2024.04.22
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見通しを持ってプロジェクトを主体的に進める(前編) 京都市立待鳳小学校「総合的な学習の時間」授業レポート

総合的な学習の時間は、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、教科横断的・総合的に学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしている。では実際に、どのような学習を行っているのか。

今回は、2023年11月に開催された全国小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会会場校の1つとして、学校全体で研究を推進し、全クラスで公開授業を行った京都市立待鳳小学校の6年生の授業を取材した。

単元「エシカル(倫理的)でスマイル生活」について

京都府は2017年に消費者団体、事業者団体などと「京都エシカル消費推進ネットワーク」を結成、また、京都市は2021年に京都生協と「『エシカル消費』普及促進に係る連携に関する協定」を締結するなど、エシカル消費普及の取組を行っている。

単元「エシカルでスマイル生活」は総時間35時間の大単元で、「自分たちの消費生活とその裏に潜む問題と、エシカルな消費生活支援に携わる人々の熱意」を探究課題として、エシカル消費に対する知識を深め、その重要性を感じるとともに、自分たちの消費生活の裏に潜む目に見えないものを見ようとする目や、広い視野を育てることを目指す。

単元中に「発見」、「追究」、「提案」、「熟成」、「表現」の5つの小単元を含み、順を追って課題に取り組むことで、自分の考えをつくり、その考えを練り上げる思考能力も養う。

各小単元の課題

発見(3H):自分たちの消費生活は、社会にどのような影響を及ぼしているだろう
追究(6H):エシカル消費とは、どのような取り組みだろう
提案(11H):どのようにして「エシカルでスマイルプロジェクト」を提案すればよいだろう
熟成(9H):プロジェクトをよりよくするためには、どうしたらよいのだろう ★本時
表現(6H):「エシカルでスマイルプロジェクト」を実践しよう

これまでの授業で、児童たちは、エシカル消費の必要性に気づくとともに、世間での認知度の低さを知った。そこで、次のプロジェクトを立ち上げ、具体的な活動のアイデアを出し合ってきた。

  1. スーパーコラボ:スーパーにブースを出し、ポップやチラシなどでエシカル消費の良さを紹介する。
  2. エシカルPR隊①:スーパーでクリアファイルを配って、エシカル消費を社会に広める。
  3. エシカルPR隊②:校内で保護者や他の学年の子どもたちに、エシカル消費についてプレゼンしたり、チラシを配ったりする。
  4. 待鳳フェアトレード:フェアトレード商品(フィリピンで作られた雑貨)を扱うNPO法人と連携して、翌週の参観日に来校した保護者や教員にフェアトレード商品を販売する。

前時に自分たちのプロジェクトをエシカル消費に詳しい専門家に見てもらい、アドバイスをもらった。プロジェクトをよりよいものにするために、一人一人が課題を考え、根拠を持ってグループで話し合いができるように準備することが宿題になっていた。

授業概要

学年:小学6年生(1・2組合同)
教科・単元:総合的な学習の時間「エシカルでスマイル生活」(28/35)
授業者:1組 中尾初葉先生、2組 阪本浩太先生
使用教材・教具:ホワイトボード、付箋、ワークシート

活動の見通しを確認

28時間目となる本時の授業冒頭では、今日の課題と学習の流れについてクラス全員で確認を行った。

阪本先生「今日の課題はなんでしたか?」
児童「自分たちのプロジェクトをよりよくするためにどうしたらよいのか話し合う」
阪本先生「課題のために、今日は何するんだっけ?」
児童「一人一人で考えた課題について、グループで話し合う」
阪本先生「では、グループで話し合って課題に対して解決策が決まったあとは、どうする?」

答えに窮する児童に対し「5年生の時にやったこれが有効やと思うんやけど、みんなどう思う?」と、阪本先生は、授業後の日にちと学校行事を記した計画表を貼り出した。

児童「カレンダーや!」
阪本先生「そう。図工展や参観で企画をやりたいというグループもあるやん。これ見るともう日にちがないよね。ということは、話し合いだけじゃなく、計画も立てていった方がいいよな」
児童「ほんまや」

このようにして、阪本先生は児童にプロジェクト発表までの時間がないことを気づかせ、今日の授業では、話し合いの先まで進む必要性があることを示唆した。

思考ツールに整理しながら、解決策を話し合う

1組2組混合の5~6人のグループに分かれた児童たちは、ピラミッドチャートや座標軸などの思考ツールを使い、課題や解決策を書いた付箋をホワイトボードに貼って整理していった。

「うちらはやることが多いから、優先順位を決めた方がいいと思う」
「じゃあ、まずやることを書き出していこう」
と、順調に話し合いが進むグループもあれば、情報の整理がうまくいかず、付箋を何度も貼り直し悩むグループも見られた。

話し合いが難航しているグループに対して「まずは司会する人を決めようか」「ここは2つの課題があるからホワイトボード2枚使った方がいいな」など、阪本先生がアドバイスしていく。

中には、これまで用意してきたプレゼン資料をやめて、新たにチラシづくりを始めようとするグループもあった。

阪本先生「ほんまに大丈夫? 計画表を見ればわかるけどもう時間ないで。今からチラシづくりして間に合う?」
児童「やっぱり時間が足りないから無理やで」「いや、プレゼンの資料を使いながら分担したらいけるって」

どのグループも熱心で真剣だ。

ゴールから逆算して計画表をつくる

※取材日は2/14(水)

課題や解決策を整理できたグループは、プロジェクト計画表に今後の活動予定を入れていく。

ハンコ、ポスター、ポップ、チラシ、動画などの制作開始日や制作期間を、グループで話し合いながら決めていった。

作成枚数の多いクリアファイル(絵を描く)と同時進行でポスターの制作を進める予定を立てたり、本番前に前日準備を設けたりと、わずかな時間を有効活用するために、工夫して見通しを立てている様子が伺えた。

振り返り

授業の最後は、今日の話し合いで決まったことをワークシートに記入する。

ある児童の振り返りでは「あと3日しかないので1分でも時間があったらやりたいし、この3日、鬼のように頑張って、本番エシカルを知ってもらえるように頑張りたいです」と、発表までの準備時間の少なさを実感し、成功に向けて精一杯努力する決意が書かれていた。

後編では、単元開発者で研究主任の岩永祐輔先生と、授業者の阪本浩太先生のインタビューを紹介する。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

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