2024.04.23
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手伝い方を示すこと

寡黙なリーダーにも惹かれるけれど。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

どうも、今村です。
本年度も、引き続き執筆をさせていただけることになりました。自分の拙文を読んでいただける場所があること、学びの場.comの方々にも、読者の皆様にも感謝しております。つれづれ日誌を書かせていただくことを通して、様々な出逢いにも恵まれました。有難いことです。これからもこの場で自分の言葉に向き合って参ります。

本年度は6年生を担任させていただくことになりました。
昨年度、4年生で担任させていただいた子たちも5年生になり、5、6年が一緒に学校全体を動かしていく姿を見て、とても頼もしく、ほっこりとしています。
今回はその中で感じたことを、徒然なるままに書いていきます。

「生活団」を運営する6年生たち

本校では、1〜6年生までの縦割り班「生活団」という活動があります。各学年から4名程度、計約24名が一つの団を形成し、掃除を一緒にしたり、遠足に行ったり、運動会の応援席を共にして声援を掛け合ったり、畑で野菜を育てて収穫しお味噌汁を作って食べたりします。本校の根幹を成す時間と言っても過言ではありません。
そんな生活団ですが、教員はサポートに徹し、6年生がリーダーとなって活動を進行していきます。4月、生活団活動がスタートし、自分たちが団を運営する面白さ、困難さを実感している真っ只中です。
担任として6年生をサポートさせていただいていることになり、団での頑張りも見守らせてもらっていると、本当に頼もしい子たちだな…という印象が大きいです。彼ら自身の力にも敬意を表しますし、これまでの担任の先生方のご指導にも感謝が湧きます。
ただ、スタートしたばかりのことですから、様々な課題も当然浮き彫りになります。「よりよく」を考えた時には、敢えてそのような部分に注目することも必要です。

「受け身」はどう生まれるのか?

私が一つ注目したのは「手伝い方を、まだうまく示せない」ということです。
6年生たちは事前に教員から示された資料を読み込んで、スムーズに団活動を進行しようとします。とても一生懸命です。使命感もあります。自分が1年生で入学したばかりの頃に団を引っ張ってくれたあの6年生のように。去年同じ高学年として間近で見ていたあの6年生のように。自分の力で、自分たち6年生の力でしっかり進めたい。それはとても素晴らしい、かっこいいことだと思います。

ただ、一方で「与える」ことを意識するあまり、1〜5年生までがどのように参加しているかということまでは気に掛けることができていない。そうするとだんだんみんなが「受け身」になっていくんですね。
これは、教師が一生懸命「与える」ことを意識するあまり、授業の中で過剰な量の資料を出したり、一方的に話しすぎたりして、だんだんとクラスの子供が「受け身」になっていく様子に似ています(自分にも思い当たる節があります。口の奥が苦いです)。
一歩間違うと、そのような教師は「こんなに一生懸命やっているのに子供が全然自分から動いてくれない」という愚痴を口にしてしまうものですが(非常に思い当たる節があります。口の奥が辛いです)、これは団活動における6年生にも言えることで、「一生懸命やってるけど、1〜5年生が話を聞いてくれない」となる可能性を孕んでいる。ただ、これは自分が「与える」に固執した結果、自ら招いた現象だということを、私たちは自覚すべきだと思う。

団には、去年まで関わらせていただいていた5年生も高学年として参加しています。彼らを見ていると、6年生が「与える」モードだと、やっぱり受け取るということに重心が乗るので、1〜4年生と変わらない意識で参加しているんですよね。

手伝うための想像力を育むために

ただ、今回の生活団活動で、6年生が5年生に助けを求める場面があったんです。
「これを、手伝ってほしい」
その一言で、もう5年生は目を輝かせて、手伝いだしたんですね。
そうすると6年生も「5年生すごい!めちゃめちゃやってくれる!」と感謝し、顔が輝くんです。

多分、5年生の子たちも、「手伝いたい」という気持ちはあるんです。困っている人がいたら放っておくようなことはしない。でも、どう手伝えばいいかわからない、ということはやっぱりあると思うんです。だって、運営する立場に自分が立ったことがないから。その人が何を手伝ってほしいのかを、まだ具体的に想像するには経験が足りないから。
それが今回「こうやって手伝えるんだ!」とわかった途端に、率先して手伝いだすんです。

リーダーが一人で抱え込んで、周囲に何も相談するでもなくウンウン唸っているばかりでは、周りの人間は困惑します。「あなたはまだ運営する立場ではない」と言われればそれまでですが、そうなると手伝いたい気持ち、一緒によりよくしたいという気持ちも萎んでいってしまう。
手伝い方を示すことは、リーダーとして恥ずかしいことでもなんでもない。それを、今回の生活団の6年生の姿から、教えてもらった気がします。そうやって、リーダーとして一つずつ深い段階へと彼らが進んでいくことがとても愉しみです。
手伝い方を示すということの先に、相手の方から想像を具体化してさっと助けてくれたときに、一層深い感謝も生まれるのではないでしょうか。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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