2024.10.24
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愉しい授業を創る 教師自身も楽しめる編

授業を振り返ってみて、「よかった」という授業はそんなに多くはないのかもしれません。
でも、教師が「よかったなあ」と思えない授業だったら、子どもは、なおのこと「愉しんでいない」と思うのです。
教師と子どもが共に、愉しめる授業を一日の中に一つでも創っていきたいと思います。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

初任者の頃の実践記録から「相談授業」を振り返る

勤務校では、若手教員は、学期に2回「相談授業」を実施することとなっていました。この授業は、校内に開かれた公開授業で、教頭先生が、1時間授業を参観してくれる授業です。
放課後、職員室で教頭先生から、ご指導いただきます。教頭先生は、授業後、B4版の評価用紙1枚に授業評価をしてくれ、コメントを記してくれ、その用紙が私にとっては、財産となりました。
ちなみにベテラン教員は、学期に1回「示範授業」を行い、公開してくれます。当時、どの授業を参観しても勉強になることばかりで、時間がある限り、参観をさせてもらっていました。
この日の相談授業は、3年算数科「しきのみかた」でした。

私の実践記録より

19XX年10月13日(月)

自分の発問の仕方、めあての出し方、その他細かな点については、まだまだというところがあったが、何か授業が終わっていい気持ちだった。むしろ、今日はよかったなあと思った。
その原因は何か。それは、子どもが、それもほとんど全員が発表できたのである。
しかも、内容のある授業ができたのである。いつも発表で、声の小さな子が元気に発表できた。
遠慮がちで理解はできているものの手を挙げられない子が、思い切って手を挙げた。全員が一丸となって授業に臨んだ。
まさに、この表現がピッタリあてはまるのではないか、という授業であった。この一時間に限らず、10月に入ってから、全体的によく発表ができるようになった。
僕自身、そんな授業の後では、とても気分がよい。一日が終わっても、すごく充実した気分になるのは不思議である。

教頭先生の評価では、△が一つもなかったのが、うれしかった。一学期は、△が2つ3つと、ついただろうか。
自分でも「ここができなかったな」という点に必ず△がついたものだ。その△がなかったことが、一つの大きな喜びであった。
意見・感想の欄には、僕自身の反省点が、そのままに書かれていた。

反省の第一点は、自ら学び取る姿勢をつくる場面、そうした授業の組み立てができなかった。要するに、与える授業という感じになってしまったということである。
もっと子どもたちの考えを前面に押し出し、まとめる授業構成をとっていきたい。
例えば、めあては、完全に「……しよう」と提示し、与えてしまうものであったが、やはり「今日は、どんなめあてを持ったら…」というように、子どもに考えさせていきたい。これが大きな反省点である。
次に、作業や思考の遅い子どもに対する配慮である。速い子どもは、時間を持て余す。遅い子どもは、遅々として進まない。
今日は、余裕を持ってできたので、よかったが…。これも一つの大きな課題と言える。
(中略)

何か今日の相談授業で、11月に行う研究授業に明るいきざしが見えてきたような気がする。

“子どもが生きれば、授業も生きる”

今、この授業に思うこと

(言葉だけは)何か、いい感じの言葉でこの日の実践記録を結んでいました。
果たしてどのような授業であったのか、遠い昔のことで定かではありませんが、そんなに大きくずれたことを言ってはいないなとノートを読み返しながら、正直ホッとしています。
でも、今の私だったら、こんなことを言うのかもしれません。
「子どもが発表することが、よい授業とは限らないよ。むしろ、子どもがどんなふうに発表を聴いているかに着目していこうよ」
「子どもの活動に違いがあるのは、当然のことだから、そもそも『課題』そのものや『解決の在り方(形態や方法等)』には、問題はなかったの?」

そんなことを当時の私に言うかもしれません。

指導教官からの指導・助言

指導くださっている先生は、この日のコメントとして、次のように綴ってくれました。
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喜ぶべきことですね。先生の勝負は、授業です
いくら課外活動の指導がよくても授業に対する積極的、研究的な取組がなければ、成果は期待できませんから。しかし、まだまだという点を常に忘れず、地道にしかも確実にやっていきたいものです。
このよいあらわれは、学級づくり、授業の態度づくり、人間関係など周辺の指導が身を結んだ結果と言えます。今後も大いに授業を、子どもの実態と教材の特性に照らし、実践していこう。
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むすびに

図 よい体育授業の二重構造

このコメントに対して、当時の私が、何を思ったのかも分かりません。が、今の私は、次の2つのことを考えました。

一つ目は、今の授業に納得するのではなく、さらに前へ前へと進んでいくこと。そういう構えを持つこと、そして、子どもを主役として授業づくりを進めることが、子どもが愉しめる授業づくりへと結びついていくのではないかということです。

そして、もう一つは、ここに示したように、授業は、内容の充実だけでなく(内容的条件)、周辺の指導と言われる基礎的条件、この双方を創っていくことが大切だということです。
この図は、体育科教育法で学生の指導に示しているものですが、体育科に限らず、どの教科の授業でも大事にしたい。そう思っています。

今回は、愉しい授業の子どもの姿や授業の具体がお届けできませんでしたが、それを創っていくための必要条件みたいなことを考え、綴ってみました。
いかがでしょう。

参考資料
  • 『新版体育科教育学入門』高橋健夫・岡出美則他,大修館書店,2010

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

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