子供の問いを引き出す⑥ スポットライト提示︓4年「正方形は何枚?」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第9回)
算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回の教材は4年「等差数列の和」です。
工夫して求める姿を引き出す
「初項1、公差2、項数6、末項11の等差数列の和」は、図のような6段のピラミッドに並べた正方形の数を求める場面に置き換えることができます。
図にして問題化する方法は、子供にとって具体的な場面にした方が問題をイメージしやすくなるとともに、教師にとっても図に描き込ませることで着想や思考の過程が見取りやすくなります。教材化するときにはお勧めの方法です。
この求め方には、下記のような多様な方法があります。
①正方形を1枚ずつ数える。計36こ。
②「ガウスの計算」で求める。上から正方形を移動させて12枚の3列(1+11=12、3+9=12、5+7=12)作る。12×3で36こ。
③6段のピラミッドの中に、3段のピラミッド(1+3+5=9)が4つ組み合わせた形と見る。9×4で36こ。
④一本の直線で縦に分割し、移動させて正方形にする。6×6で36こ。
これらの他にも求め方がありますが、このように多様な求め方があるにも関わらず、この図を提示して「工夫して求めましょう」と子供に投げかけても、①に取り組む子がほとんどで、②や③が2~3人程度、④はほぼいないという状態が起きることが多いです。
その要因として、「全部でいくつなのか知りたい」という気持ちが起きなかったり、ピラミッドに並べた正方形を観察する時間が足りなかったりするまま問題を解いたり、「工夫して」がどういうことを指すのか子供にとって曖昧なことが挙げられます。
そこで、スクプレを使って、ピラミッドの一部だけが提示されるような教材を作りました。このように、真ん中を切り抜いて見せる提示を「スポットライト提示」と名付けています。
スポットライト提示は、従来の隠す提示を発展させたものです。対象への興味・関心を高めるという隠す提示のメリットだけでなく、自然な流れで着目してほしい部分の観察に取り組ませることができるというメリットもあります。
本教材で着目してほしい部分は「1・3・5・7・9・11」という等差数列と「6段」です。等差数列に着目させることは、②の求め方のアイディアへつながります。「6段のピラミッド」に着目させることは、「全部で36枚ある」ことと「6段」を結び付けた「6×6」を④の求め方へとつながります。
授業の様子
タイルは何枚
まず、「正方形は何こ?」と板書し、スクプレの画面を提示しました。
それを見て、「先生、下の方もありますか?」とつぶやいた子がいたので、「見えない部分の下は、どんなふうになっていると思いますか?」とみんなに聞きました。
「ピラミッドの形かな?」「階段の形かも?」と子供たちは見えない部分を予想し始めました。
「では、下の方を見てみましょう。」と言って、スクプレの画面上の星をクリックしました。スポットライトの部分だけが下に移動していくことを知り、「え、そこしか見えないの?」と驚いています。
「やっぱりピラミッドの形だ!」
「一番上は1こで、一番下は11こだった。」
「6段のピラミッドだ。」
と次々に声が上がりました。でも、すぐに、スクプレの画面が真っ黒になりました。
「1、2、3、4、…」と指差しながら数えていたAさんが、「先生、もう一回、見たいです!」と訴えました。
そこで、もう一度見せた後に、予想で構わないので正方形の数を全員に聞くことを告げました。
もう一度見終わった後、正方形の数を聞いてみると、「29」「30」「36」「37」「38」「39」「40」に分かれました。以前にも書きましたが、立場が決まると確かめてみたくなるものです。また、自分と違う答えがたくさんある場合は尚更です。
「では、全部見えているピラミッドのワークシートを配付します。どうやって数えたか、分かるように描き込んてください。」
子供たちはワークシートを受け取ると、黙って正方形の数を数え始めました。
「36こだ!」「惜しかった…。」
と数え終わった子から声か聞こえます。
子供たちのワークシートの描き込みを見てみると、2段のピラミッド(1+3=9)が9つ組み合わせた形と見た「4×9」、3段のピラミッド(1+3+5=9)が4つ組み合わせた形と見た「9×4」、一本の直線で縦に分割し移動させて正方形にした「6×6」がありました。
かけ算の式が出できた要因として、何度かピラミッドを観察しているうちに、ピラミッドの正方形の並び方の構造を理解したことと、「簡単に数えたい」という気持ちが沸いたことが挙げられます。
そこで、黒板にかけ算の式(「4×9」「9×4」「6×6」)だけを書き、「こんな式を書いていた子がいたんだけど、どうやって求めたか分かるかな?」とみんなに問いかけ、考える時間を取りました…。

※教材の作り方~スポットライト提示(多角形)~

上の教材は、「多角形」を使って真ん中を切り抜いたような図形(スポットライト提示)を作成し、その図形を「アニメ」を使って移動させています。「アニメ」の設定の仕方は第4回で紹介しましたので割愛します。
ここでは、「多角形」を使ったスポットライト提示の作り方を説明します。
まず、左の方にある「図形」をクリックし「多角形」を表示させ、「多角形」のアイコンをクリックします。キャンパス上で「C」のような図形をイメージしてドラッグしながら左クリックをして頂点を決定し、だいだいの形が出来たら右クリックします。このとき、頂点は少し多めに作るのがコツです。頂点の削除は後でできますが、後で追加はできないからです。

次に、「Ctrlキー」と「Altキー」を押しながら左クリックして余分な頂点を削除したり、辺を真っすぐに整えたり、「C」のような図形の色を黒に設定したりします。
最後に、「C」のような図形の一番狭い辺同士をぎりぎりまで近づけて完成です。
上の教材のように、画面全体が隠れるようにしたいときは、図形を移動させて角の頂点の位置をもっと離れた場所に設定すると作成できます。
なお、下で紹介する円の形のスポットライト提示は、よく見ると20角形になっています。多角形の下に円を敷き、その円をなぞるように頂点を決定したので、かなり円に近くなっています。
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こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、3年「円の中の三角形」を取り上げます。お楽しみに!

種市 芳丈(たねいち よしたけ)
南部町立名川南小学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約600ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」(※2025.3にクローズしました。)
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