子供の問いを引き出す➁ 意図的な数値を設定:4年「分数」 スクールプレゼンターで問いを引き出す算数授業づくり(第3回)
算数用アプリ「スクールプレゼンターEX(以下スクプレ)」を使って子供の問いを引き出す算数授業の実践紹介。今回の単元は4年「分数」です。
「どちらが大きいの?」を引き出す
4学年では、「簡単な場合についての大きさの等しい分数があること」の学習をします。数直線上に表した分母の違う複数の分数について位置が等しいことから大きさが等しい分数を見つける活動を行いますが、あらかじめ数直線のかかれたワークシートを使うため、どうしても受け身の学習になりがちです。
そこで、授業では、分数の大きさをイメージするために、子ども自ら数直線を使って考えたり説明したりする場を創るようにしたいものです。そのために授業の導入で「どちらが大きいの?」という問いをもたせることがポイントになります。
このような問いを子どもから引き出すために、スクールプレゼンター(以下スクプレ)を使って、「先生と分数スロットマシンで勝負」という教材を作りました。ボタンをクリックすると分母や分子の数字がスロットマシンのように変化し、さらにクリックすると数値が決定します。問いを引き出すため子供にも操作させますが、出る数値は予め意図的に設定しています。子供が「どちらが大きいの?」と迷う場を創り、その問いを解決するために、数直線を使って考えたり説明させたりします。
授業の様子
「これから分数を使って『大きい方が勝ち』というゲームをします。先生対みんなで勝負です。」
まずは、ルール確認も兼ねて、既習の分母が同じ場合から始めました。分母がどちらとも「7」で、分子の数値が動いています。先生が先にボタンをクリックすると、「3/7」が表示されました。この「3」はあらかじめ設定したものですが、子供にはそう見えません。
「先生と勝負したい人?」
と尋ねると、先生と勝負という言葉と、スロットマシンのボタンを止めてみたいという気持ちのせいでしょう、全員が手を挙げました。Aさんを指名しました。
Aさんがタイミングを見計らってボタンをクリックすると、「5/7」になりました。この「5」もあらかじめ設定したものですが、子供にはそう見えません。
「勝ったー!」と子供たちは大喜びです。
「どうして勝ったと言えるの?」と聞くと、Bさんが説明してくれました。
「だって、分子が大きかったから。」
本当は「分母が同じときは」が必要ですが、そのまま「分子が大きいと勝ち」と黒板に書き残しておきました。次の問題を解いたとき、この表現では合わないと気付いて子供たちか修正したいと動き出す場が生まれると考えたからです。足りない部分を教師が教えることは大事ですが、子供たち自ら気付いて直すのはもっと大事なことと考えます。
「悔しいな、もう一回やりましょう。今度はこれです。」
「え!」
さっきと違い、分子がどちらとも「3」で動かず、分母の数値が動いていることに子供たちは驚いたようです。
先生が先にボタンをクリックすると、「3/8」になりました。この「8」もあらかじめ設定したものですが、子供にはそう見えません。
「先生と勝負したい人?」と尋ねると、分母の違う分数の大きさ比べが初めてだからでしょう、半分くらいの子が手を挙げました。ノートに向かって何かを書き始めながら挙手しているCさんを指名しました。
Cさんがタイミングを見計らってボタンをクリックすると、「3/5」になりました。この「5」もあらかじめ設定したものですが、子供にはそう見えません。
それを見て、「勝ったー!」という大喜びの声の中に、「これ、負けたんじゃない?」という小さな声が混じって聞こえました。
授業では、このような小さな声を聴き逃さないことがとても大切です。友達と考えが違うときに、「自分の考えは合っているかな?もう一度見直してみよう」や「どうして友達はそう考えたのかな?」などの「問い」が生まれるからです。「勝った」と考えた人と「負けた」と考えた人それぞれに挙手させ、2つの考えがあることを子供たちに分からせました。
「3/5の方が大きいから勝ったと思っている人が多いけど、3/8の方が大きいから負けたと思っているも10人以上いるね。どうしよう?」と悩む様子を見せていると、
「3/5の方が大きいわけをノートに書きたいので時間をください。」という子が出てきました。
「どちらが大きいかな?」と板書する予定でしたが、子供たちは「自分たちが勝ったということを説明したい」と強く思っていると感じ、予定を変更して「なぜ、3/5が大きいかな?」と板書しました。こちらの方が子供たちの疑問や思いに寄り添えたと思いました…
※教材の作り方~「パラパラ」の活用~
この教材のスロットマシンのように変化する部分は「パラパラ」を使って作りました。
右の方にある「機能」をクリックすると「パラパラ」が表示されます。
まず、1から9までの数字カードとボタンを画面に置きます。
次に、「パラパラ」を画面に置き、「ボタン→パラパラ→1→パラパラ→2…→9」の順で結びます。結んだ順で数字カードは表示されます。
デフォルトでは、1秒間隔で次のカードが表示され、繰り返しはされません。設定を変えたい時は、「パラパラ」の上で右クリックして「プロパティ」から変えることができます。
参考までに、上で紹介した4年「分数」の教材は、0.1秒間隔(最小値)、2998回(最大値)で設定しました。
関連するお勧め教材
こちらも是非ダウンロードして使ってみてください。次回は、3年「植木算」の単元を取り上げます。お楽しみに!
種市 芳丈(たねいち よしたけ)
南部町⽴名川南⼩学校 教頭
ICTを活用した算数授業に取り組んでいます。特に、「スクールプレゼンター」は10年以上使っていて、お気に入りのアプリの1つです。自分の作った教材が下記のサイトに約600ファイルほどあります。
スクールプレゼンター教材共有サイト「スクプレ道場」
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