☆今すぐ使える☆1%の努力でできる算数の授業スキル「わざと集める」(No.5)
前回に引き続き、今回紹介する算数の授業スキルは、算数の授業を得意とする先生の9割が実践しています。
しかも、とっても簡単で、今すぐ使えて、たった1%の努力でできる算数のスキルなのです。今回はそのスキルの第5弾「わざと集める」について紹介します。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
最初は離れているものを見せる
今回の「わざと集める」は一体どんな時に使うのでしょうか?
例えば「分けて数えると数えやすい」という考えを子どもたちから引き出すときに使います。
図の絵を見てください。
これをパッと見ると、すぐに何個かわかりますね。
9個です。
でも、なぜわかったのでしょうか。
これは、No.3「あえてリズムを崩して法則に気付かせる」で紹介したことに関連します(「?」と思った方は、下にリンクを貼ったので、そこから見てください)。
わざと集める
次の図を見てみましょう。う〜ん。パッと見ても、何だかとても数えにくいですね。でも、9個です。さっきの図はパッと見て個とわかる。でも、今度の図はわかりにくい。なぜこんな違いが出たのでしょうか。それは、2回目の図の方が全部の⚫️が真ん中に集まっているからです。わざと集めたのです。離れている図と見比べながら、子どもたちに分けて数えると数えやすいということに気付かせていきます。
授業ではこんな展開になります。
教師:(3個ずつ離れた図を確認した後に、わざと集めた図を見せる)
児童:えー!!
児童:わからない!もっとゆっくり見せて。
教師:じゃあ、次はゆっくり見せるよ。よーく見てね。(3秒見せる)
児童:わかった。9個だ。
児童:もうちょっと待って。あっ。9個だ。
教師:何でそんなに時間がかかるの?
児童:だって、今までと違うから。
児童:数えにくいから。
教師:さっきとどこが違うの?
児童:さっきは、3個がみんな離れてたけど、今のは集まってたから時間がかかった。
児童:集まってると数えにくい!
教師:集まってると数えにくいんだったら、どうしたらいい?
児童:離れてたら数えやすい。
児童:さっきみたいに3個、3個、3個にする。
教師:数えにくいから、3個、3個、3個に分けるんだね。
「わざと集める」が潜んでいる学習
「わざと集める」が潜んでいる学習は意外とあります。ここでは、3つの例を紹介します。
1つ目は、2年生の「1000までの数」の学習です。導入でたくさん集めた状態をわざと子どもたちに見せます。すると、子どもたちは「グループごとに手分けして数えたい。」と言うでしょう。また、数えているときも、子どもたちは10ずつまとまりをつくったり、100ずつまとまりをつくったりします。このように、わざと集めることで、子どもたちはグループで分けて数え、10ずつや100ずつに分けて数えるのです。
2つ目は、4年生の「面積」や6年生の「体積」の学習で、L字型の面積(複合図形の面積)を求める問題です。これはわざとL字型にしています。多くの子どもたちは、長方形や正方形に分けて面積を求めます。なぜかというと、長方形や正方形に分けると既習である面積の公式が使えるからです。
3つ目は、以下のような表やグラフを扱う場面です。
・1年生「かずしらべ」で絵グラフを使う場面
・2年生「表とグラフ」で⚫️を使ったグラフを扱う場面
・3年生「表とグラフ」で棒グラフを扱う場面
・6年生「資料の調べ方」で度数分布表やヒストグラム(柱状グラフ)を扱う場面
例えば、1年生の絵グラフです。教科書ではたくさん採れた果物をわざと1箇所に集めています。なぜ1か所に集めたのかというと、理由があります。それは、子どもたちはどれが多いかを知るために、りんご、バナナなどの果物の絵を果物の種類ごとに分けようとするからです。そして、分けることで数えやすくなるからです。
このように、「わざと集める」ことによって、「分けて考える」ようにさせることをねらっているのです。
今回のスキルに関連する内容は、授業スキルアップ研究会や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)でも扱っていますので、参考にしてみてください。
※画像は筆者作成
神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
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