2024.04.04
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

もし小学校の先生になったとしたら、どんな先生になりたいですか?

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。将来なりたい職業として子どもたちにも人気の学校の先生。子どもたちの成長を身近に感じることができるやりがいのある仕事です。今回は「もし小学校の先生になったとしたら、どんな先生になりたいですか?」をテーマに考えました。

子どもたちがワクワクして会いに来てくれるような先生に

もし私が小学校の先生になったとしたら、勉強が好きな子を育てたいです。勉強が好きで、自分で勉強できて、勉強したものを活かせる子、小学生には大切なのはこの3つです。だから、勉強が好きになるためのカリキュラムを生活に組み込んで、子どもたちの興味を引き出そうとすると思います。遊びと勉強を区別せずに、好奇心をかきたてるような学び方です。「勉強っておもしろいな」「私って勉強できる!」と、子どもに自信を持たせることが重要です。そして、子どもたちを励まして、好きなものをとことん追求させて、やる気満々な子を育てたいです。子どもたちから「チャン先生は面白いね」「先生に会うために学校に行きたい」と言われるような先生になれたら最高です。子どもたちがワクワクして会いに来るような存在、みんながうれしくて明日は学校に行きたいって思えるような先生になれたら、どんなに素敵でしょう。

私はこれまでにいくつかの大学で客員教授を務めてきました。今年も大阪経済大学で講義します。しかし、小学生の子どもたちを教える機会は今までありませんでした。
私が思うには、子どもたちと向き合うのは知恵比べです。子どもたちよりも先回りして考えて、彼らの想定外のことができる先生が魅力的な先生です。だから私は「今日は何をして私たちを喜ばせてくれるかな」と期待してもらえるような先生になりたいです。

子どもたちが尊敬するのは、情報を提供してくれる人です。自分が聞いたことがないような話や自分では気が付かなかったこと、新しい視点を教えてくれるような人を尊敬して、その人から吸収しようとするのです。いたずらっ子でも、おとなしい子でも、そういう博学な先生だったら面白がってくれると思います。
私自身が子育てしたときのように、子どもたちに人生の楽しさを伝えたいです。「今日は何をしよう」という期待いっぱいの毎日を子どもたちに与えることができたらいいですね。

子どもたちの人格を尊重して、真剣に向き合うこと

私はなぜか子どもたちに好かれることが多いです。昨年生まれた孫も私のことが大好きで、そばを離れません。私と離れる時に声を出して嫌がるほどなので、長男も驚いています。なぜなのか考えてみたのですが、私は赤ちゃんや子どもの人格を尊重しているからかもしれません。
赤ちゃんが泣いているときも、その気持ちに共感して「ここは少しうるさいのかな?」「暑いよね」と彼らの気持ちを聞き出そうとします。そうやって語りかけると、赤ちゃんでも自分の事をわかってくれていると感じて、泣き止むことが多くあります。相手を理解して寄り添おうとしている気持ちが伝わっているのだと思います。自分の人格が尊重されているということは、たとえ一歳未満の子であっても理解できるのです。

だから、もし小学校の先生になったとしたら、一人ひとりの子どもたちと真剣に向き合うつもりです。相手を子ども扱いせずに、同僚や上司に接するような態度で付き合いたいです。その子の家庭環境や考えていること、得意なことなど、知りたいことはたくさんあります。1クラスに何十人もいたら無理でしょうか? 先生だったらきっとできるはずです。子どもたちの教育に関心があって先生になったのですから、長い1年間で一人ひとりと向き合う時間はあるはずです。

先生には嘘をつかずに正直に話してほしい

私から子どもたちに約束してほしいことは、嘘をつかないことです。私は子どもたちと真剣に付き合うので、嘘だけはつかないでほしいのです。私は子どもたちを信じているので、嘘をつかれても気づかないでしょう。そうすると、その子は次も嘘をつかないといけなくなります。次から次へと嘘を重ねて、真実からは遠くなってしまいます。嘘をつき続けることは、その子にとっても負担となります。
世の中のトラブルのほとんどが嘘から始まります。嘘がばれずに一生をやり過ごせてしまう人もいますが、嘘をつかなければもっと楽しい人生があったかもしれません。
もし間違いを犯してしまったら、先生に正直に話して、一緒に解決方法を探せばいいのです。反省する必要があれば一緒に考えましょう。必ず出口はあるはずです。お互いに正直な気持ちで、信頼して付き合うことが大事です。

嘘をつかれたら悲しいですが、だからといって「悪い子」だと評価することはありません。チャン先生にとって、子どもたちはみんないい子です。もし、自分はいい子ではないと思うなら、これから良くなればいいのです。他人から見ればどういう子どもであろうと、私の目の前ではみんないい子です。
やってしまった悪いことは否定しますが、その子自身のことは決して否定しません。
私が先生だったら、海のように広い心で、すべてを受け入れます。子どもたちには自分のことを信じてくれて、一緒に解決してくれるような人が必要なのです。「先生は完璧な人間ではないけど、君のために一生懸命頑張ります」ということを信じてもらえれば、よい関係が築けると思います。
幸せな家庭環境で生活できている子どもばかりではないので、学校に来て「愛されている」「温もりがある」と感じてもらえる先生になれたら、最高に素敵だと思います。先生の一言、先生の態度一つで、子どもの人生を変える事さえあります。子どもの可能性を引き出せる先生になりたいです。児童一人ひとりが自分に自信を持ち、優しく強い子どもに育ってほしいです。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop