日常生活に生かせる力を育む算数指導「分数のたし算・ひき算」(第5学年)
国際数学・理科教育調査TIMSS2019によれば、小・中学校において、算数・数学の「勉強は楽しい」「得意だ」と答えた児童生徒の割合は増加していますが、日本は国際平均より下回っています。また、中学校において、「数学を勉強すると、日常生活に役立つ」「数学を使うことが含まれる職業につきたい」と答えた生徒の割合は、国際平均より下回っています。
そこで、 文部科学省は「日常生活や社会の事象、数学の事象から問題を見出し主体的に取り組む数学的活動を充実させること」などを施策として挙げています。今回は、第5学年の「分数のたし算・ひき算」の実践をもとに、日常生活に生かせる力を育む算数指導について考えていきたいと思います。
東京都品川区立学校 平野 正隆
はじめに
算数を苦手とする児童のほとんどが、算数で学習する場面を具体的にイメージできなかったり、日常生活のなかで算数を活用できる場面にうまく生かせなかったりします。
本実践の5年生「分数のたし算・ひき算」では、通分や約分、帯分数・仮分数など、さまざまな場面でつまずきが見られました。この「つまずき」をもとに、日常生活に生かせる力の育成について考察します。
通分
1/2+1/3=2/5
計算をただの数字の操作と考えれば、多くの子がする過ちです。
子どもたちの話し合いでは、
「分母同士は足しちゃだめだよ」
「でも、それは分母が同じときでしょ」
「分母がちがうときは、たすんじゃないかな」
といったように、計算のきまりがどうなのかという話ばかりで、具体的なイメージをしようとしていません。
だから、正解へ辿り着かず、これが合っているのか判断すらできないのです。
続いて、下のような図を出して「みんなが出した答え2/5は、こういうことだね。なにか気付くことはない?」と問うと、
「たし算してるのに、増えてない」
「分母をたしちゃうとやっぱりだめなんじゃないかな」
「分母を同じ数にしてから計算すればいいかもしれない」
こうして正しい計算方法への第一歩を踏み出せました。
約分
分数の約分について学習していて、「12÷2」といった基礎的な計算を解くときに「にいちがに、ににんがし、にさんが…」と、九九を用いて考えていました。
その児童に「12個のお菓子を2人で同じ数ずつ分けると?」と問うと、「6個」と即答しました。
具体的な場面をイメージすることで、計算がただの作業ではなくなり、意味のあるものへと変化します。そして、それが思考の手助けになります。
帯分数のたし算・ひき算
ひき算を例に、子どもたちがつまずきやすい部分を分析してみます。
①分数を通分します。12と3の最小公倍数は12
②分子を引き算しようとします。5−8=?
ここで「帯分数を仮分数にすればいい」「全て仮分数にしなくても、整数を1だけ減らして分数部分に足せばいい」などの意見が出ます。
③整数部分の一部または全部を減らして、分数部分に加える。3と5/12→2と17/12
④改めて整数部分と分数部分をひき算する。
算数を苦手としている子は、③の作業ができないのです。多くの子は、「前にやった覚えがある」「何かをかけて、どっかにたす」というように、数字の操作の記憶をたどろうとします。「3と5/12→2と17/12」では、なぜ整数部分を1減らすと分子が12増えるのかを具体物を使うなどして理解することが大切です。
日常生活に生かせる力を育む算数指導
本実践を通して感じたのは、数式から具体的な場面をイメージすることが課題だということです。算数で学んだことを生かせるようにするには、日常生活のなかで算数が使える場面を考えたり、算数の学習のなかで日常生活をイメージしたりすることは欠かせません。低学年のときから継続して、式から具体的な場面をイメージする「問題づくり」をしたり、図を用いた「計算の意味指導」を徹底したりすることが、算数の活用力をのばしていくと考えます。
平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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