2025.01.08
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日常生活に生かせる力を育む算数指導「概数」第4学年(前編)

国際数学・理科教育調査TIMSS2019によれば、小・中学校において、算数・数学の「勉強は楽しい」「得意だ」と答えた児童生徒の割合は増加していますが、日本は国際平均を下回っています。また、中学校において、「数学を勉強すると、日常生活に役立つ」「数学を使うことが含まれる職業につきたい」と答えた生徒の割合は国際平均より下回っています。

そこで、 文部科学省は「日常生活や社会の事象、数学の事象から問題を見出し主体的に取り組む数学的活動を充実させること」などを施策として挙げています。今回は、第4学年の「概数」を例に、日常生活に生かせる力を育む算数指導について考えていきたいと思います。

東京都品川区立学校 平野 正隆

はじめに

日常の事象を数理的に捉え、見通しをもち筋道を立てて考察する力を育成することは、算数・数学教育の大きなねらいのひとつです。

「日常の事象」とは、算数で扱われるような様々な内容のことを指します。また、「数理的に捉える」とは、事象から数値や論理性などの数学的概念を見出し、処理できるようにすることです。つまり、日常生活や社会の出来事など様々な場面から、数学的に処理すべき内容を見出せるようになることを目指しています。

「見通しをもつ」とは、既習を生かして見積もりを立てたり、問題解決の方法を見出したりすることです。「筋道を立てて考察する」とは、明確な根拠をもって論理的に考え、それを書き表したり、説明したりすることです。そうして、性質・法則を発見したり、確かめたり、説明したりする資質・能力の育成を目指しています。

本実践「概数」は、まさに日常生活と関連の深い単元です。普段何気なく使っている「おおよその数」を、「以上」「以下」「未満」「四捨五入」といった言葉を用いながら捉え直します。また、目的に応じた概数の扱い方や、概数で表す良さを実感させていきます。

概数で表す良さ

まずは、「数の大きさが捉えやすくなる」ことです。買い物の際に998円を約1000円とみたり、観客数1204人を約1200人とみたりすることで、その大きさを捉えやすくします。

次に、「物事の判断や処理が容易になる」ことです。500gで998円の肉と、200gで358円の肉はどっちが安いのかを比較したり、128円のノートと605円のシャープペンシルと253円の下敷きを買う際に1000円で足りるのかを考えたりする際、概数を使えば簡単に考えることができます。

さらに、「見通しを立てやすくなる」ことです。実際の数が分からない場合、全校児童数を1クラス当たり約30人として、30人×学級数で求め、見当をつけることができます。

本実践では、こうした概数で表す良さを実感できるようにしていきます。

概数が用いられる場合

① 詳しい数値が分かっていても、目的に応じて数を丸めて表記する場合

数のおよその大きさを捉えたり、計算による処理が必要だったりする場合に概数にすることがあります。1000円で買い物する場合に足りるのかなどといった計算の見積もりを考えるのも、これにあたります。

② 棒の長さなどで数のおよその大きさを表す場合

グラフからデータ全体の傾向や特徴を捉える際、数値が大きければ大きいほど概数で表したグラフでもそれが可能であることが分かります。例えば、東京都の人口の移り変わりをグラフに表すのも、これにあたります。

③真の値を把握することが難しく、概数で代用する場合

野生生物の個体数や一定の地域に集まった人の数など、実際の数値を把握することができないとき、サンプリング調査などから概数で代用することがあります。「ハロウィーンの渋谷にピーク時は4万人以上が集まった」などがこれにあたります。

「目的に応じて」概数を用いる

学習指導要領解説編の概数に関する記述には、「目的に応じて」という言葉が目立ちます。これは、「なぜ概数に表すのかを理解して」という意味です。

まずは、先述した概数で表すよさや用いられる場合①〜③を実感を伴って理解しておくことが大切です。そのうえで、ねらいに応じてどの程度の詳しさの概数にするかを判断し、切り上げや切り捨てを用いて大きく見積もったり小さく見積もったりします。

例えば、1000円で548円、250円、248円のものを買うときにお金が足りるかどうかを考える際、十の位を四捨五入して計算しては求められません。この場合は、十の位を切り上げなくてはいけないと判断します。「お金が足りるかどうかを調べるため」が目的になります。

次回は、後編として実践を紹介させていただきます。

平野 正隆(ひらの まさたか)

東京都品川区立学校


研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。

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