つ目なんですけど、どこでも面積は等しくなりそうです。」
これを聞いて、まだノートに何も描いていなかった子たちも、取り組み始めました…。

しばらくしてから、子供たちに尋ねました。
「『ほかの格子点で分けても赤と白の面積は等しい』と思った人は〇、違うと思った人は×を出してください。せーのーで!」

全員が頭の上に両手で〇を作りました。どの子も帰納的にきまりが成り立つことを実感できたようです。帰納的な考えを育てる上で大事なことは、実際に自分で確かめてみる時間を確保することです。予想したきまりがいつでも成り立つことが実感できれば、算数が楽しくなり、同じような場面に出合った時、「きまりがあるかも…」と動き出すようになるからです。

「でも、先生。どうして、いつでも等しくなるのかな?」
Eさんが理由を考え始めました。

「理由を説明できる人はいますか?いないようなので、これを見て何か思いつかないかな?」
等積変形のヒントになる底辺と高さが等しい三角形を連続で提示しました。

「あ、分かった!…」
子供たちが、等積変形の説明を始めました…

※教材の作り方~「頁送り」の活用~

この教材は、「頁送り」機能を使って作りました。「頁送り」を使うと、紙芝居のようなスライド教材やアドベンチャーブックのように頁を行き来する教材を簡単に作ることができます。

編集画面で、ボタンにするものと表示させたい頁を設定した「頁送り」をリンクで結ぶと、実行画面ではそのボタンをクリックすると現在の頁から指定した頁に移動させることができます。また、ボタンを配置しない場合は、画面をクリックするだけで次の頁に移動します。

本教材には、一見、ボタンらしきものが見当たりません。実は、透明の正方形を格子点に配置し、それをボタンとして設定しているからです。

正方形を透明にするには、正方形の上で右クリックし、プロパティを開き、下記のように設定します。

  • 「線」は「透明」にチェックを入れる。
  • 「面」は「透明度」を「99」にする(実行画面でクリックできなくなるので、透明にチェックは入れない)。

格子点で分割してできる図形は20パターンあります。それらを1頁ずつ作成します。先に20パターンを作成してから、透明にした正方形を配置した方が、正方形の「順位」が上になり、リンクを張るときに作業が捗ります。次に、「頁送り」を20こ用意し、20パターンの頁と対応させていきます。このとき、「相対」にはチェックは入れないでください。その頁から数えた頁になってしまいます。

最後に、透明にした正方形と「頁送り」をリンクで結びます。私は、右上の星をクリックすると、何も分割していない1頁目に戻るように作成したので、頁も「頁送り」も1つ多くなっています。

関連するお勧め教材

こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、3年「三角形」の単元を取り上げます。お楽しみに!

※ダウンロードした教材は、スクールプレゼンターで開いてください。選択肢にスクールプレゼンターが無い場合は、下記の参考資料にあるURLから体験版をダウンロードしてください。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

南部町立名川南小学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約600ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場

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