☆今すぐ使える☆1%の努力でできる算数の授業スキル「逆転現象が起こる素材を使う」(No.16)
今回紹介する算数の授業スキルは、算数の授業を得意とする先生の9割が実践しています。
しかも、とっても簡単で、今すぐ使えて、たった1%の努力でできる算数のスキルなのです。今回はそのスキルの第16弾「逆転現象が起こる素材を使う」について紹介します。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
ネットの記事から:「ピザの大きさに関する計算ミス」…インド人男性が指摘したツイートが大バズり!
この記事はネットのニュースで見つけたものです。“「ピザの大きさに関する計算ミス」…インド人男性が指摘したツイートが大バズり!”という記事です。
9インチのピザを注文したところ,ウエイターが5インチのピザを2枚持ってきたそうです。その時に,「9インチのピザを切らしています。代わりに5インチのピザを2枚お持ちいたしました」と言ってきました。そして,「1インチお得ですね。」と付け加えたそうです。確かに,9インチのピザと5インチのピザ2枚なので,5インチのピザのほうがお得な感じです。皆さんはどう思いますか?
実は,これは違います。5インチのピザ2枚よりも,9インチのピザ1枚の方が面積が大きいのです。もし,授業だったら「え〜!!」となりますね。「これを授業だったら」という視点で考えていきましょう。
逆転現象が起こる素材を使う
この記事の肝は「9インチのピザを見せていないこと」「直径の長さを比べていること」です。どちらもウエイターが示したことです。授業でも,同じような展開で進めても良いでしょう。1インチは2.54cmです。数値は簡単にするために,調整していただいて構いません。問題文にすると,次のような感じです。
「直径28cmのピザを注文しました。しばらくすると,ウエイターさんが『直径28cmのピザがなかったので,直径16cmのピザを2枚持ってきました。4cmもお得ですよ。』と言って直径16cmのピザを2枚持ってきました。本当にお得なのでしょうか。」
では,実際に考えてみましょう。ウエイターさんの言うように,直径の差を考えてみましょう。直径28cmなので,直径16cmのピザ2枚の方が4cmもお得な感じがしますね。28ー16×2=4 (4cm)
でも,本当にそうなのでしょうか?図1はピザの略図です。赤の円が直径27cmのピザ、青の円が5cmのピザです。問題文だけだと解決のイメージがつかないので,実際に図をかかせてみると良いでしょう。ひょっとしたら,ピザを重ねてかく子もいるかもしれません。重ねてみると,何だか赤の方が大きいような気がしますね。
計算をする子は次のようにやるでしょう。
赤:28÷2=14 14×14×3.14= 615.44 (615.44c㎡)
青:16÷2=8 8×8×3.14×2=401.92 (401.92c㎡)
赤と青のピザの面積の差:
615.44ー401.92=213.52 (213.52c㎡)
計算すると,赤のピザの面積の方が大きいので,青のピザ2枚ではお得ではないですね。実は,青のピザ3枚だと次のようになります。
青:16÷2=8 8×8×3.14×3=602.88 (602.88c㎡)
最初は,直径の差を考えて,4cmお得だと思っていました。ところが,計算すると,青のピザ3枚分でもお得ではないことがわかりました。これは,4枚貰わないといけませんね。まさに,逆転現象が起きています。せっかく授業をするなら,「なぜ,4枚分も必要なのか?」という疑問を大切にしたいところです。出てきた結果を考察するわけです。皆さんはどうして4枚も必要なのかわかりますか?ヒントは第7回の「わざと間をあける」をご参照ください。
このように,逆転現象が起こる素材を使うことで,子供の興味関心を引き出し,さらに,「なぜそうなるのか?」といった結果を考察し、考えを深めることにつながります。
今回のスキル「逆転現象が起こる素材を使う」はいかがだったでしょうか。ご自身の学年の単元でぜひ活用してみてください。
今回のスキルにつながる内容は、授業スキルアップ研究会や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)で扱っていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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京都教育大学付属桃山小学校
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