1%の努力でできる算数の授業スキル(No.1)
私は朝と休日の料理担当をしていますが、ご飯を作るときに一味変えたり、ひとつまみの塩を入れたりするだけでグッと料理が美味しくなります。授業も同じです。やり方を1つ変えるだけで、子どもが前のめりになる授業をすることができます。
今回紹介するスキルは、実は算数の授業が得意な先生の9割がやっています。でも、たった1%の努力でできる算数のスキルなのです。今回はそのスキルを紹介します。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
(1)条件不足な問題を提示する

算数6年「円の面積」の複合図形の求積問題
導入でいまひとつ子どもが乗ってこない。そんな授業って時々ありますよね。私もそうです。そんなとき、子どもの名前を問題の中に入れたり、問題に関係するような面白い話をしたりすることもあるでしょう。でも、これでは、子どもは問題を「自分が見出した問題」として捉えておらず、受け身になってしまいます。問題と出会ったときの,子どもたちの「?」を生み出すしかけをつくって,子どもたちの「えっ?」という声を聞きたいですね。
そこで,こんな方法はいかがでしょうか?
「条件不足な問題を提示する」
算数6年「円の面積」の複合図形の求積問題を例に説明します。ここはあえていきなり問題を出して,「さぁ,今日の問題です。始めましょう」と言ってみましょう。子どもたちは,「先生,これじゃあ,解けません」と言います。条件不足な問題を出すと,問題が解けないからです。問題を解くために,子どもたちは必要な言葉や数値が何か気になります。おそらく,子どもたちの頭の中ではもやもやしたような感覚になっていると思います。この感覚を持つ子はとても賢いなと思います。そこで,
「じゃあ、何がわかると問題が解けそうかな?」
と言って,問題を解決に必要な条件を子どもから引き出してください。ここで大事なことは、どこの長さがわかれば問題が解けるかを子どもたちに見つけさせることです。きっと、正方形の1辺の長さを子どもたちは聞いてくるでしょう。
(2)あえて数値を設定せず,子どもに決めさせる
子どもが数値を欲しているときに,あえて数値を設定しない方法もあります。そんなときは、次のように言ってみましょう。
「何cmか自分で決めていいよ」
すると,子どもたちは「えっ」と戸惑いながらも,1,2,3,4,5,10 など数を言ってきます。ひょっとしたら,100 なんてのもあるかもしれません。子どもたちに聞いて、長さを統一しておくとよいでしょう。子どもたちは自分の設定した数値で問題を解いていきます。でも、数値は自分たちで決めたものですから、子どもは自分の答えが合っているかどうか不安になってきます。そこで、
「自分と同じ式や答えの人を探しておいで。何人いるかな?」
と言って、同じ考えの子を探す時間をとりしょう。その後、自分と同じ考えや違う考えの子どもがいたかどうかを聞きます。このようにあえて数値を設定しないことで,子どもが前のめりになり、互いに学び合う授業をすることができます。
今回は、正方形の1辺の長さをクラスで統一しましたが、もし統一しなかったらどのような展開になるでしょう。この方法については、拙著『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書出版)にも書いてありますので、ぜひご覧ください。

神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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