2022.05.02
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☆今すぐ使える☆1%の努力でできる算数の授業スキル「同じものの繰り返しを見せる」(No.11)

今回紹介する算数の授業スキルは、算数の授業を得意とする先生の9割が実践しています。
しかも、とっても簡単で、今すぐ使えて、たった1%の努力でできる算数のスキルなのです。今回はそのスキルの第11弾「同じものの繰り返しを見せる」について紹介します。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児

同じものの繰り返しを見せる

まず、電卓を準備してください。そこに誕生日を打ち込みます。例えば、誕生日が6月27日だったら、627といった感じです。打ち込んだら、999で割ってみましょう(627÷999)。答えは次のようになります。0.627627627…

よく見てみると、小数点以下に続く数は627627…と同じ数値が繰り返し出てきます。これを循環小数といいます。同じ数値が続いたのはきっとたまたまなのかもしれません。他の3桁の数ではどうでしょうか。調べてみましょう。

510だったら?510÷999=0.510510510…
205だったら?205÷999=0.205205205…

3桁の数はなぜか999で割ると、循環小数になりました。でも、12月25日など4桁の場合はどうでしょうか?

1225÷999=1.226226226…

小数点以下は循環小数にはなっていますが、誕生日ではないですね。これでは、4桁になってしまう子がかわいそうです。どうしたらよいでしょうか?3桁だと999ということは…。4桁だから…。ここで閃いた方は算数のセンスがあります。そうです。9999で割るのです。試しに誕生日が4桁になる数を9999で割ってみましょう。

1225÷9999=0.122512251225…
1009÷9999=0.100910091009…

面白いですね。こういった問題では、なぜそうなるか考えていくことも大切ですが、算数の入り口として他の数値でも確かめてみるという活動を大切にしていきたいところです。不思議の世界はここでは終わりません。

それでは、5桁、6桁、1桁、2桁などの場合はどうでしょう?また、927を9999で割ったらどうなるでしょう。15を999や9999、99999で割るとどうなるでしょう。子供たちがこんなことを言ってくれると嬉しいですね。桁数が多くなる場合は、電卓を使ってもよいと思います。ぜひ試してみてください。

このように,同じものの繰り返しを見せることで,子どもは不思議がり,同じようにできるかどうか自分で試したくなります。

繰り返される不思議

今回紹介した内容は、次の単元でもできます。

  • 4年「小数のかけ算わり算」3÷9、5÷9など1桁の数を9で割る。
  • 5年「小数のかけ算わり算」0.15÷0.99など割る数の小数点以下の数9や99、999などにする。

4年「小数」は展開を変えると,面白い発見につながります。最初に1÷9から3÷9 までを全体で扱います。子どもは,「答えの小数点以下の部分の数は割られる数と同じになる。」と予想します。

1÷9=0.111111…
2÷9=0.222222…
3÷9=0.333333…

次に,子どもが見通しを持てたところで,3÷9以降の式と答えを考えさせます。子どもが発表した式は以下の通りです。

4÷9=0.444444…
5÷9=0555555…
6÷9=0.666666…
7÷9=0.777777…
8÷9=0.888888…
9÷9=1

ここで気付くことは,「0.999999…」がないということです。8÷9までは,「答えの小数点以下の部分の数は割られる数と同じになる」という考えは使えます。しかし,9÷9は0.999999…とはなりません。困っているところに衝撃的な意見が出てきます。「3÷9=0.333333…を3倍すると,0.999999…になる。」と言うのです。答えの部分を見ると,0.333333…を3倍すると,0.999999…になります。式に表すと,0.333333…×3=0.999999…となります。先生が「確かに,0.999999…になるね。」と意見を認めると,子どもたちから「0.999999…にならない。」と意見が出てきます。どういうことか尋ねると,どうやら3÷9=0.333333…の左辺を気にしているようです。このとき,左辺は3÷9を3倍することになります。あえて式に表すと以下の通りです。

3÷9×3=0.333333…×3

かけ算は順序を入れ替えることができますので,

3×3÷9=0.333333…×3
3×3÷9は1,0.333333…×3は0.999999…

これでは,1=0.999999…  になってしまいます。とても不思議ですね。これは数学的にはOKだそうですが,感覚的には「?」と思ってしまいますね。

今回のスキルにつながる内容は、授業スキルアップ研究会でも紹介しています。また、『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)も子どもたちの学びあう授業を考えていく上でヒントになることがたくさん掲載されているので、ぜひ参考にしてみてください。

神保 勇児(じんぼ ゆうじ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭


2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/

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