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2007年8月10日
14歳の挑戦とインターンシップ
富山県立盲学校 教諭 岩本昌明
富山県は、全国に先駆けて県内全ての中学生に就労体験を実施している。中学2年生、つまり主として14歳の時に行うので、『14歳の挑戦』と呼んでいる。県下7,000人近くの生徒が、主にそれぞれの中学校の校区内にある事業所に行き、一週間程度の職場体験をしている。実施時期は中学校や地域の実情により様々である。職種は、ガソリンスタンドもあれば、商店のレジや商品管理から介護施設や保育園など、本当に多種様々である。
この事業が、実は文科省のお目にとまり、確か全国的にも就労体験を入れるように方針が変えられることになったはずである。この事業に限ったことではないが、やはり功罪や問題点も見え隠れしており、現場では非常な努力と苦労が毎年積み重ねられている。一方、生徒にとっては、確かに感動やら出会いなど、この事業の影響力等、学校内での教育活動を越えるものもある。
高等学校でも中学生の時に体験したのであるが、新たに就労体験を本校では実施している。これを、「インターンシップ」と名付けている。英語のタイトルではピントこない生徒が多いので、毎年、「14歳の挑戦」の高校版だと言って、生徒・保護者に説明すると、理解されやすい。
基本的には、職業科を持つ高校が、進路意識の高揚と就労体験により社会性を体験する等の目的で、本県では高校でもほとんどの学校で取り入れられてきている。最近は、ボランティア活動や福祉活動などの要素も入れて普通科でも、似たような形態が採用されてきているようだ。 私は、単に就労体験という表面的な効果や目的で、この事業を終わりにしてはもったいないと考えている。
インターンシップでお世話になっている事業所を、専門教科の先生が巡視を兼ねて回っておられる。そこで、生徒が実際の「仕事」の大変さを、体験するのである。実は私たち教師にとっても、事業所の管理職なり責任を任された方とお会いする貴重な体験の場でもあるのです。
所詮教員というのは、狭い学校という比較的馴れ合い所帯の中で、生徒を相手に仕事をしている。現実に一般社会人と触れ合うのは、せめて言えるなら保護者会やPTAの会合くらいで、非常に閉塞的な世界の一つであると言えるかもしれない。
だから、生徒ではないが、事業所巡りをして、店長や社長さんや事業所の長またはそれに準ずる方とお話をすることに、実は言いようのない緊張を強いられることがある。学校では、当たり前のマナーが、実は一般社会では、「おかしいぞ、変だぞ」と誤解と捕られないようにしなければならないのである。生徒がお世話になっているのだから、なおさらである。
生徒がお世話になっている事業主の方と、限られた時間であるが、雑談も含めてお話を伺うことができるのは、役得であるとも考えている。簡単に挨拶程度で巡視をしておしまいにするのでなく、じっくり生徒がその日どのような言動で過ごしたかの所作や、事業所の方の方針なり考えに触れる機会を大切にしたいと考えている。
先日ある方と30分近く話を伺う機会を得た。その方は、このような就労体験が大切であること。どんどん受け入れをしたいと好意的に話してくださった。このような就労体験を通して、マナーや仕事の大切さや仕事が生活とどのように繋がっているか実体験ができることは、現在求められていると強調されていた。それ以上にこの事業の効果は、実は、その方によると、今まで道ですれ違っていても、知らなかった近所の子どもたちが、実は「インターンシップ」や「14歳の挑戦」で顔見知りになることが多いとのこと。地域と学校と事業所との三位一体観が出てきたということである。
隣近所が比較的親密と感じていた町村であっても、最近は全く「隣は何する人ぞ」と言う現状であることも、その方と話をして分かってきた。その事業所の方からすると、親の名前や顔は見知っているが、その子どもたちは知らないままであることが多く、このような「インターンシップ」や「14歳の挑戦」で、「○○さんちの僕か。△△さんちのお嬢さんか。大きくなったね。お父さんは元気け(元気ですかの富山弁の語尾)」などの、仕事や作業を通して、会話が繋がることもあるようだ。大げさになるが、地域再生のために貢献しているとも言えるのかもしれない。
生徒は逞しいものである。お客さんとの会話もまろやかで、テンポよく愛想も良い。生徒等は、学校だと同じ年齢で気心の知れた者同士で済む付き合いから、その事業所ごとに異なる世代や年齢の方との交流や出会いがある。また、お客さんと接している場合は、小さな子どもたちから年配のお年寄りまで客層が様々であることを実体験することになる。室内で空調の利いたところで仕事をしている生徒や、今年のように暑い中でも、外に立って呼び込みをしなければならない生徒らもいた。それぞれが与えられた環境と条件の中で頑張っている姿に、学校で見ることのできない感動も味わってきた。
私たち学校側としては、事業所さんからの評価は、励みになったり、落胆したりと諸刃の剣の状態である。嬉しい方としては、これを2年次に実施しているのであるが、事業所から、「来年就職を希望しているのであれば、是非うちに来てもらえないだろうか」や「昨年来てくれた□□君を是非、うちの会社にお願いできないないだろうか。」と、インターンシップ中に内々定のような感触を頂けることです。
ただ、そのような生徒は、インターンシップ先に限らず、他の面でも、引き手も数多になることが多いのです。これに加えて、学校での勉強なり机上の課題は余りぱっとしない、AさんやB君が、お店へ伺うと、嬉々として明るく立ち振る舞っている姿を見ると、驚きとこの事業が生徒の違った良い面を発掘するきっかけ作りにもなり、大事にしたいと思います。
生徒だけでなく私たち教師も、様々な事に忙殺され、追い回されていると批判的・否定的に見るだけでなく、「インターンシップ」などのように、人と人、仕事と人などを通して、今目の前に与えられた不思議な「縁」を大事にしていきたいと思っています。
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