2024.10.03
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愉しい授業を創る 第6学年算数「円の面積はどうやって求めるの?」編 

「教師をやっていて、愉しいのは、どんなとき?」と問われたらどう答えますか?
「授業の愉しさって何だと思いますか?」そして、「愉しめていますか?」
私たち教員の生業は、何といっても「授業」です。
時代は移ろい、教員の働き方が変わっても学習指導要領が改訂されても、変わらず教師が大切にしたいのは、子どもと共に創る授業であってほしいと思うのです。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

教師をやっていて、愉しいのは?

「教師をしていて、愉しいって感じるのは、どんなときですか?」
と、問われたら、あなたは、どのように答えるでしょうか。
子どもと一緒に遊んでいるとき?学校行事?給食の時間?

ある調査によると、
「児童・生徒との思い出で先生の心に残っている学校生活は?」
という問いに対して、こんな回答があったというのです。
一番多かったのは、「修学旅行」、次いで「卒業式」「普段の授業」「体育祭」と続くのだそうです。
これは2020年に、全国小中高の教員300人が回答した結果をまとめたものです。
皆さんは、この結果をどのように受け止めますか?

少し前のことになりますが、「振り返り」に値する中味が大事 子どもにとっての中味のある授業(2)(2024.01.31)で紹介しましたように、大学生に振り返ってもらっても、授業は一番愉しかった思い出にはならないのですね。

子どもに言ってほしい言葉、「一番愉しかったのが、授業!」

一日の学校生活を振り返っても、一番多くの時間を費やしているのは「授業」なんですから「授業が一番愉しい」と、子どもたちには言ってもらいたいと思います。
それには、まず先生が授業が愉しいと感じていなくちゃね。
そんなふうに私は、正直思います。

「授業って、愉しいな」

そこで、今回から授業って愉しいなって、私が感じたエピソードを紹介していきたいと思います。
授業の愉しさを感じるときってどんなときなのか?
授業の具体を、子どもたちの姿でつれづれに綴ってみようと思います。
どれだけお伝えできるか、分かりません。
あんまり先のことも考えずに、そんなテーマで進めたいと思います。
ただ、もしかしたら、すぐに終了してしまうのかもしれません。
でも、そこは、「つれづれ日誌」。
つれづれなるままに綴っていくのですから、どうかお許しください。

小学校での飛び入り授業で

さて、2024年9月。
あっという間に過ぎ去って、10月を迎え、秋らしい日が続いています。
過ぎ去ってしまった9月。
大学はまだ休みが続いておりましたので、私は静岡県磐田市立豊田東小学校で算数の授業を飛び入りでさせていただいておりました。
6年生2クラス、単元は「円の面積はどうやって求めるの?(円の面積)」(8時間扱い)でした。
この子どもたちと一緒に授業を創っていく中で、面白さや愉しさを感じた場面は幾度もあったのですが、その1シーンをお伝えできたらと思います。

「もっと正確に求めるには、どうしたらよいか。」

本時の問題とめあて

単元に入って、2時間目の授業。
前時に円の面積が「半径×半径×2」よりも大きく、「半径×半径×4」よりも小さいという見当をつけることができました。
しかし、それでは、円の面積を求めたことになりません。
そこで、この時間は、「もっと正確に求めるには、どうしたらよいか」という「めあて」で学習を進めることになりました。

どんなふうに求めるのか?

授業で学んだ求め方

さて、どのように求めていけばよいか。
授業は、いずれの学級も、どの時間も、基本4人グループで終始学んでいます。
分からないことがあれば、すぐに聞けばよいし、一緒に解決してもよいことを授業前に確かめています。
それでも、どのように解いていけばよいかは、全体で見通しを持つようにしています。
すると、2つの考えが出されました。
一つは、前時、円の中にひし形を作って見当を付けたのだから、もっと角を多くすればよい、つまり、6角形や8角形を作って、その面積を求めればよいというものです①。
もう一つは、方眼紙に書いてあるのだから、マス目を数えればよいというものです②。
(実は「振り返り」では、4年生の面積の学習が生かされたという記述も見られました。子どもたちは、上手に学んだことをつなげながら学んでいるようで、うれしくなりました。)
そして、図に示したような結果を導いていきました。

授業の「振り返り」で、驚き!

振り返りで子どもが考える求め方

この授業の振り返りです。
一人一人の子どもたちは、どんなことを学び、どんなことを考えていたのでしょう。
授業後、一人になってノートを一冊一冊開き、振り返りを読んでいきます。
そこで、Aさんのこんな記述が目に入ります。
「八角形の面積をもとにして考えることで完璧ではないけれど、前回よりも正確に求めることができる。八角形を書いて、余った部分に三角形を書いて、(青にぬった部分)その三角形の面積を求めて、また余った部分に三角形を書いて面積を求めることを繰り返せば、もっと正確になるのかなと思いました」

最初は、何のことを言っているのか、分かりませんでしたが、図を見ていくとよく分かりました③。
そして、思わず「なるほど!」と納得しました。

また、続けて読んでいくと、BさんやCさんの文章に出会いました。
「八角形をもとに円の面積を求めると、三角形が8つできる。その三角形の底辺は10cmで、高さは7cmだったので、10×7÷2をやる。35cm2になるが、8個三角形があるので、35×8=280cm2。280cm2より大きいことが分かった。もっと細かくして計算したら、もっと正確だけど、大変だと思った」

「円の面積を八角形にして求めると、より正確に求められた。八角形でより正確に求められたから、8,12,……ってやっていくと、より正確に求められるのかな?っと思った」

つまり、もっと角を多くしていくという考えですね。
例えば、④のように12角形にすれば、より正確な面積が求められるというのです。
しかし、それは簡単かというと、大変だというわけです。
この考えにも「なるほど!」と、納得やら驚きやら「子どもってしっかり考えてるなあ」と、子どもの考えに感心させられるやら、もっとしっかり授業を考えなくちゃと思わされるやら。

授業の面白さ、愉しさをあらためて感じたのでした。

次の授業で、二人の「振り返り」を紹介したのは、言うまでもありません。

むすびに

授業を一生懸命に考えたつもりでも、子どもは、教師を超えていく。
そこに、「授業の愉しさ」が一つあるのではないかと思います。

この時間の振り返りには、以下のようなものもありました。

〇 「求め方で形を変えるというのは、正多角形に変えるのではなく、
もっと細かい別の図形で求めたい」
〇 「約308ぐらいということが分かった。どんどん近づいていけた。
たくさんの考え方を使って考えを深めれた。次は、しっかりと求めたい」

「数学的な見方・考え方」で言うならば、発展的思考や統合的な思考。
そうした一言で済んでしまうのかもしれませんが、その言葉では伝わらない、子どもの考えの「面白さ」が感じられる場面でした。

子どもと共に学ぶ、よさ、愉しさを実感した一時間でした。

いかがでしょう。

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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