☆今すぐ使える☆1%の努力でできる算数の授業スキル「わざと間をあける」(No.7)
前回に引き続き、今回紹介する算数の授業スキルは、算数の授業を得意とする先生の9割が実践しています。しかも、とっても簡単で、今すぐ使えて、たった1%の努力でできる算数のスキルなのです。今回はそのスキルの第7弾「わざと間をあける」について紹介します。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
まずは円の面積について
図1を見てください。これは,正方形に内接する円の面積を求める問題です。「次の3つのうち,円の面積が一番大きいのはどれでしょう」場面をピザなど子どもの身近なものにすると面白いかもしれません。
図1は,正方形の中にそれぞれ円が1個と,4個,16個あります。正方形の1辺の長さを子どもたちに決めさせてもよいですが,24cmにしたり,分数の計算をしてもよいことにしたりするとよいでしょう。計算が楽になるからです。
この問題では,3つのうちどれが一番面積が大きいのかを予想させます。問題を解く前に、自分の立場を明らかにしておくのも主体的な学びにつながります。
計算の結果,次のようになります(今回は正方形の1辺の長さを24cmで考えています)。
円が1個:24÷2=12,12×12×3.14=452.16
円が4個:24÷4=6,6×6×3.14×4=452.16
円が16個:24÷8=3,3×3×3.14×8=452.16
答えが全て同じになってしまいました。これは偶然なのでしょうか?それとも,計算が間違っているのでしょうか?子どもたちは戸惑います。
そのうちに,「わかった!」「だからかぁ」など何かに気がつく子が出てきます。中でもとびきりなのは,「これって,計算しなくてもわかるよね!」という言葉です。もし,「計算しなくても〜」と誰も言わなかったら,「これって,1つ1つ計算するのは大変だな。どうしたら簡単に面積が同じってわかるかな?」と問うとよいでしょう。
円が1個:12×12×3.14=452.16
円が4個:6×6×3.14×4=452.16
6×6×4×3.14=452.16
6×6×2×2×3.14=452.16
6×2×6×2×3.14=452.16
12×12×3.14=452.16
円が16個:3×3×3.14×16=452.16
3×3×16×3.14=452.16
3×3×4×4×3.14=452.16
3×4×3×4×3.14=452.16
12×12×3.14=452.16
式を変形すると,全て12×12×3.14=452.16になります。
わざと間を開ける
この問題をさらによくするのが「わざと間を開ける」というスキルです。図1を見ると,2枚目と3枚目にちょっと不自然な間が空いています。実は,これはわざと間を開けているのです。図を見ていると,子どもたちは「何で間が空いているの?」と聞いてきます。もし,気付かなければ,2枚目と3枚目の間をさらに広げるとよいです。
子どもが「あれっ?」「何で?」と気付いたら,「どうしたの?」と問いかけてください。すると,子どもは「円が1個,次は縦2個横2個,次は縦4個横4個だけど,間に縦3個横3個が入るんじゃないか」と発表してくれるでしょう。まさに,順序よく並べようとしている姿です。
このように,わざと間を開けることによって,「順序よく並べる」という算数で大切な力を育てることにつながります。順序よく並べる学習は,第6学年「場合の数」で順序よく整理することにつながります。
今回のスキル「わざと間を開ける」はいかがだったでしょうか。ご自身の学年の単元でぜひ活用してみてください。
今回のスキルにつながる内容は、授業スキルアップ研究会や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)で扱っていますので、ぜひ参考にしてみてください。
※画像は筆者作成
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神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
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